Blogをこちらに移転するちょっと前の2月11日から2月16日まで,家族旅行でロサンゼルスに行ってきました.
いろいろと旅行記を書きたいネタはあるのですが,まずは面白かった,そして4月に終了してしまう企画展”The Science Behind Pixar“について書きたいと思います.
The Science Behind Pixarはロサンゼルスにあるエクスポジションパーク内のカリフォルニア・サイエンスセンターという施設で開催されている企画展になります.
カリフォルニア・サイエンスセンターはスペースシャトル・エンデバーが常設されていることで有名で,私もそれが目的でサイエンスセンターへ行くことを計画していました.元々この日はツアーでシックスフラッグスという絶叫マシンばかりの遊園地に行くという話があったのですが,私は絶叫マシンがダメなので,この日だけ別行動で私はスペースシャトルを見に行き,他の家族3人は絶叫マシンに乗りに行けばWin-Win,という結論となったのでした.
さて,このエクスポジションパークはダウンタウンの7th St./Metro Center駅からメトロ・エキスポラインで4駅のExpo Park/USC駅の目の前にあります.
エキスポラインはこんな感じの電車で,サンタモニカまで直通している(2016年に全線開通したばかり!)路線になります.
Expo Park/USC駅はこんな感じの路面駅です.私はサイエンスセンターを出た後サンタモニカまでエキスポラインで行ったのですが,このような路面電車のような区間と高架区間,地下鉄の区間が入り混じっている面白い電車でした.
駅名にもある通り,エクスポジションパークの反対側には南カリフォルニア大学 (USC : University of Southern California)があります.
先ほども書いたように,USCとは反対側を向くと,目の前にエクスポジションパークがあり,広大な庭園がありました.庭園をサイエンスセンターへ向けて歩いていくとリスに遭遇しました.
サイエンスセンターへの道中でThe Science Behind Pixarの旗を見つけ,ここで初めてこの企画展の展示を知りました.
サイエンスセンターの建物はレンガ造りの建物など数棟からなり,非常に広い展示空間となっていました.
私がサイエンスセンターを訪れたのは日曜日でした.サイエンスセンターの入場料自体は無料なのですが,エンデバーの展示(と企画展)は有料となっていて,特に土日のエンデバーの観覧は時間指定の事前予約が必要とのことでした.私は10時15分の入場で予約をしていたため,まず最初にエンデバーを見に行きました.
エンデバーは想像以上に大きく,単に機体を展示するだけでなくスペースシャトルの各ミッションの説明など,機体だけでなくスペースシャトル計画とそれを支える技術全体について理解を深めるような展示がなされていました.(個人的にはお土産コーナーも超楽しかったです!)
さて,本題のThe Science Behind Pixarですが,まずはサイエンスセンター入り口の売り場で$14.95のチケットを購入する必要があります.実はこのチケットはエンデバーの観覧料込みで,さらにこちらもエンデバーと同様入場時間指定制のチケットなので,もし行かれる方がいたらインターネットで予約してしまうことをおすすめします.ちょうどお昼時だったこともあり,10分ほどで入場が開始するチケットを購入することができました.
チケットに書いてある時間に入場待機列へ行くと,横には上のようなパネルがありました.一体タイトルに”Science”と入っているのはどういうことなんだろうと思っていたのですが,Pixarの映画を支える技術の展示のようだということが分かりました.
チケットに書いてある入場指定時間は15分刻みになっていて,20人程度入ってからしばらく待ち,というような雰囲気でした.
豪華なイントロ映像
会場に入るとすぐに映写室のようなスペースがあり,イントロ映像を見る流れになっていました.これを同時に見られる人数の関係で前述のような入場スタイルになっていたようです.
さて,この5分間のイントロ映像なのですが,これがもう本当によくできていました.内容としては,PixarのCG映画の製作の流れ(彼らは”Pipeline”と呼んでいるようです)を各セクションのスタッフが解説しながら追うものですた.5分間に簡潔にまとめてあり,最後に実際の展示で体験してみよう!という風に展示へつながるようになっていました.
5分間と短い映像でしたが,Pixar映画のキャラクターは大量に出てくるわ,「トイ・ストーリー」のジョン・ラセターは出て来るわ,締めくくりにはPixarのCEOであるエドウィン・キャットマルまで出てくるという豪華さでした.
また,興味深い点として,PixarのCG映画では毎作1つずつ革新的な技術的課題に挑戦する,ということを行っているとのことでした.例えば,「モンスターズ・インク」では毛皮のような質感の表現というテーマに挑戦したとのことでした.
徹底した体験型展示
展示のコーナーではイントロ映像で解説があった各工程についてそれぞれブースが用意されていました.写真にあるように,展示にはPixarの過去の映画のキャラクターがフル活用されていて,小さい子供の興味も十分引くようなものとなっていました.
イントロ映像で紹介されていたPixarのCG映画の製作過程は,
- Story&Art:脚本と絵コンテを作る
- Modeling:キャラクターのモデルを作る
- Rigging:モデルに骨組みを付加して動かせるようにする
- Surfaces:モデルの表面の質感を付加する
- Sets&Cameras:キャラクターを置くセットとカメラワークを決める
- Animation:キャラクターに動きを付加する
- Simulation:キャラクターの髪などに自然な動きを付加する
- Lightning:照明を付加する
- Rendering:最終的な動画を生成する
というように分かれていました.
この展示ブースのすごい点は,インタラクティブな展示がすべての工程について用意されている点です.
例えば,Riggingの展示では画面に表示されるキャラクターの腕の部分の骨格を4種類かの中から選択し実際に動かしてみることができます.ここに出てくるキャラクターも流石Pixarで,「トイ・ストーリー」のウッディ,「Mr.インクレディブル」のイラスティガール,「ウォーリー」のEVEという,それぞれ腕に異なる特徴を持った3種類のキャラクターを選択することができるようになっていました.このように,Pixarのキャラクターを通じて,Riggingの工程で考えるべきポイントを簡潔かつCGの専門家でない観客層にも的確に伝えるような展示となっていました.
このような展示の工夫はもちろんRiggingに限らずすべてのブースで見ることができました.
Modelingのブースでは手前のレバーを引くと押し出し操作が実行されて,それがCG中のどのようなパーツとして使われるのか,サンプルが最後に表示されるといったような展示もありました.1つの工程につき複数の体験コーナーがあり,Modelingのブースにはこの他にも回転体のモデリングの体験コーナーもありました.
個人的にはRenderingのブースはModeling等と違って一体どう体験するんだろうと不思議だったのですが,行ってみると現実的な処理時間でレンダリングが終わるようにレンダリング品質に関わるパラメータをうまく調整するという展示がされていて膝を打ってしまいました.
先進的なポイントも紹介
各ブースにはここまで紹介してきた体験型展示だけでなく,それぞれの工程でPixarがどのような技術的課題に挑戦してきたかということを紹介するパネルもありました.
Modelingでは細分割曲面(これはCEOのキャットマル氏の研究が有名な分野ですね.)についての割とテクニカルな説明があったり,SurfacesのブースではしれっとBRDF(双方向反射率分布関数)の説明があったりと,単に体験型展示で楽しむだけでなく,もうワンステップ踏み込んだ説明を聞きたい人も満足できるような情報が提供されていました.
ここでも内容をよく理解してもらうための工夫が凝らされていて,細分割曲面のパネルでは元々のポリゴンのデータから作成した模型と,ポリゴンを細分割した後のデータから作成した模型の2種類が展示してありました.上の写真のスプリングはSimulationのブースにあったもので,「メリダとおそろしの森」のメリダのカールした髪の毛を題材としたものです.髪の毛のほどよい伸縮を再現するための物理モデルの工夫について,実際に2種類のスプリングを触ってみて体感することができるようになっていました.
予習・体験・復習
体験ブースを抜けると,最後に再びここまでに紹介してきたPixarの映画製作の”Pipeline”のまとめが現れます.それぞれの展示の品質もさることながら,イントロ映像で予習し,展示ブースで体験し,そして最後にもう一度まとめて復習するという,展示の流れの設計も大変良く練られていると感じました.
このまとめのセクションは各工程を説明したパネルが円形に並んでいて,順を追って各工程をおさらいすることができるようになっていました.また,それぞれの工程によって映像がどのように完成していくのかという点についても,パネルの上のディスプレイの映像で分かりやすく示されていました.
まとめ
今回は4/16に終了してしまうカリフォルニアサイエンスセンターの企画展”The Science Behind Pixar”について紹介しました.実際のところ偶然見つけて入った特別展でしたが,子供だけでなく大人も十分に楽しめ,またそれぞれの展示の見せ方についても大変勉強になる展示でした.会期はあと1ヶ月ほどですが,LAのダウンタウンからであればメトロだけで簡単に訪れることができる場所なので,ぜひLAに行く機会のある方は見に行ってみてはいかがでしょうか.