お知らせ:この記事はJLCPCBの提供でお送りしています。

みなさんこんにちは。今回はJLCPCBのStandard PCBAサービスを使ってみた話を紹介したいと思います。

Economic PCBAとStandard PCBA

さて、まずはStandard PCBAとは何ぞや?というところを説明したいと思います。ここ1年くらいではないかと思うのですが、JLCPCBでPCBAを行おうとすると、以下の画像のようにEconomic PCBAとStandard PCBAのどちらにするか選択する画面が出ます。

JLCPCB Assembly Parts Libraryでも”Standard Only”という表示が出るようになったりして、何か違うんだろうなぁ、実装が面倒な部品とかがStandard PCBAだと使えるんだろうなぁ~と漠然と思っていました。しかし、今回後で説明する通り端面スルーホールのある基板を発注しようとしたところ、注文画面でStandard PCBAしか選択できない状態になりました。そんなわけで真面目に調べてみようと思い”What’s the difference?”のページを見てみると、Economic PCBAとStandard PCBAでは以下のような違いがあるようです。

  • 厚み(0.8mm-1.6mm v.s 0.4mm-2.0mm)
  • 層構成
  • 表面仕上げ
  • 最小部品サイズ(0402まで v.s. 0201まで)
  • 部品実装面(Standard PCBAは両面実装をサポート)

 

今回は端面スルーホールをやってみたかったこともあり、Standard PCBAでそのまま進めましたが、Setup Feeが$25かかるので、どうしてもコンパクトにしたいというようなケースでなければ、できるだけEconomic PCBAの範囲内に収まるような設計とする方が(特にDIYの世界では)よい気がします。

端面スルーホール is 何?

この記事を読んでくださる方の大半は端面スルーホールと聞いてすぐピンと来るんじゃないかと思いつつ、一応端面スルーホールについても解説しておこうと思います。

…いきなり答えですが、写真の赤囲みの部分の基板の端部に存在するスルーホールを端面スルーホールと呼びます。基板の側面部分に導通部が露出するため、基板の一部をそのまま他の基板との接続端子として使うことができます。上の写真はESP32-S3のモジュールですが、ESPシリーズのモジュールの他にも、Raspberry Pi Picoや秋月電子の一部のモジュール基板などで見かけている方も多いかと思います。

端面スルーホールのメリットは先ほど書いた通り、基板自体を他の基板との接続端子として使えることから、コネクタやピンヘッダを介して接続するよりも実装高さを抑えることができる点や、そもそもコネクタを用意しなくて済む点などが挙げられます。

一方で、端面スルーホールは通常の(基板の外周でない部分の)スルーホールのみの基板よりも製造に手間がかかるようで、基板製造費用も上がります。今回は通常のPCB製造費用よりも$30程度高くなりました。もともとの価格が安すぎるというような気もしますが…

ちなみに、JLCPCBで端面スルーホールを作る場合は、

  • 端面スルーホールは基板の角から1mm以上離れた位置に置くこと
  • 端面スルーホールと端面スルーホールの間の距離は0.6mm以上取ること
  • 端面スルーホールとしたいスルーホールは基板外形線に重なるように配置すること

という条件を守る必要があります。

端面スルーホール基板をKiCADで設計する

JLCPCBでの端面スルーホールの作り方が分かったところで、まずはKiCADで端面スルーホール用のフットプリントを作成しました。今回は1.27mmピッチで端面スルーホールを配置する前提で、ESP32シリーズのモジュールのパターンを参考にしてみました。

次に回路図を描きPCBのパターンを作成しました。PCBのパターンを作成する際のKiCADの設定画面に”Has castellated pads1“という項目があったので、一応チェックしてみました。

ただ、”Has castellated pads”にチェックを入れても、DRCをかけると基板端部にPadがかかっている旨のエラーが出ました。今回は意図してやっているので、このエラーは無視するようにして進めました。何かうまくやると端面スルーホールとして認識してもらえたりするのでしょうか…?

このやり方で作成した基板のガーバーデータをJLCPCBに投げると、画像の通りきちんと端面スルーホールっぽい見た目になっていました。なお、今回作成したのはESP32-S3といつも使っているTIのオーディオコーデックICをまとめたモジュールです。NT金沢で展示していたFM音源やボコーダーもこちらに移植して遊ぼうと考えています。今回はあいにく発注が中国の国慶節連休にかかってしまい、どのみち製造に時間がかかりそうなのでリードタイムが伸びるのを承知でレジストを紫色にしてみました。

以上、今回は端面スルーホールの基板を作ってJLCPCBのStandard PCBAサービスを使ってみる話でした。端面スルーホールオプションやSetup Feeなどで追加料金がかかりますが、ここぞ!という時に使ってみると面白いかもしれません。完成した基板はまた記事などで取り上げたいと思います。お楽しみに!

  1. castellated pad=端面スルーホール、ですね
公開日:2023/09/30