みなさんこんにちは。お知らせ記事にも書いた通り、久々の開催となったMaker Faire Shenzhen 2023に出展してきました。他の旅行も含めため込んでいる1旅行記はまた追って書こうと思っていますが、とりあえずMaker Faireの様子については先行して本記事にてレポートすることにします。

深圳にMaker Faireが帰ってきた!

Maker Faire Shenzhenは世界一の電気街・華強北電気街でも有名な中国の都市、深圳で開催されるMaker Faireです。Maker Faire Shenzhenは私も見学した2019年を最後に、新型コロナウイルス禍の影響で開催されない状況が続いていましたが、4年ぶりにようやく復活しました。Maker Faire Tokyoは2020年はちょうど流行が収まっている時期でオフライン開催、21年はオンラインのみ、22,23年はオフライン開催と、なんとか開催を続けていたのとは対照的です。なんにせよ、Maker Faireが世界中で復活し始めているのはとても嬉しいことです。

2019年まではほとんどMaker Faire等のイベントへの出展はしていなかったのですが、2022年のNT金沢に出展したあたりからやはり出展側に回る楽しさというのもあるなと思い、最近は機会を見て出展するようにしています。全部のイベントに出ていると疲れてしまうので、見学だけの場合もありますが…

今回のMaker Faire Shenzhenはスイッチサイエンス高須さん(@tks)がNT深圳ブースとして共同出展をオーガナイズしてくださいました。共同出展だと展示側に回る最大のデメリットである「ブースを留守にできず他の展示を見れない」問題を解決できるので大変助かりました。

なお、今回の会場は2019年と同じ、主催である柴火メイカースペースも入居している万科云设计公社(“Vanke Design Commune”)でした。ここは微妙に地下鉄駅から遠いのがツラいところですが、クリエイティブ系の企業向けのオフィスエリアと公園がミックスされたような場所なので、Maker Faire向きのスペースではあると思います。また、今回は荷物が多かったことと同じホテルに泊まっていた方が多数いたことから地下鉄は使わず、各々乗り合わせたDidi(ライドシェア)で移動していることが多かったです。(私に至っては結局今回は一度も地下鉄に乗りませんでした…)

今回の展示

写真は今回のブースの様子です。人が少ない開始直後に撮ったため、机の右側半分が空いていますが、そちらにはのちほどスタックチャンの展示が展開されました。NT深圳ブースはもともと2小間が割り当てられていましたが、お隣の小間で展示予定だった、球体型ロボット”omicro”でおなじみの一瀬さん(@tichise)が残念ながら都合により直前で展示キャンセルとなったため、NT深圳ブースは3小間を使わせていただくことができました。

一応簡体字中国語と英語の説明を用意していきましたが、この準備が本当に直前も直前になってしまったので、今後はもっと余裕を持って作品の制作と展示の準備に取り掛かるようにしていきたいです。なお、ブースのそばにいるスタッフの方の中には日本語もできる方がいて通訳をしていただいたりと、海外Makerのサポート体制もかなり充実していて大変助かりました。

ちなみに今回の展示中、私を含めたNT深圳チームの出展者は「これはビジネスでやっているのか?それとも学校のプロジェクトか?」「これのコストはいくらくらいなんだ?」というような質問を多く受けました。まったくの趣味でやった上にわざわざ海外まで作品を持ってくるような人は珍しいようです。日本のMaker Faireには趣味100%の作品をわざわざ遠方から持ってきている方、いっぱいいるような気がするんですけどね。コストに関する質問も含めて、Makerとビジネスの距離が近いというところの表れというとらえ方もできると思います。

ボイスチェンジャーメガホン

今回、私は3つの作品を展示しました。1つ目は毎回出しているボイスチェンジャーメガホンです。例によって大きすぎる初期バージョンではなく、NT金沢2023にも持っていったミニバージョンを持っていきました。実は前日に基板が故障し(原因はESP32-C3のはんだ不良)、急遽直して持っていったのですが、初日の午後に再度調子が悪くなりリタイアとなりました。信頼性の低さはなんとかしたいところです…

ショルダーキーボード

お次は今回初めての展示となったショルダーキーボードです。タッチスライダーの製作記事でも言及しましたが、イベント等で首にかけながら演奏できるようなキーボードがあると、シンセサイザーのデモもしやすくなるだろうということでここのところ製作しています。ベースはKORGのmicroKEYというDTM用のUSB MIDIキーボードですが、使っているのはガワと鍵盤部だけで、鍵盤部の配線を解析してオリジナルの制御基板につないでいます。この部分の製作記も追って記事化したいと思います。

しかし、オリジナルの制御基板を作ったのはよいのですが、ファームウェアが全然間に合わず、ベロシティ固定でMIDIのノートオン・ノートオフをレガシーMIDI/BLE MIDIで送信するところまでしか実装できませんでした。これも次へ向けての改善をしていきたいところです。

また、デモ用の音源としてM5Stack Core2を使ってBLE MIDI対応、矩形波Onlyのモノ音源を急遽でっちあげて持っていきました。Maker Faireの翌日にM5Stackの本社で行われるミートアップに参加する予定があったこともあり、せっかくならばとM5Stackを使ったものを用意しました。さらに、M5Stackの画面にはスタックチャンコミュニティ(@stack_chan)のししかわさん作・m5stack-avatarを使って、アバターの顔を表示させました。口のパーツがノートオン・ノートオフに合わせてパクパクするという仕掛けも入れました。展示の際、この仕掛けがかわいいとなかなか好評でちょっと嬉しかったです。

渡航直前にショルダーキーボードの持ち手部分を外さないとスーツケースに入らないことに気が付いたため、急遽UVレジンで本体内側にナットを固定することで完全分解せずとも持ち手を着脱できるような仕様にしていました。しかし2日目の準備中に4個中1個、レジンが外れてナットが脱落してしまいました。本体の配線口からうまくナットを取り出すことができ完全分解は免れましたが、今後はこの辺もしっかり作りこんでいくことが必要そうです。

ゲーミング7セグ


3つ目も今回初めて展示する、ゲーミング7セグメントLEDです。プリント基板を光を拡散する板として使うテクニックを試してみたかったので、フルカラーシリアルLEDと組み合わせて大き目のゲーミング7セグLEDを作ってみました。3桁分持っていこうかと思ったのですが、意外とかさばるので結局1桁分しか持っていきませんでした。正直なところこれは技術的なお試しと「大きい7セグLEDが家にあったら面白い」というだけで作ったので、見ている人に面白さが伝わりにくい展示だったような気がします。(外で光り物が目立ちにくいというのもあったかもしれません)

NT深圳ブースの様子

先ほども説明したように、今回はNT深圳として合同出展という形態で出展しました。というわけでまずはNT深圳ブースから、他の展示を紹介していこうと思います。最初に紹介するのは今回のおそらく一番人気、らてさん(@cofelatte_latte)のスタックサンです。M5Stackをモチーフにした被り物、もとい、高性能AI搭載ロボット(?)で、前面の画面に様々な表情を表示しながらしゃべって動いていました。常に人だかりができていて、見てる側が心配になるレベルでひたすらパフォーマンスをされていました。

こちらは黄色いブースでピンとくる方も多いのではないかと思いますが、各地でおなじみのnecobitカワヅさん(@necobut)のブースです。今回はシーケンサーでソレノイドなパーカッション4種を制御する展示をされていました。私も横で見ていたり、留守番で説明対応をしたりしていたのですが、一人だけトラックメイクがめちゃくちゃうまいお子さんがいたのが非常に印象的でした。だいたいみんな全部のボタンをONにしていくんですけどね…ちなみにカワヅさんブースは優秀展示賞をもらっていました!

注射器とM5Stack、小さい基板を展示していたのはシンリナカムラさん(@shinfrom1981)です。植物が土壌からどの程度水を取り込める環境かを示す指標であるpF値を測定できるセンサの展示とのことでした。ナカムラさん曰く見学者の方から土壌水分センサとしての用途以外の応用の提案もあったそうです。見学者や他の参加者の方との会話も展示の醍醐味の一つですね。

お隣で展示していたにもかかわらずいい感じの写真がなく(すいません…)、もう一つの展示場所であるM5Stackブースの写真ですが、スタックチャンコミュニティ(@stack_chan)の皆さんの作品も大変好評を博していました。カメラで人を追尾していたりはしないとのことでしたが、たまたま見学者の動きに合わせてスタックチャンが動き、見学者の方がびっくりされるようなシーンが何回かありました。

このほか、NT東京で食券販売機を楽器化して話題になっていたうこ(@ukokq)さんのUSB木魚もかなり好評を博していました。木魚がどういうものであるか、説明せずとも見学者の皆さんが分かっていそうだったのはさすが東アジアという感じです。

こちら2つはNT深圳ブースお隣の音楽研究所・勝田さん(@Tetsuji_Katsuda)と今出さんのブースです。勝田さんはもはや説明不要のロボットバンドと、ロボットが字を書いてくれるおみくじの展示でした。勝田さんブースもカワヅさんブースと同じく、優秀展示賞をもらっていました。

今出さんの展示はLEDパネルを内蔵したジャグリング用のシガーボックスでした。アニメーションパターンが表示されるそうなのですが、慣れているパフォーマーの方はアニメーションにきれいに合わせてパフォーマンスできるそうでした。スマートにまとまっているLEDシガーボックスもすごいし、パフォーマーの方もすごい…と思ったのでした。

この他にも日本勢はちらほらいて、NT深圳チームはチームで1組とカウントされているにも関わらず、海外からの出展者として一番多かったのは日本からのMakerだったという状況でした。

その他の展示

日本勢以外の展示や会場の様子も紹介したいと思います。なお、会場ではロボット犬が闊歩していました。なかなか深圳らしい風景です。

Maker Faire TokyoでもおなじみのNerdy Derbyも開催されていて盛況でした。

こちらはNerdy Derbyのブースのそばのワークショップ風のエリアにあった3Dプリンタです。よく見るとそれぞれのプリンタにネームプレートが付いているので、マイ3Dプリンタなんでしょうね。カラーリングも楽しげでした。

こちらは小学校系のブースが多いエリアにあった空気砲です。右側にゴム幕が張ってあって、そっちを引っ張って離すと左側から煙が輪っかのように飛び出るというよくある空気砲なのですが、サイズがサイズなのでなかなかのインパクトでした。

こちらは会場でも大型の部類に入る展示だったバーテンダーロボットです。上につるされたお酒をシェイクして混ぜてコップに注いでくれるロボットです。コースターの部分にコップを置くところも含めてロボットがやってくれます。会場でもお酒は抜きで展示されていましたが、土曜日のアフターパーティーの会場では実際にお酒をサーブしていました。なかなかシェイクが滑らかな動きで面白かったです。

こちらはみんな大好きM5Stackブースに置いてあったM50Stackです。天板の上のM5Stackと比べるとさすがに大きいですね。ちなみに土曜日に社長のJimmyが直々に運搬していてこの人は本当によく働くなぁ…と思いました。

Maker Faire Shenzhenの特徴として、企業(スポンサー)ブースが非常に多い点が挙げられると思います。こちらはプリント基板サービスと3Dプリントサービスの紹介ブースを出していたJLCPCBのジャッキーベアの着ぐるみです。若干中の人が見えているような気もしますが、気にしたら負けです…

こちらはArduinoやRaspberry Piにつながるカメラモジュールなどを製造しているArducamのブースの展示です。ちなみにAIカメラのOpen CV AI Kitもここが製造にかかわっています。写真に写っているのはRaspberry Pi Compute Moduleを内蔵したQRコードリーダーでした。このほかにもいろいろな応用製品を展示したりしていました。

3Dプリンタメーカーのブースも私が見た限り、写真のBambu Lab、Creality、ELEGOOと三社もありました。3社とも深圳の企業なので地場企業大集合!という感じでしょうか。

 

打って変わってこちらは個人Makerの展示を最後に紹介したいと思います。ちょっとサイバーな感じの王蟲風ロボと、磁性流体を封入したスピーカーなどを展示していました。この方は中国の方のようでしたが、Maker Faire Shenzhenでは珍しい(?)、趣味100%感のある作品なのがいいなあと思いました。なお、この磁性流体スピーカーはベスト展示賞を受賞していました。おめでとうございます!

このほか、中央の広場ではRaspberry Pi財団も出展していて、財団のトップのEbenさんも来ていたりと、なかなか充実のMaker Faireでした。

公式アフターパーティーとビール会

先ほども少し触れましたが、初日の土曜日のイベント終了後に出展者向けのアフターパーティーが開催されました。Maker Faireの会場の隣の区画のイベントスペースがパーティー会場だったので、ブースを撤収した後、目の前のDJI本社を眺めながらパーティー会場へと歩いて移動しました。ちなみに夜なのに明るいフロアが多い左側のビルに開発部門が多いらしいです。モーレツに働いてますね…!

今回のアフターパーティーはMaker Faire Shenzhenの運営母体でもあるSeeed Studioの創業15周年パーティーも兼ねていて、いろいろと記念のノベルティをいただきました。

会場の中央にはステージが用意されていて、開会直後にSeeedの社長のEricがラップを披露していました。世界広しといえどMaker Faireのアフターパーティーで社長がラップを披露しているのはここだけだろうなぁと思いながらビールを飲んでいました。

なおビールは会場の端に置いてあるビールサーバーから飲み放題でした。なかなかこのビールがおいしかったんですよね…

しばらくしてから、ステージの反対側の階段状のエリアにみんな集まって記念写真も撮りました。この写真の手前の平らなスペースにもかなりの人数がいました。ステージ上から一眼カメラで撮影するだけでなく、そのあとにドローンで記念写真を空撮するというのもまた深圳っぽい仕掛けでした。

日曜日はNT深圳チームの打ち上げを兼ねて、高須さんチョイスの会場そばのクラフトビールショップでビアパーティーをしました。NT深圳チームだけでなくユカイ工学の青木さんがいらっしゃったり、SipeedのOrgmar社長が来たり、他の国のMakerが来たりと、気が付けばかなりの大所帯になっていた楽しいビアパーティーでした。

まとめ

今回は4年ぶりに開催されたMaker Faire Shenzhen 2023の様子を紹介しました。大きくブランクが空きましたが、現地の運営の方の熱意もあってか、コロナ前に負けないにぎやかなMaker Faireになっていたと思います。渡航までの手続きなども今回はやや面倒だったので、そのあたりもいずれ旅行記の方で触れたいと思います。

  1. 10回分以上…
公開日:2024/01/25