前回のMaker Faire Shenzhen 2023出展記に続き、今回はMaker Faire Shenzhenの翌週(2023/11/18-19)に突然行くことになったMaker Faire Taipei 2023の訪問記です。Rangsit東京Shenzhenに続いて、2023年4個目のMaker Faire訪問となりました。

突然の弾丸旅行

今回のMaker Faire Taipei 2023はもともと行く予定ではなかったのでした。Maker Faire Shenzhenに行くかなり前から、2023年は深圳と台北のMaker Faireが1週ずれての開催だということは知っていました。しかしさすがに深圳に行ってMaker Faireにフル参加して翌々日の火曜日まで休んだ状態で、金曜に休んでまた台北に行くというのは(サラリーマン的には…)無かろうということで台北には行かないという判断をしていました。

が、しかしMaker Faire Shenzhenに行ってみたらばMaker Faire Shenzhenからしばらく深圳に滞在して、そのまま帰国せず台北に飛ぶというルートを組んでいる方も多数いたのでした。そしてそのまま台北に行く組のスイッチサイエンスの大木さん(@Ohki)やUSB木魚のうこさん(@ukokq)をはじめ何名かの方に深圳で「鈴木さん、台北も来ますよね???」と散々煽られた結果、深圳滞在中にうっかり成田発台北行きの航空券を取ってしまったのでした。ちなみに大木さんはMaker Faire Shenzhenの後に深圳ハイテクフェアを見学してから、うこさんは港珠澳大橋を渡ってマカオ経由で台北入りしたようです。二人ともうらやましい!

そんなわけで超直前でも比較的買いやすい航空券価格かつできるだけ平日への影響を最小化できる旅程ということで、LCCのジェットスターを使って金曜日の22時に日本を出発して月曜の朝6時半に日本に戻ってくるという、1泊4日の強行軍スケジュールを組んで急遽台北へと向かったのでした。

またまたおしゃれな会場

Maker Faire Taipeiも各国の他のMaker Faireと同じく、コロナ禍の影響を受け2020年、2021年の開催は中止されていました。しかし復活は比較的早く、2022年の年末にはMaker Faire Taipei 2022が開催されました。2022年までの会場は台北地下鉄・忠孝新生駅そばの華山1914文創園区というお酒の工場の跡地を使った公園でしたが、2023年は台北中心部から少し離れた南港駅そばの瓶蓋工廠台北製造所(POPOP Taipei)という、瓶の蓋の工場の跡地で開催されました。

華山1914文創園区も瓶蓋工廠台北製造所も日本統治時代の工場跡地というのがなんとも面白いです。華山1914文創園区もなかなかおしゃれな公園でしたが、瓶蓋工廠台北製造所も同じようなおしゃれな雰囲気でした。古い工場跡地をリノベーションして、クリエイティブ系のスペースにするのが台湾の流行なんでしょうか。

ちなみに建物の背後、写真の左側で光っているビルは南港駅の駅ビルです。最近のビルは光りがちですね…

土曜日のみだったようですが、会場の建物と建物の間にある通路には、クラフト作品の作家さんが並ぶマーケットが出ていました。実はこのマーケットはMaker Faireとは別のイベントだったらしいですが、もともとクラフト系の比率が高めなMaker Faire Taipeiの雰囲気にとても合っていたと思います。

私は2022年のMaker Faire Taipeiは参加していないので比較できませんが、過去に見学した2018年、2019年のMaker Faire Taipeiと比べると規模が縮小した印象を受けました。しかし、後ほど紹介するようにバリエーション豊かな展示作品群は健在でした。また、参加団体一覧を見る限り、学校の出展の比率が高かったように思います。

NT台北ブース

Maker Faire ShenzhenのNT深圳ブースのように、Maker Faire TaipeiでもNT台北として日本からの有志による合同出展が行われていました。というわけで、まずはNT台北ブースからいくつか抜粋して作品を紹介していきたいと思います。

最初に紹介するのはましぐれさん(@mashigure)のLEDサインです。台湾の歩行者用信号機の青信号のアニメーションを再現しているとのことでした。なかなかの再現度です。

こちらはMaker Faire Shenzhenでもご一緒したうこさん(@ukokq)のUSB木魚です。木魚がUSBキーボードになっていて、叩くと般若心経が入力されていくという作品です。最初から漢字で入力されるわけではないので、パソコン側のIMEへの辞書登録などの細かい仕込みもしているとのことでした。最初からUSBの口が生えていたかのような木魚の仕上がり、さすがです…!

実は私はMaker Faire Shenzhenの会場に海外用の電源タップ1を忘れてしまっていました。うこさんと同じく、Maker Faire Shenzhenからのハシゴ組であるシンリナカムラさん(@shinfrom1981)が預かってくださっており、深圳の忘れ物を台北で回収することができました。ありがとうございました!

バリエーション豊かな展示を眺める

日本から近いこともあってか、NT台北以外にも日本からの出展者をちらほら見かけました。こちらはFablab関内ブースです。走る大同電鍋はなかなか台湾らしい展示です。大同電鍋というのは大同公司という台湾メーカーが出している炊飯器をベースにした煮物・蒸し物もできる汎用調理器です。2019年のMaker Faire Taipeiの際に会場の隣のホールで大同公司の展示会をやっていたのを思い出しました。

こちらは木工による食器やペンなどの作品を展示されていたブースです。最初にも書きましたが、Maker Faire Taipeiは以前からクラフト系の展示が多めなのが一つの特色であるように思います。

こちらの2つの写真はいずれもスポンサーブースの展示です。上の写真はAIによる骨格検出でスクワットの回数を検出する展示、下の写真はJetsonで動かす生成AIのStable Diffusionの展示でした。AIがらみの展示が出てきているのは今どきという感じがします。

こちらはRaspberry Piを使ったオーディオプレーヤーの展示です。趣味を突き詰めてるタイプの展示は意外とMaker Faire Shenzhenだと見ないので、この類の展示は台北や日本のMaker Faireのお家芸という感じがします。

こちらは表示パネルがLEDになっているテトリスゲームの展示です。確かにこの手のLEDパネル、最近は高精細なものも入手できるし、縦長のディスプレイを構成することもできるのでテトリス向きですね。なるほどと思わされました。

工作機械などの展示も

スポンサーブースのような感じでしたが、工作機械やレーザーカットサービスの紹介など、Makeした作品だけでなく、それを支えるソリューションの紹介もあったのがちょっと面白かったです。工作機械やそれを使ったサービスにアクセスしやすいというのは作品作りの上でとても大事なポイントだと思います。

ロボットも多め

先に書いた通り学校の出展が多いこともあってか、今回はロボットに関連した展示が多かったように思います。学校と言っても日本の小学校に相当する國小から大学まで参加しているので、写真のようなレゴを使った作品からかなり本格的な競技用ロボットまで様々なロボットが展示されていました。

こちらは日本の高校に相当する高中の学生さんたちによるFRC向けロボットの展示でした。FRCというのはFIRST Robotics Competitionの略で、アメリカ発祥の高校生向けロボット競技大会です。ルールに従ってミッションを遂行するロボットを作る必要があるのはもちろんですが、制作費や大会参加費なども高校生が自らスポンサーを募るなどの方法で集める必要があり、技術力だけでなく社会とのコミュニケーション能力も培うという目的がある点が特徴的な競技大会です。

FRCへの参加チームは日本よりも台湾からのチーム数の方が多いようです。FRC自体の存在は知っていましたが、台湾で活発に活動しているチームがあるというのはここで初めて知りました。

こちらは清華大学のDIT Roboticsというチームのロボットです。Eurobotというヨーロッパのロボット競技大会向けのロボットのようでした。さすがに作りもしっかりしていますし、LiDARも載っていて本格的です。

ガチガチのロボットの展示もあるかと思えば、屋外ではNerdy Derbyの船版というような雰囲気の、模型船を作ってスピードを競うワークショップが開催されていました。幅広い年齢層がMake活動をしていることが伝わってくるシーンだったと思います。

併催のメディアアートイベントでビリビリする

Maker Faire Taipeiの展示と同じ建物の端の方で”K.T. Creative Award”というメディアアート系のアワードの展示会が行われていたので、こちらも見学しました。

展示作品はアニメーションや絵画など様々でしたが、個人的にはこの「正電計畫」という作品が印象的でした。床面に設置されたラインセンサを足などの物体が横切ると、天吊りされているテスラコイルがそれを囲んでいる金属板に放電しながらくるくる回る…という展示でした。解説をGoogle翻訳で翻訳して読んでみたりもしたのですが、どういうコンセプトかはよくわかりませんでした。でもこういうメディアアート系の展示があるのは昔のMake: Tokyo Meeting2っぽくていいな~と思ったのでした。

やっぱり楽しいMaker Faire

以上、Maker Faire Taipei 2023のレポートでした。2023年は4つのMaker Faireに参加しましたが、それぞれのMaker Faireにキャラクターがあり、どれも違ってどれも面白いMaker Faireでした。2024年も深圳と1週ずれての開催になるのかはわかりません(特に台北は日程が動きがち)が、来年は深圳も台北も出展できたらいいなと思っていたりします。

  1. ゴーコンタップといいます。海外旅行の必需品です!
  2. Maker Faire Tokyoという名前になる前にMake:主催で開催されていたイベント。
公開日:2024/02/17