お知らせ:この記事はJLCPCBの提供でお送りしています。

ボイスチェンジャーメガホンを作る、原理編ソフトウェア編に続いて、最終回、ハードウェア編です。

きっかけはモノタロウ

そもそも、なんでボイスチェンジャーを突っ込むためのメガホンが手元にあるんだということについてまだ説明していませんでした。結論から言うとわざわざボイスチェンジャーを仕込むために買ったのですが、経緯(言い訳?)は以下の通りです。

  • 小ねじが必要になったがAmazonですぐ届くものがヒットしなかった
  • モノタロウには在庫があった
  • モノタロウは3500円(税別)以上の購入で送料無料になる
  • 小ねじだけだと数百円なので送料を取られる
  • 送料を無料にするのに程よい値段のものはないか探す
  • メガホンを見つけて遊べそうだとビビっときてしまった

…とまあそんなわけで、改造前提でメガホンを買ってしまったのでした。この手のメガホンは大量に単1電池を使うので、改造して何かを仕込むスペースは十分取れるだろうということで、若干前のめりでポチったのでした。(予想通り、何かを仕込むスペースは十分取れたのですが、NT金沢出展記に書いた通り、のちにサイズが大きくて運搬に難儀することをこの時は知る由もありませんでした…)

分解する

さて、メガホンが届いたら早速改造するために分解です。まずはメガホン後部の電池ボックス部を開けます。このメガホンは単1電池6本仕様なので、かなり広いスペースがあります。電池ボックスの奥にはネジが1本見えますが、これを取り外すことで電池ボックスが丸ごとスライドして外れ、ホーンスピーカー部と分離できます。ホーンスピーカー部と電池ボックスの隙間にはスピーカーの信号線と電源配線が通っているので、配線を切らないように気を付けて電池ボックスを取りはずし底に見える電池用のスプリングを取り外しておきます。電池ボックス内に仕込むボイスチェンジャーをきちんとケースに入れる等すればショートの危険もないのでスプリングをそのまま残しておいてもいいのですが、今回はむき出しで基板を突っ込んでも大丈夫なようにスプリングを取り外しておきました。

電池ボックスの反対側、メガホンのお尻の部分にも電極のスプリングが取り付けられた板がねじ止めされています。ここのスプリングも同様に取り外します。写真右上のリベットのような端子は、この板を貫通して板の裏側にある基板に接続されています。

グレーのプラスチックの板を外すと、基板が見えてきます。メガホンに取り付けられている基板はこれだけで、背面の操作パネルの機能と、音声録再・サイレン・オーディオアンプとしての機能がすべてここに収まっています。右上の8ピンのICがサイレン用IC、右下の16ピンのICが音声録再用のICです。オーディオアンプICは基板の反対側に実装されていました。写真の左下から伸びている、黒い被覆(熱収縮チューブ)に入ったケーブル類はスピーカーと電池ボックス用の配線です。なかなかはんだ付けがワイルドです。

基板の部品面はこんな感じで、挿入実装部品がずらっと並んでいます。写真上部のICがオーディオアンプで、その下の銀色の部品が音量調整用のスライドボリューム、さらに下の赤い4つ並んだパーツが電源やモードを切り替える押しボタンスイッチです。

制御基板を改造する

ここまでのメガホンの分解で大体内部の構成がつかめたので、前回までにESP32上に実装したボイスチェンジャーの回路をどうメガホンに仕込んでいくかを考えました。最終的なシステムのブロック図は上の通りです。赤枠のブロックは新規に追加したもの、黒枠のブロックはもともとメガホンについていたものです。できるだけ見た目は元のメガホンのままになるように、最大限既存のパーツを流用しています。オーディオアンプICはもともとメガホンにも搭載されていますが、今回はモバイルバッテリーの5V電源だけですべてを動作させたかったため、別途Amazonで購入したD級アンプモジュールに置き換えています。

先ほど見えた基板のパターンを追っていき、ブロック図に書いた通りの接続になるように基板上のボリューム、マイク、押しボタンスイッチの端子にケーブルを配線していきます。押しボタンスイッチの周辺はテスターでいろいろ当たってみたのですが、どうやらそれぞれのボタンが連動するような配線になっているようでした。きちんと解析するのが面倒だったのでこの部分に関してはパターンをデザインナイフでカットして配線しなおしています。また、スイッチ配線に関してはたまたま手持ちがあった協和ハーモネットのスリムロボットケーブルでまとめて配線しました。ちょっと高いですが、柔軟性があって使いやすいのでお勧めです。

ぴったりフィットのモバイルバッテリーを発見

今回のメガホンは単1電池6本仕様で、かなり広いスペースがあるのでそこに収容できるモバイルバッテリーもあるだろうと踏んでいたのですが、なんとAnkerの5000mAhタイプのモバイルバッテリー(Anker PowerCore 5000)がびっくりするレベルにぴったりフィットであることが判明しました。18650などの円筒型リチウムイオン電池を使ったモバイルバッテリーは多数売られているので、他にもぴったりフィットのモバイルバッテリーがあるかもしれません。

単1電池は長さ61.5mm×直径34.2mmなので、2本ずつ電池が入る今回のような電池ボックスの場合、だいたい120mm×34mm程度の空間があるということになります。Anker PowerCore 5000は高さ108mmx直径33mmなので、直径はほぼぴったり、高さ方向はUSBケーブルを差し込むだけの余裕を確保できるという理想的なモバイルバッテリーでした。ESP32オーディオ基板は電源供給とESP32へのファームウェア書き込み用を兼ねたUSB-microBコネクタが付いているので、低背タイプの短いUSBケーブルを使ってモバイルバッテリーとESP32オーディオ基板を接続しています。

すべてを中に突っ込む

すべての配線が終わったところで、基板とモバイルバッテリーをメガホンの電池ボックス部に詰め込んで完成です。ご覧の通りスカスカなので、動かすとガチャガチャいうのですが、ケーブルをまとめただけでその他はとりあえずそのままにしています。

まとめ

原理編ソフトウェア編・ハードウェア編と、3回に分けてボイスチェンジャーメガホンの製作過程を紹介しました。音声信号処理、マイコンへの処理の実装、既製品の分解と改造という、いろいろと遊べる要素が入った題材だったかなと思います。2022年のNT金沢には持っていきましたが、また機会を見て他のイベントにも持っていければいいなと思っています。

 

公開日:2022/12/31