2019年9月インド・マレーシアの旅、アグラ編に続いてデリー&グルガオン編、Day1です。デリーとグルガオンに滞在していた間はほぼずっとニコ技グルガオン観察会に参加していたので、デリー&グルガオン編は実質ニコ技グルガオン観察会編になります。今回は長くなりそうなので、Day1、Day2、Day3&4の3部構成でお送りします。

グルガオン観察会開催のきっかけ

出発&デリー到着編でも簡単に書きましたが、今回のインド旅行は元々ニコニコ技術部グルガオン観察会、略してニコ技グルガオン観察会に参加するために行ったのでした。このニコ技グルガオン観察会はニコニコ技術部深圳コミュニティ高須さんの旗振りで開催されたものです。…と、ここまではすでに書いたところですが、当時のメモを読み返すと、開催までにはさらに下に書くような経緯があったということでした。

  • Maker Faire New York(MFNY)が米Maker Media社の資金難により中止になる
  • MFNYに行くつもりで日程を空けていた人が暇になる
  • 深セン観察会参加者の田中さんがシンガポールからインド・グルガオンへ引っ越していた
  • じゃあMFNYのあるはずだった日程でグルガオンに行こうじゃないか

うーん、なんとも風が吹けば桶屋が儲かるというような話という気もしますが、ともかくこういう経緯でグルガオン観察会が開催されることになったのでした。

グルガオンへ向かう

アグラ行きの翌日は朝起きてまずはホテルの朝食を食べました。朝からカレーです。昼間はカフェレストランとして営業しているところを朝は朝食コーナーとして使っているようです。

チェックアウトする前にせっかくだからとホテルの周囲を撮ってみました。ホテルはニューデリー駅のすぐ横を通る道路に面していることもあり、目の前は車やオートリキシャがせわしなく行き交っていました。3枚目の写真では人力のリキシャも走っています。ちなみにホテルの前でちょっと撮るだけだからと前に抱えたリュックの口を半開きにしたまま写真を撮っていたら、白いワイシャツを着た身なりの整ったインドの方に「危ないから閉めておいたほうがいいよ!」と忠告いただいたのでした。見た目だけで判断してはいけないとは思いますが、カオスな周囲から浮くぐらい身なりが整っていて、かえってインドの格差社会の一端を見たような気がしました。

写真を一通り撮った後はチェックアウトして、Uberを拾ってグルガオンのホテルへと向かいました。グルガオンを含むデリー首都圏ではオートリキシャを含め、Uberによる配車サービスが利用できることはデリー到着編でも書いたところですが、今回は配車された車を探す際にちょっと苦労したのでした。UberやGrabなどを使ったことがある人は分かると思うのですが、配車された車を探す際にはアプリに表示されるナンバープレートや車種、車体色を参考に探すことになります。これまた有名な話ですが、インドの乗用車市場ではスズキの子会社であるマルチ・スズキがかなりのシェアを握っています。そんなわけでUberで乗用車を手配するとかなりの確率でマルチ・スズキの車が配車されます。特に多い車種が”SWIFT”だったのですが、最初、ああスイフトね、とハッチバックのコンパクトカーのイメージで探してみたところ、なかなか見つからなかったのでした。よくよく走っている車を見てみると、小さめのセダンの後ろのエンブレムに”SWIFT”と入っていました。後で調べて知りましたが、インド市場ではスイフトにはセダンの設定が長い間あった1ようで、タクシーなどにもよく使われていたようです。どおりでハッチバック車を探してもお目当ての車が見当たらないわけです。スズキがインド向けにきちんとローカライズして車を売っているということが垣間見えたエピソードでした。

途中渋滞に巻き込まれたりもして1時間半以上かかりましたが、無事にUberでホテルに辿り着くことができました。チェックイン時間前でしたが、部屋空いてるしいいよ!と部屋に案内してもらえました。上の写真は部屋見かけたコンセントの写真(ただし上下反転)です。右側は困っている人、左側はしっかりしろ!と諭している人の顔のように見えてしまいました。右側はインドで主流の小型機器用と大型機器用の2種類のプラグが刺さるように作られている模様です。

この日は午後にニコ技グルガオン観察会としてニューデリーのJETRO2事務所と電子情報技術省を訪問する予定だったのですが、まだ時間があったので地図で発見した近場のショッピングモールまでオートリキシャで行ってみました。”The Shopping Mall”とあるので日本の小さいショッピングセンターのような雰囲気を想像していたのですが、1階部分が回廊のようになっていて小さい商店が集まる商店街のような雰囲気、2階より上は法律事務所なども入る雑居ビルというような雰囲気の建物でした。”Your Ultimate Shopping Destination In Grugram3“と堂々と書ける自信はちょっと見習いたい(?)ところです。

メトロでデリーへ行く

ショッピングモールを軽く見学した後は、一旦ホテルに戻り荷物を準備してデリーへと向かうべく、グルガオンを走る2つのメトロ路線のうちデリーまでつながっているYellow Lineの終点、Huda City Centre駅へと向かいました。こちらでは同じく参加者のいのうちさんと合流しました。なんだかとても緑色の主張の激しい駅でした。

駅はご覧の通りよくある海外の地下鉄駅という感じです。ここから30分ちょっとYellow Lineに乗り、Hauz Khas駅でMagenta Lineに乗り換えて10分弱乗車し、目的地であるJETROニューデリー事務所があるNehru Placeに近いNehru Enclave駅に到着しました。Nehru Place駅もあるのですが、Nehru Enclave駅へ行くほうが乗り換えが簡単だったことと、どのみち電気街のある1ブロックを挟んで隣り合っている駅なので、時間もあるしお昼ごはんを食べて電気街を観察してからJETROへ向かいましょう、ということになったのでした。

電気街・ネループレイスへ行く

Nehru Enclave駅を下りて南側に少し進むと各社のブランドの看板が見えてきて、電気街っぽい雰囲気が出てきます。

そしてビルを通り抜けるとこの通り、”LAPTOP”,”MOBILE”の文字を掲げた看板がずらりと並んだ電気街、ネループレイスに到着です。広場に面した雑居ビルの1階と2階の部分にPCパーツショップやスマートフォンショップが入居していました。

ネループレイスには電気街と併せてフードコートのようなエリアもありました。今回はその中から人気そうだったパンジャーブ料理のレストラン(定食屋?)を選んでお昼ごはんにすることにしました。オーダーしてお金を渡すと米の上にドカッとカレーが盛られて出てくるスタイルでした。ここでもパラクパニールを食べました。盛り付けは雑ですが実においしかったです。パラクパニールを含め、パニール(チーズ)を使った料理はパンジャーブ料理に多いようです。

ネループレイスは観察会3日目にも訪問し、雑居ビルの2階部分なども覗いてみたのでした。

ご覧の通りXiaomiのロゴや、Vivo/Oppoのスマホの広告を掲げるお店を見かけました。クアラルンプールなどで見たときも思いましたが、Vivo/Oppoは広告をしっかりローカライズして海外展開していますね。

広場には上の写真のような階段が用意されていて、2階へと上がれるようになっていました。階段もばっちり広告に利用されているのでした。

階段を上って2階へ行くと、広場に面している部分だけでなく建物の内部にもびっしりと小さい店舗が並んでいました。店舗のサイズ感は秋葉原のガード下に近いものを感じます。内部の小さいお店はPCサプライ品やプリンター関係の商品の販売やノートPCの修理サービスを提供するお店が多かったです。2階外周部はプリンター本体やCPU、グラボ等のPCパーツを販売するお店が主でした。

建物の入居者表のようなものを見ると、地下1階+地上9階4の10フロア構成で、上層階もオフィスや倉庫としてそこそこ使用されているようでした。

ちょっと独特だったのはインクカートリッジの補充業者が路上屋台として営業していたことと、同じくスマホの保護ガラス貼りやノートPCをラミネート加工する業者が路上で営業していたことです。ノートPCのラミネート加工業者は何人も広場にいて、このようシートのサンプルを置いて営業していました。

ネループレイスの端の方まで行くとこのように記事を扱うお店が連なっているエリアがありました。秋葉原と浅草橋2のような関係性でしょうか?

1回目のネループレイス見学の後、他の人と合流するまでの間JETROの事務所のすぐ隣のビルのカフェでいのうちさんと一息ついていました。マンゴー&バニラシェイクを頼んだところ、かなり甘かったのでした。

JETROと電子情報技術省へ行く

ネループレイスを一通り見学した後は他の観察会参加者と合流して、JETROニューデリー事務所へと向かいました。JETROニューデリー事務所および電子情報技術省への訪問は今回の観察会に参加した東京大学社会科学研究所の伊藤亜聖先生のアテンドによるものでした。ありがとうございました!

JETROニューデリー事務所では今回の観察会の参加者のバックグラウンドを説明した上で、現在インドが推し進めている”Digital India”という活動等、インドのIT化政策について解説をしていただきました。

その後はこちらの電子情報技術省に移動し、更にレクチャーを受けました。

Digital India構想はこれまでインドにはなかった国民ID(Aadhaar:アダール)システムを構築し、その基盤の上にペーパーレスでの許認可発行処理やキャッシュレス決済システムを載せ、広く利用できるようにすることでその先の商業・ヘルスケア・金融などのサービスを展開しやすくするという構想です。(India Stackと表現されていました。)国民IDと決済システムを政府が提供するのは、銀行口座を作ることができない貧困層にも現金決済以外の決済手段を提供し、政府からの補助金を正しく行き渡らせることができるようにするという意図があるとのことでした。逆に、インドでは実在しない学生(!)が奨学金を受け取っていた、というような問題も起きているということなので、IDによる実在証明もセットで提供することで、本当に必要な人にきちんと届くシステムを構築しているそうです。Aadhaarシステムの登録はこの時点でインド国民のうち12億人以上が完了しており、かなり浸透したシステムとなっているとのことでした。

さらにこれらの個人認証システムや決済システムなどの基本的なAPIは規格化・オープン化されているため、スタートアップを含む企業が個人認証や決済を伴うシステムを展開する上で役に立っているとのことでした。例えばUberの運転手としての登録には運転免許の確認が必要になりますが、その確認にこれらのAPIを利用することで迅速化しているとのことでした。上の写真はデモルームで実際にプラットフォーム上でどのくらい電子取引がされているのか説明してもらっているところです。この他にもデモルームにはいくつもPCが並べてあり、農業に関する情報の電子化(各地の土壌の性質などをデジタルデータとして管理し、作付けの参考にできるとのこと)だったり、政府へのパブリックコメント・陳情などを受け付けるシステムなどが展示されていました。

その他、高須さんがデモコーナーにあったこのポスターに興味を示していました。当時はインドの様々な言語のフォントが提供されているのかー、と思っただけだったのですが、改めて調べてみるとここに出ている22の言語はすべてインドの憲法第8附則に指定されている言語で、各州の公用語に指定されていたり、インド国内に話者が多くいる言語ということでした。

一通りレクチャーいただき、電子情報技術省を後にする際、建物の外に”Digital India”のロゴが飾ってあることに気が付きました。レクチャーいただいた方も「人々をエンパワーするためにDigital Indiaを進めるのです!」とおっしゃっていたので、”Empower”がキーワードなんでしょうね。

マハラジャターリーを食べる

さて、JETRO&電子情報技術省訪問の後はグルガオンに戻り、晩ごはんとなりました。この日の晩ごはんは南インド料理のレストラン”Naviedyam”へ行きました。

飲み物はラッシー、ごはんはターリーと呼ばれる大皿に様々な料理が盛られるスタイルのメニューにしました。このターリーは「マハラジャターリー」というセットです。確かに豪華でした。真ん中のパン類もおいしかったですし、カレー類もおいしかったのでした。

ちなみにいのうちさんがパフェを頼んだところ、なかなか激しい見た目のパフェが届いていました。コーンを4分割してデコレーションするのは斬新です…

コンビニへ行く

晩ごはんの後、翌朝飲む飲み物を買うべく近くのコンビニまで行ってみました。

品揃えはかなり良かったように思いますが、インドまで来ると並んでいる飲み物に全く見覚えがなくて新鮮です。

このお店ではコーヒーとアップルサイダー(ノンアルコール)、そして定番のキングフィッシャービールを買いました。コーヒーで目が覚めそうなのに”Sleepy Owl”とはこれいかに。そんなわけで、旅行先でいつもやってしまっていますが、寝る前にコーヒーを飲んでから寝たのでした。

以上、2019年9月インド・マレーシアの旅、デリー&グルガオン編Day1でした。次回はデリー&グルガオン編Day2です。お楽しみに!

 

  1. 今は”DZIRE”という名前に変更されたようです。
  2. 独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)。日本と海外の貿易に関する調査、日本法人の海外進出の支援などを業務とする機関です。
  3. 現地ではグルガオン(”Gurgaon”)のことをグルグラム(”Grugram”)とも呼びます。現在はグルグラムの方が正式名称のようです。
  4. イギリス式フロア表記なのでグラウンド階+8階で9階
公開日:2020/12/30