お知らせ:この記事はJLCPCBの提供でお送りしています。

前編ではJLCPCBで基板製造と部品実装を発注するためのデータをプリント基板CADであるKiCadから出力する方法を紹介しました。後編では実際にJLCPCBに基板を発注する手順を紹介します。今回は前編で出力した、

  • 基板製造用データをまとめたzipファイル
    • ガーバーデータ
    • ドリルデータ
  • 部品表
  • 部品配置ファイル

がすでに準備できている前提で説明していきます。

トップページからサインインする

まずはJLCPCBのトップページにアクセスします。いきなりサインインせず”Order now”をクリックして注文フォームに飛んでもよいのですが、どのみちフォームを埋め終わった後にサインインを要求されるので最初に”Sign in”を押してサインインします。サインインした後は自動的にこのページに戻ってきますので、そこで満を持して(?)”Order now”をクリックして注文フォームに移動します。

基板製造の注文フォームに入力する

“Order now”をクリックすると上記の画像のような注文フォームに移動します。いろいろと入力する項目がありますが、まずは”Add gerber file”をクリックし、用意しておいた基板製造用データをまとめたzipファイルをアップロードします。

zipファイルのアップロードが終わると、自動で裏面と表面のプレビューが表示されます。また、基板サイズとレイヤー数に関しても自動でデータを解析して入力してくれます。

ちなみに、zipファイルのアップロードを行った後、基板プレビューの下の”Gerber Viewer”というリンクをクリックすると、3D表示機能付きガーバービューワーのページに移動します。結構ヌルヌル動かせます。

さて、本題に戻りましょう。zipファイルのアップロードが終わった後は残りの項目を埋めていくことになります。各項目の内容は下記の通りです。各自の需要に沿って入力してください。

項目 説明
Base Material 基板のベースとなる板材の材料を選択します。

FR-4:一般的なガラスエポキシ基板です。通常はこちらを選択すればOKです。

Aluminum:アルミ基板です。パワーLEDを使った基板等、高い熱伝導率が必要な基板で使用します。1

Layers 基板の配線層の層数を選びます。ガーバーデータをアップロードすると自動で選択されます。
Dimensions 寸法情報です。ガーバーデータをアップロードすると自動で入力されます。
PCB Qty 製造枚数です。必要な枚数を選択します。
Different Design 1つのデータの中に入っている基板の種類の数を入力します。複数の基板のデータを1つにまとめたうえでガーバーデータを出力した場合、何種類の基板をまとめたのかここで入力する必要があります。
Delivery Format 複数種類の基板をまとめて製造する場合に、複数枚の基板を割り付けたデータを注文者が作成するかJLCPCB側で作成するかを選択する項目です。基板を1種類しか作らない場合は”Single PCB”を選択します。
PCB Thickness プリント基板の厚みを選択します。仕様のページを見ると、部品実装サービスを使う場合は選べる基板の厚みに制約があるようです。1.6mm厚が最も一般的だと思います。
PCB Color 基板のソルダレジスト2の色を選択します。基板の厚みと同じく、部品実装サービスを使う場合は選べる基板色に制約があります。また、緑色以外は追加の製造日数が必要になります。
Silkscreen シルクスクリーン印刷3の色を選択します。現状だとソルダレジストが白の場合を除き、シルクスクリーンの色は白となるようです。ソルダレジストが白の場合はシルクスクリーンは黒となります。
Surface Finish 銅箔が露出している部分にどのようなめっき加工をするかを選択します。HASL(Hot Air Solder Leveling)は半田めっきです。”with lead”は有鉛はんだ、”LeadFree HASL-RoHS”は無鉛はんだ、”ENIG-RoHS”は無電解金メッキ(Electroless Nickel Immersion Gold)です。
Outer Copper Weight 外側の層(両面基板ではすべての層が外側の層になります)の銅箔の厚みを選択します。一般的には1oz(35um)を選択しますが、大電流を流す場合等には2oz(70mm)を選択することがあります。
Gold Fingers 基板のデザインにカードエッジコネクタがあるかどうかを選択します。
Confirm Production file 製造開始前にJLCPCB側での基板データ確認結果を通知してほしいかどうかを選択します。
Flying Probe Test 意図しないショートや断線がないかを確認するフライングプローブテストの実施要否を選択します。”Fully Test”で問題ないと思います。
Castellated  Holes 端面スルーホールを含むデータの場合”Yes”を選択します。
Remove Order Number JLCPCB側の製造管理番号を基板から削除するかどうかを選択します。

“No”を選ぶとJLCPCB側が適当な位置に管理番号を印刷します。”Yes”を選ぶと基板に管理番号は印刷されませんが、追加料金が必要になります。

“Specify a location”を選ぶと、管理番号は印刷されますが、印刷される位置を注文者が指定することができます。このオプションは無料です。詳しい手順は公式ページを参照してください。

部品実装の注文フォームに入力する

基板製造の注文フォームを埋め、下にスクロールしていくと”SMT Assembly”という項目が出てきます。

“SMT Assembly”という欄の右上にあるスイッチボタンを押すと、上の画像のような詳細選択画面が出ます。まず最初におもて面とうら面のどちらに部品を実装するかを選択します。

“SMT QTY”は部品実装を行う枚数です。”Tooling holes”は部品実装時の位置決めピンを差し込むための穴を注文者側のデータで用意しておくか、JLCPCB側で追加するかを選ぶ項目です。デザインや強度の都合で位置決め用の穴の位置を指定したい場合は”Added by Customer”を選択し、データ作成時に公式ページの説明を参考に穴を追加しておくとよいと思います。

上記の2つの項目の選択が終わったら、利用規約に同意の上”Confirm”をクリックして先に進みます。

部品表と部品配置ファイルをアップロードする

前のページで”Confirm”をクリックすると部品表と部品配置ファイルをアップロードする画面に移動します。”Add BOM File”を押して出てくる画面から部品表を、”Add CPL File”を押して出てくる画面から部品配置ファイルをアップロードします。アップロードが完了した後は画面右下の”NEXT”を押して次に進みます。

部品実装の内容を確認する

実装部品を確認する

“NEXT”を押すとまず部品表の内容を確認する画面が表示します。特に問題がなければそのまま”NEXT”を押します。もし表示されている部品の一部の実装を取りやめる場合は”Select”欄のチェックを外します。

部品配置を確認する

次の画面では部品配置ファイルの内容と価格を確認します。画面左上のプレビュー画面では、今回実装を依頼する部品が基板上に載った状態を確認できます。初回の記事でも書きましたが、オンラインでここまでしっかり確認できるのはかなり便利だと思います。

部品配置を修正する

プレビュー画面をよく確認していくと、一部の部品の向きがおかしい場合があります。これはKiCad側の部品のパターンが基準とする向きとJLCPCBの部品情報ライブラリが基準とする向きが合っていないことが原因です。このような部品がある場合は部品配置ファイルの修正を行います。

部品配置ファイルを開き、向きがおかしい部品の”Rotation”の欄の値を変更します。ここの数値は基準の向きから部品を何度回転させて基板上に置くかを示しているので、今回の例であればQ1,Q2のRotationの数値に180を足すことになります。

部品配置ファイルの編集を終えた後は、JLCPCBの部品配置ファイル確認画面左下の”Go back”を押して部品配置ファイルのアップロード画面まで戻り、再度部品配置ファイルをアップロードします。

新しい部品配置ファイルをアップロードし、プレビュー画面画面まで再度進んで、部品の取り付け向きが正しくなっていることを確認します。ちなみに、部品実装に関してはJLCPCBのエンジニアがレビューが行われます。そのため、部品実装の向きが基板上のパターンと明らかに合っていない場合などはJLCPCB側でも修正をしてもらえるようですが、時間短縮のためにもこのステップでよく確認して直しておくことをお勧めします。

実装する部品の種類、個数、実装の向きについて特に問題がなくなったら、価格を確認して”SAVE TO CART”を押します。今回はIC類は手持ちを使う予定なので小物部品のみ実装依頼をしていることもあって、部品代は基板5枚分で4.44ドルでした。

支払いに進む

“SAVE TO CART”を押すとショッピングカート画面に進みます。特に問題がなければ”Secure Checkout”を押して支払い画面に移動します。

支払い画面ではまず発送先を設定します。新規の場合は”Add new shipping address”を押して住所を入力します。”Billing Information”は領収書の宛先です。特に発送先と変える必要がなければ”Same as shipping address”を選択すればOKです。入力が終わったら”Continue”を押します。

次に発送方法を選択して”Continue”を押して進みます。複数の輸送業者に対応していますが、個人的には表示の通りDHLが一番早く届く印象です。

 

“Submit Order”では”Pay Directly(recommended)”しか表示されないので、そのまま”Continue”を押します。

最後に支払い方法を入力します。日本向けのページからGetできるクーポンもこのタイミングで使うことができます。今回は基板製造、部品実装、送料全部込みで41.64ドルのところに、9ドルの割引クーポンを使うことでトータル32.64ドルとなりました。支払い方法の入力とクーポンの選択が終わったら”Pay”を押して注文を確定させます。

“Pay”を押して支払いが完了すると注文履歴の画面に遷移します。ここまで来たらあとは待っていれば基板が届きます。この画面では製造の進捗状況を確認することもできます。

まとめ

今回は前編に続いてJLCPCBの基板製造と部品実装サービスを利用する手順を紹介しました。部品配置ファイルの編集が途中で必要になる場合もありますが、大半の手順はWebサイト上で完結していて、メールのやり取り等が必要ないのはやはり魅力的だと思います。次回からは届いた基板の紹介や組み立てレポート、実際に使ってみたレポート等をしていきたいと思います。お楽しみに!

 

  1. 私はJLCPCBでアルミ基板を作ったことはないです。今度チャレンジしてみようと思います!
  2. 銅箔を保護し、不要な部分にはんだが付着しないようにするコーティング。一般的には緑色のソルダレジストを使うことが多いです。
  3. 文字や図形など、基板上に印刷される情報。現在はシルクスクリーンではなくインクジェットで印刷する場合も多いと聞きます
公開日:2022/03/19 最終更新日:2022/05/03