2023年10月のベトナム旅行記、完結編のPart3です。便宜上ホーチミンシティ編としていますが、ホーチミンシティの滞在は本当に短かったのでフエ駅から終着駅・サイゴン駅までの寝台列車の旅の記録がメインとなります。

再びフエ駅へ

フエ編の最後に書いた通り、晩ごはんを食べつつフーダビールを飲んでからフエ駅へと戻ってきました。

雨降りだったこともあり早々に駅構内に移動しました。駅構内にはシンプルな乗車券の販売窓口がありました。今回は乗車券をすでに買ってありましたが、ここで乗車券を当日購入している人もちらほらいました。なお、窓に書いてあるのは特急列車の時刻表です。各駅停車や区間列車などはもういくつかあるようですが、ハノイ~ホーチミンシティ間を走破する特急列車はこちらの上り4本下り4本の計8本しかありません。

待合室を通ってプラットホームに出てみると、建物の壁沿いに売店がずらっと並んでいました。ハノイからフエまでの道中でも見ましたが、この陳列は圧巻です。

しばらく待っていると、ハノイ行きの上り列車が先に奥のホームに入ってきました。時刻表からすると私が乗るホーチミンシティ行き下り列車が先に入ってくるはずだったのですが、少し遅延していたようです。

さらに少し待っていると、向こう側のホームの上り列車が出る前に私が乗る下り列車がやってきました。列車のヘッドライトが雨に当たって光の筋が見えていました。到着してすぐ発車するわけでもないし、基本的に指定席のはずなのについついホームに出てきて列車が到着するのを眺めてしまうのはみんな同じですね。

なお、フエ駅はハノイ駅から688kmの位置にあります。終着駅であるホーチミンシティのサイゴン駅はここからさらに1000km以上先にあります。まあ、1000kmといっても、シベリア鉄道に比べたら大したことありませんね!

再び寝台列車の旅

フエ駅から再び寝台列車に乗り込み、2時間半ほどでダナン駅に到着です。夜中の到着だからか、ダナンは大きい駅ですがフエ駅到着時にあったような音楽は流れていませんでした。カラフルな電光掲示板がまぶしいです。ちなみに、ダナン駅は本線から分岐した支線にある駅であるため、この駅で列車の進行方向が切り替わります。

寝て起きて翌朝は朝ごはんを食べに食堂車へ行きました。この時朝6時半でしたが、この列車のホーチミンシティへの到着は午後6時半過ぎの予定なのでまだ到着まで1時間あったのでした。食堂車は1号車の先に連結されているので、私が乗っていた6号車からの道中には3段ベッド・6人部屋の3等寝台や普通席の車両などもありました。

朝だしフォーでも、と思ったのですが、フォーの麺が品切れということだったので牛肉ビーフンのブンボーをオーダーしました。2023年のGWに乗ったタイ国鉄の食堂車はセントラルキッチンで調理済みの弁当のような感じでしたが、こちらは車両内で調理しているような雰囲気のブンボーでした。お値段6万ドン(約370円)と、さすがに市中で食べるよりはほんの少し高いですが、観光客向けのレストランで食べるのとは大して変わらないと思います。味もなかなかでした!

食堂車から自分の個室に戻ってきてしばらくすると、ワゴン販売がやってきました。長時間停車する駅が割と少ないので駅に降りて売店であれこれ買う、というのがやややりにくいのですが、それを補うように比較的マメにワゴン販売が来る印象でした。この時はベトナムコーヒーの缶コーヒーを購入し、食後の一服としました。

食堂車で朝ごはんを食べてから約1時間、ホーチミンシティまで残り約500kmのトゥイホア駅までやってきました。車窓からスーツケースを持って集まっている団体が見えました。比較的若い人が多そうだったので、修学旅行的な何かでしょうか?

しばらくすると奥のホームにも列車が入ってきました。機関車の先頭に”DOI MOI”と書いてあります。社会科で習う方も多いかと思いますが、ドイモイは「刷新」という意味で、ベトナムの改革開放政策の名前でもあります。中国の高速鉄道の和諧号といい、社会主義国の鉄道はそういう名前を付けがちなのでしょうか?

ちなみにハスキーらしきワンちゃんをかごに乗せて運んでいる方がいました。暑い中狭いケージに押し込まれてちょっとかわいそうです…

トゥイホア駅を出てしばらくして、再びワゴン販売がやってきたので再びレモンティーのC2を買いました。

トゥイホア駅から次の停車駅のニャチャン駅までの間には海が見えたりもしました。南北に細長いベトナムを縦断する路線ではあるのですが、本当に海の真横を走る区間は意外と少ない印象です。

ニャチャン周辺はビーチリゾートということもあってか、私以外にも車窓を見ている人々がちらほらいました。

ちなみに山が見えるときはこんな感じで、これはこれで壮大な風景が広がっていました。

さて、ここまで何度か書いているように、ニャチャン駅が近づくとお約束の爆音の音楽が流れました。さすがにこの頃には慣れていたのでせっかくだからと音を収録してみました。本当に最大音量なんじゃないかという爆音で放送が流れるのでした。駅ごとに結構音楽も趣向が違って、結構力を入れているのではないかという気がします。

音楽が流れてしばらくするとニャチャン駅に到着です。久々の大きい都市の駅ということもあってか、同室の他の方含め、かなり乗客の乗り降りが多い駅でした。シベリア鉄道も似たような傾向が見えましたが、おそらく他の都市への航空便が頻繁に飛ぶほどではない中規模の都市を発着地とする移動の場合、飛行機での移動よりもトータルの手間で寝台列車の方が便利というケースがあり、そのような需要のある駅では乗降客が多いのだと思います。

ちなみにニャチャンの駅のプラットホームにはなぜか鳥かごが掛かっていました。徳を積むための放鳥用の鳥だったらこんな風には吊らない気がするので、飼っているのでしょうか…?

ニャチャン駅の売店もなかなかの迫力です。ここにもフエ編で紹介したご飯もの(COM/XOI/CHAO)の看板がありますね。

ニャチャンへの到着は午前10時ごろでしたが、ここから先2時間ほど停車駅がなく、次の停車駅であるタップチャム駅は数分しか停車しないということで、ニャチャン駅の売店で水と肉まんをお昼ご飯として確保しておいたのでした。肉まんの具はウズラの卵と鶏肉でおいしかったのですが、肉まんの下の敷き紙がコピー用紙のような普通の紙で剥がすのにやや難儀しました…

タップチャム駅を過ぎ、時刻は12時を過ぎたころになると車両にかなり日差しが入ってきました。個室内に温度計が付いていたのですが、空調の効きが弱いのか室温が30度まで上がっていました。日本よりもカラッとしているためそこまではつらくないのですが、ちょっと暑いなあと感じていました。タイ国鉄は冷房が効きすぎというくらい効いていたのでそれとは対照的です。

さらにひたすら走って午後3時前、小腹が空いてきたのでワゴン販売でトムヤムラーメンを買いました。各車両に備え付けの給湯器でお湯を入れて食べます。

ちなみに車内販売に限りませんが、東南アジアで売っているインスタントカップ麺はどこでも食べられるように蓋を開けると折り畳み式のフォークが入っているのが一般的です。

トムヤムラーメンを食べてから1時間ほどするとワゴン販売でバインミー売りが回ってきたのでフエまでの道中に引き続き購入しました。ワゴン販売の中身もちょくちょく変わるので、退屈しません。買いませんでしたが、豚のソーセージなどを売りに来たりもしていました。

終着駅のホーチミンシティ・サイゴン駅が近づくにつれ、踏切から見える道路とその周りの風景が「町」という感じから「街」という感じに徐々に変わってきました。バイクの群れも徐々に規模が大きくなってきました。

車窓からはベトナムの宗教・カオダイ教の寺院も見えました。カオダイ教はベトナム南部を中心に信仰されている宗教なので、これを見てああはるばる南部に来たのだなぁとしみじみ思ったのでした。

サイゴン駅に到着

そして午後6時半過ぎ、列車は終着駅・ホーチミンシティのサイゴン駅に到着しました。ハノイから合計1726kmの旅がいよいよ終了です。

待合室を通って駅の玄関の方に出ると、”CAM ON QUY KHACH, HEN GAP LAI”という看板がありました。意味は下に書いてある英語の通り、「お客様ありがとうござます、また会いましょう」という意味ですが、1726kmの旅を終えた後に見るとちょっと感慨深い看板でした。ちなみに余談ですが、この文言の前半を漢字で書くと「感恩貴客」となります。日本語話者が読んでもなんとなく意味が分かるあたりが面白いです。

感慨ひとしおというところではあるのですが、到着したのが午後6時半、日本への戻りのフライトの出発が午後11時半なので、チェックインなどの手続きを考えるとホーチミンシティ滞在は2時間そこそこということなります。そんなわけで、早々にサイゴン駅を後にしました。

ホーチミンシティで晩ごはん

サイゴン駅を出て、今回の旅行最後の晩ごはん&ビールを求めてまずは繁華街のブイビエンへとやってきました。2022年のベトナム旅行など、ここは何度か訪問していますが、来るたびに通りの輝度が上がっている気がします。

しかしブイビエンのレストランには今一つビビッとこなかったので、個人的なもう一つの定番であるPasteur Street Brewingにやってきました。

以前食べたここのハンバーガーがおいしかったので、今回も懲りずにハンバーガーです。

ビールを飲みながら店内を見回していてこの看板に気が付きました。ホーチミンシティが本店のPasteur Street Brewingですが、この看板によると2017年からはハノイでもタップルームを営業しているようです。機会があったらハノイのタップルームにも行ってみたいところです。

Pasteur Street Brewingでビールとハンバーガーを味わった後は、やや名残惜しいですが日本への飛行機に乗るべくタンソンニャット空港へと向かったのでした。

以上、2023年10月のベトナム旅行記、フエ~ホーチミンシティの移動とほんのちょっとのホーチミンシティ滞在編でした。さすがにホーチミンシティの滞在は短すぎたという感じはありますが、ベトナム統一鉄道での旅はなかなか味があって面白かったです。実際に計画が進むかどうかはさておき、東南アジア各国の鉄道は昨今高速化の話が持ち上がることも多いため、日本のように東南アジアの寝台列車も徐々に姿を消す日が来るかもしれません。そうならないうちに、チャンスがあればまた別の路線にも乗ってみたいと考えています。

次回は「Maker Faire Shenzhen 2023に出展してきました」にも書いている、Maker Faire Shenzhen 2023出展の際の香港・深圳旅行について書く予定です。お楽しみに!

公開日:2024/12/30