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みなさんこんにちは。前回の記事でも言及したMaker Faire Tokyo 2023や、JLCPCBも出展した総合技術見本市・CEATEC 2023に参加してきましたので、今回はその様子をレポートしたいと思います。

Maker Faire Tokyo 2023

まずはMaker Faire Tokyoから紹介していきます。10月14日・15日の開催でしたが、私は2日目の15日に参加しました。当日朝はあいにくの雨でしたが、東ホール側で開催されていた同人誌即売会の参加者もいたので会場のビッグサイトはなかなかの混み具合でした。

さて、早速ですが展示物の紹介をしていきたいと思います。まずは毎度おなじみのいしかわきょーすけさんのペンプロッタです。今回の新作は直動機構を3個使ったデルタ型ペンプロッタ(右から2個目)です。小さくてもデルタ型はデルタ型の独特なフォルムと動きで見ていてなんとも味わいがある展示でした。今回、ついに意を決してペンプロッタキットを買ったので私もペンプロッタ製作を楽しんでみようと思っています。

Raspberry Piの代理店であるKSYさんやスイッチサイエンスさん、そしてJapanese Raspberry Pi Users Groupのブースでは、先日発表されたばかりのRaspberry Pi 5の展示がされていました。写真のKSYさんのブースでは、魚が回遊するCGアニメーションの処理速度がRaspberry Pi 5と4で全然違う、というデモをやっていました。Raspberry Pi 4でも十分パワフルだと思っていたのに驚きです。そしてRaspberry Pi 5では発熱が大きくなるということで用意されるアクティブクーラーのゴツさにも驚きでした。

こちらは海外でご一緒することも多い一瀬さん(@tichise)の”omicro”です。今回は内部のマイコンをmbedからM5StampS3に変更した新モデルも展示されていました。個人的にはボールの透明度にびっくりしたのですが、一瀬さんによると、新品のボールは写真の通りかなり透明度が高いのですが、地面を走らせているうちに傷ついて曇ってきてしまうとのことでした。海外は地面のコンディションが読めないことが多いので使用済みのボールを再使用していることが多いそうです。つまり、ボールが曇りがちなイメージを持っていたのは私がよくomicroを海外で見ていたから、ということですね…

この懐中電灯型のデバイスはカサネタリウム堀さん(@kasanetarium)の「みちびきライト」です。ライトを照射すると、目的地がどちらの方向にあるかを指示してくれるデバイスです。某アニメ風のかわいらしいデザインと裏腹に、ライトは超小型プロジェクターで、中にGPS、方角センサ、QRコードリーダーなどデバイスを満載した作品でした。中に入っているのはプロジェクターということでデバッグもプロジェクター経由でできるような仕込みもされていました。いつもながら、オペレーションまで練られた作品作り、さすがです…!

こちらの卓上CNCフライス盤のような見た目の機械は基板へのソルダペーストの印刷・部品の配置、はんだ付けまでを自動で行ってくれる”RaPick”の展示です。多機能さのわりにコンパクトでちょっと気になりました。

こちらは分解のススメ本の共著の山崎さん(@tomorrow56)のブースです。自走するファミコンロボとそのコントローラーの展示でした。右端にはMaker Faire Tokyo直前に一部で盛り上がったターンテーブルの展示もありました。

お次はかまぼこ板程度の板に乗っているそれぞれが蒸気機関という展示です。誰しも使ったことがある(言い過ぎですかね?)マブチFA-130のマウントに取り付けられるという蒸気機関(9番)もありました。ピストンの加工なども既製品を活用して、複雑な工具は使わず工夫して行われているとのことでした。

毎度おなじみ黄色がトレードマークのnecobitさん(@necobitter)のブースはいつもならソレノイドを活用したメカメカしい音が聞こえるはずなのですが、今回は「キューッ」というような音が鳴っていました。聞いてみると今回は新作の弛張発振回路による電子音発生回路を動かしているとのことでした。アナログ回路ということで無事動くようになるまでちょっと苦労したとのことです。

最近一大ムーブメントと化しているスタックチャンコミュニティも参加していました。みなさんが作った思い思いのスタックチャンが楽しそうに展示されていました。

こちらはyuna_digick(@yuna_digick)さんの自作ニキシー管の展示です。自作ニキシー管のクラウドファンディングにも応募しているので、各地のイベントで進捗を見るのが楽しみな展示でもあります。今回は写真の通り「令和」という形状の電極を封入したニキシー管が展示されていていました。放電による発光が細くきれいに出ているので漢字もくっきりと表示されています。

こちらはアーケードゲーム基板のアナログ出力を専用のICでAD変換して取り込み、看板などに使われるフルカラーLEDのパネルに表示するという作品です。テレビ用のアナログ信号を単にデジタル化するだけではLEDに表示できるような信号にはならない1のですが、デジタル化した後の信号処理と、LEDパネルの制御など、すべての処理をRaspberry Pi Picoでこなしているというのがこの作品のすごいポイントです。もしかしてと思い聞いてみたところ、やはりオーバークロックしているとの回答でした。Raspberry Pi Picoはどこでもオーバークロックされる運命なのでしょうか…

今年は私の母校から東京農工大学 電脳サークルも出展していました。私の在学中にはなかったサークルだと思います(もうだいぶ前ですからね…)バランスWiiボードを使ってVRスノボ体験ができる展示をしていました。バランスWiiボードはアルミフレームの上に載っていて、リニアアクチュエータで傾斜が変化する仕掛けになっていたのでなかなかリアリティがあったのではないかと思います。

個人的にはいつも楽しみな音楽ゾーンでは鷲山技研(@washiyamagiken)のRaspberry Pi Picoなシンセサイザーを触らせていただきました。今年はRaspberry Pi Picoでシンセサイザーを実装した展示が多かったような気がします。

ソレノイドがずらっと並んだこの展示は新里さん(@hirotakaster)さんのものです。ソレノイドをたくさん並べたらかっこいいと思ったから、という分かりやすい(?)動機で作ったとのことでした。

ドロイド・ビルダーズ・ジャパンのブースではR2-D2がたくさん並んで動いていました。後で調べたところ、R2-D2を自作する世界的なコミュニティがあるようです。さすがはスターウォーズ、世界的にファンが多いだけあってMake系コミュニティの規模も大きいですね…(作品も大きいですが!)

こちらはビールサーバーの展示でした。コップに三回に分けてビールを注ぐことで、おいしいビールをサーブするというメカでした。面白かったのは泡の質を検査するために、上部から降りてきた電極が泡に刺さっていくところです。泡が潰れて下降していくスピードで泡の質を判定しているそうです。

その他、今回はオライリーブースで先日も告知したギャル電さん共著の「雑に作る」を買ったり、スイッチサイエンスブースでM5Stack Cardputerを購入したりしました。Cardputerは大人気過ぎて、初日にいったん完売したようで、朝時点では売り切れていました。午後にもう一度スイッチサイエンスブースを見たところ、売っているのを発見したのでめでたく購入することができました。

海外のMaker Faireと(といっても私はBangkok/Rangsit,Taipei,Shenzhenしか知らないですが…)比べると、Maker Faire Tokyoは会場の規模も大きければ展示物も幅広いMaker Faireだなと改めて思いました。

CEATEC 2023

お次はCEATECのレポートです。今年のCEATECは幕張メッセで10月17日-20日の4日間開催されていました。本当は水曜日の18日に行くつもりだったのですが、ちょっとトラブルがあり行けなくなってしまい最終日の20日の朝に駆け足で見る程度になってしまいました。しかし幕張は遠いですね…来年はもう少しゆったり行ってゆったり見たいなと思っています。

気を取り直して展示紹介です。こちらはPreferred Networks/Roboticsの家庭用自律ロボット「カチャカ」と、画像や音声など様々な情報を統合して認識・理解できるマルチモーダル基盤モデルを組み合わせたデモ展示でした。マイクでカチャカに指示を出すと、そこから文脈や今カチャカ自体が置かれている状況を判断して、指示を遂行するためのアクションを順番に組み立てたうえでカチャカが動くというデモでした。展示員の方によるとオープンスペースなのでなかなかパーソナライズできないのが難点とのことでしたが、もう少しパーソナルな空間だと使用者の好みや習慣を「察して」動くことができるようになるそうです。正直粗削り感もありましたが、AI応用もしっかり開拓していこうという意思と未来っぽさを感じる展示でした。

いつもコラボさせていただいているJLCPCBさんもブースを出展していました。今回のCEATECはJLCPCBさんからブースを出すのでぜひ来てください、と言われていたのでした。前回の記事でも書きましたが、最終製品でない部品や基板などの海外メーカーはだいたい国ごとのパビリオンの中のコマで出展することが多いような気もしますが、JLCPCBは単体でブースを出していました。(なんとセイコーエプソンの隣!)いつも日本向けの広報を担当されているヒカリさんにもお会いすることができました。

ブースにはJLCPCBのサービスで製造できる様々な製品のサンプルが置いてありました。最近フレキシブル基板を注文できるようになったのは知っていたのですが、フレキシブル基板の黒レジスト品や白レジスト品もできるというのは新しい発見でした。ちなみに基板のレジスト色はやはり黒や紫が日本のユーザーには人気とのことでした。

その他、今年で2年目らしい「半導体産業人生ゲーム」を横目に見たりしつつ、会場をうろうろしていました。正直あまり感想はないです…

さて、気を取り直して他のブースの紹介です。村田製作所ブースでは上の写真のHapticデバイスや、自動運転用のカメラのレンズに付いた雨滴を超音波加湿器の要領で吹き飛ばす技術などの展示がありました。

日本ガイシブースでは半固体・超薄型電池であるEnerCeraの展示がされていました。実はEnerCeraはMaker Faire Tokyoでもスイッチサイエンスブースで販売されていたりもしました。今はまだそこまで容量がないようですが、それでもやはり薄くて曲げられる電池というのはいろいろ応用を考えてみたくなるなと感じました。

CEATECは往年(最初に行ったのは15年以上前ですね…)は家電メーカー各社が自社のフラッグシップモデルを展示して技術力を誇示する場という印象でしたが、今は運営が打ち出している”Society 5.0″というお題目に沿って、カーボンニュートラルだとかグリーンだとか、そういうような各社の抽象的な取り組みをアピールする場に変わったという印象でした。(特に大きなブースほどそういう印象でした。)一概にどちらがいいというわけでもなく、今のようなスタイルはそれはそれで発見があったりして面白いので、ぜひ皆様来年は行ってみてください!

以上、Maker Faire Tokyo 2023とCEATEC 2023のレポートでした。

  1. YUV→RGB変換とか…
公開日:2023/10/31