昨年は突然Maker Faire Taipei 2023に行くことになりましたが、今年・2024年はひょんなことから10月18日~20日に開催されたMaker Faire Bay Area(MFBA)を見学することができました。2024年はMaker Faire Kyotoにも参加していますし、相変わらず旅行記をため込んでいるのですが、日本からの参加者が少ないMFBAのレポートを先に書いてしまいたいと思います。

カナダ・バンクーバーに引っ越しました

さて、見出しの通りなのですがお仕事の都合で今年の9月にカナダ・バンクーバーに引っ越しました。9月の頭に引っ越しだったため、残念ながらNT東京(9月7日・8日)やMaker Faire Tokyo(9月21日・22日)に始まるアジアの秋のMakerイベント群(勝手にそう呼んでいます)にまったく参加できなくなってしまったのですが、そういうことであればタイミング的にもなんとか行ける、お隣アメリカのMFBAには行こう!と思い立ったのでした。

MFBAが開催されるベイエリアにはいくつか空港がありますが、一番近い(といっても会場まで車で1時間半かかりますが)サンフランシスコ国際空港まではバンクーバーから飛行機で2時間半で到着します。日本からだと約10時間の旅ですからそれと比べるととても近いですし、航空券も9月の頭の時点で往復2.6万円と、バンクーバーからMFBAに参加するのは日本から参加するよりもはるかにハードルが低いといえます。これはチャンスということで、参加することを決めたのでした。

また、さらにラッキーなことに、今年からアメリカに駐在しているseigotさんを中心に「からあげ帝国」名義でMFBAに出展されるということを聞き、現地参加組の情報共有Discordに参加させていただいたり、Airbnbをシェアさせていただいたりしました。(みなさま本当にありがとうございました!)

巨大な会場・Mare Island Naval Shipyard

MFBAは2020年からのコロナ禍でしばらく休止していたのですが、昨年2023年から会場をMare Island Naval Shipyardに移転して開催が再開されました。名前の通り、もともとは米海軍の造船所だったところをイベント会場にしたところです。さすがは造船所、かなり広大な敷地で、端から端まで歩き回ろうとするとけっこう時間がかかるのでした。ちなみに上の写真は”Coal Shed”という名前のエリアで、造船所として使われていた当時は石炭置き場だったようです。

会場の規模が大きいので、各コマのテーブルやスペースも大きく、サイズの大きい展示や、後に紹介するような動き回る展示も余裕をもって展示できていました。当たり前といえば当たり前かもしれませんが、出展者の皆さんはガレージなり何かしら、出展する作品を作るためのスペースをそれぞれどこかに持っているわけで、大きい展示がたくさん応募されてくること、そしてそれを展示できるだけの会場が用意される点はまさに広大なアメリカの土地柄が出ていると言えるでしょう。

会場が広いこともあってなのか、旧車クラブの展示や映画 “Back to the Future”に出てくることで有名なデロリアンが置いてあったりしました。車を作ったわけではないのにMakeなのか?と一瞬思ったのですが、とうに生産が終了して保守部品がない車を修理しながら乗っていくのは、確かにMakeかもしれないと思いなおしました。

Maker Faire Tokyoではなかなか厳しい、火気を使った展示もありました。この蒸気機関は走りこそしませんでしたが、会期中ずっと稼働してその動力を使って噴水を動かすとともに、10時、11時…と毎時ちょうどに汽笛を鳴らして会場に時報を鳴り響かせていました。

動く・走る展示が山盛り

ここまででもうすでに雰囲気を感じ取っていただいているような気もしますが、会場には動く・走る展示がいっぱいでした。上の写真はロボットキリンです。ラジコンになっていて操縦できるのですが、首を下げてきたときに頭をなでてやると「へへへっ、僕はロボットキリンだよ~」というようなことをしゃべるというギミックがあり、子供たちに大人気でした。

ロボットキリン以外にもラジコンになっている様々なものが会場を走り回っていました。個人的に衝撃だったのはこのヤカンです。なんというか、アメリカの人の何かを走らせることに対する執着を感じます。このほかにもハロウィンが近いこともあってか幽霊風の白い布を竿の先に取り付けたものを振り回しながら走るロボットがいたりと、いろいろなものが走っていました。

もちろん、走り回っているのはラジコンだけではなく、乗り込めるタイプの展示も多数ありました。こちらの写真は以前からMFBAの展示として有名な走るマフィンです。ヤカンが走ればマフィンも走る、なんともアメリカンです。

停車中に内部構造を見せてもらったのですが、車用の12Vバッテリー(それも結構大きいやつ!)を2直列にして作った24Vをスピードコントローラー経由でモーターに供給しているとのことでした。力強い走りも納得です。車体によっては大きめの三輪車などをシャーシに流用していたりもするそうで、アップサイクルだ!と出展者の方がおっしゃっていました。

そしてさらに笑ったのが、マフィンだけでなく肉まんも走っていたことです。操縦者の人がかぶっているのがせいろの蓋というのがまた芸が細かいです。

こちらはナウシカの王蟲のようなモビリティです。前から見ると上部の座席しか見えないのですが、横から見るとなかなかくつろげるようになっていることが分かります。

日本からのブース

次は日本からのブースを紹介したいと思います。こちらは先ほども紹介した「からあげ帝国」ブースです。テトリスをAIに操作させて、狙った通りの絵柄を出す”Tetris  Art“や、アンパンマンのおもちゃを改造して作ったUFOキャッチャーなどが展示されていました。UFOキャッチャーは子供たちに大人気で、景品(3Dプリンタ製のキーホルダー)が売り切れる事態となりました。

また、日本から弾丸旅行で見学に来ていたしらかわあずまさんのスタヌキチャンも展示していました。

こちらは日本のMaker Faireでもお見掛けする自動運転アルゴリズム開発プラットフォーム”RumiCar“さんの展示です。SPRESENSEなど各種マイコンに対応したプラットフォームとなっているようです。会場に用意したコースを車がなめらかに周回していたのが印象的でした。なお、RumiCarさんはMFBAにて、優れた展示に与えられるEditor’s Choiceを受賞していました。

こちらはYujiさんのパタパタ時計です。こちらもMaker Faire Tokyoでもおなじみかと思います。この写真には5桁分しか映っていませんが、20桁くらい展示されていました。また席を離れる際はその旨をこの時計で表示したりと、なかなかしゃれた展示でした。こちらのパタパタ時計もEditor’s Choiceを受賞していました。

光り物も巨大なMFBA

光り物の展示もご多分に漏れず、巨大でした。会場の造船所の建物のうち一つが丸ごと暗室になっていました。一番目立っていたのはこのバルーンを光らせた展示です。単に光っているだけのバルーンもあるのですが、このカメレオン(?)は骨組みが入っていて、口が開いたり後ろの腕の部分が動いたりとなかなかの迫力でした。

こちらの展示は最初はただ単にいろいろな色のパターンを光らせるアートなのかと思ったのですが、色水の入ったペットボトルをペグボードに差し込むといい感じに光が拡散するのを利用して、パターンを変えて遊べるという展示でした。シンプルですがなかなかきれいな展示です。

ビンテージコンピューターからサボテンまで

その他の展示もまたアジアのMaker Faireとはまた毛色が違うものがありました。最後にそれらの中からいくつか紹介したいと思います。

まず最初はビンテージコンピューターの愛好会の展示です。AmigaやSilicon Graphicsのワークステーションからファミコンまで、さまざまなビンテージコンピューターの展示がされていました。ちなみに、手前にコンピューター(コモドール64)にピアノの鍵盤が付いたものが展示されていますが、同じ鍵盤のアタッチメントがこの後行ったコンピューター歴史博物館に展示されていて仰天したのでした。

こちらはデジタルアコーディオンの展示です。従来のアコーディオンに取り付ける専用のマイクなども開発されているようです。プロの方のようでしたが、システムがおしゃれにまとまっていて、音モノ工作をする私にとっては大変参考になりました。

こちらは見ての通りのサボテンの展示です。電極が刺さっていることとテスターがあることから何となくわかるかもしれませんが、このサボテンが光合成をすると、光が当たっている側と当たっていない側でpHの勾配ができるため、それを使って電気を取り出すことができるというものです。UC Santa Cruzの研究室の展示のようでしたが、動くものからコンピューター、そしてサボテンまでいろいろな展示があるなと感心してしまいました。

会場では様々なワークショップも開かれていました。そのうちの一つ、圧縮空気によるロケットのワークショップのそばの注意書きに”What comes up must come down! (at about 9.8m/sec^2)”と書いてあったのがちょっと面白かったのでした。

MFBAだけではありませんが、Maker Faireの名物の一つといっても過言ではないメントスコーラのショーもありました。1日に1回のショーですが、1回のショーに108本(煩悩の数!?)と540個のメントスを使うとのことでした。

言ってしまえばコーラが噴き出すだけのショーなのですが、実際にコーラにメントスを入れるまでのトークが非常に面白く、コーラが噴き出すころには大変な盛り上がりでした。単に面白いだけでなく、このメントスコーラの現象は化学反応ではなく、物理的な反応であることの解説などもあり、単なるエンターテインメントにとどまっていなかったところがまたいいなと思いました。

世界のMaker Faireに出かけていこう

以上、MFBA2024の訪問記でした。これまで訪れたアジアの様々なMaker Faireでも、それぞれの国の特色を感じましたが、MFBAでも、とにかく大きくて動くものは楽しい!というようなキャラクター性を感じました。今年は引っ越しのドタバタ(まだまだドタバタしていたりして…)であまり出向くことができないかもしれませんが、落ち着いたらまた各地のMaker Faireに出向いていったり、何か展示できるようにしていきたいと思っています。

公開日:2024/10/28 最終更新日:2025/02/11