2024年の10月にMaker Faire Bay Area(MFBA) 2024に参加するべく、サンフランシスコ周辺に行った時の旅行記を書いていきたいと思います。メインイベントであるMaker Faire Bay Areaの参加記はすでに「Maker Faire Bay Area 2024に行ってきました」として書いていますので、今回はそれ以外のアクティビティについて紹介します。

まずはサンフランシスコへ

Maker Faire Bay Area 2024に行ってきました」にも書きましたが、仕事の都合で2024年9月にカナダ・バンクーバーに引っ越したので、今回の旅行の起点はバンクーバーとなります。バンクーバーのメインの空港であるバンクーバー国際空港は結構こぢんまりとした空港です。

カナダの空港の独特な点として、カナダ国内線、国際線のそれぞれのターミナルの他に、アメリカ合衆国1行き専用ターミナルがあることが挙げられます。これはアメリカを外国と見なしていない2…のではなく、アメリカへの入国審査を飛行機に乗る前にカナダ側で行うシステムがある関係で人の動線が他の国際線と異なることによる対応だと思われます。飛行機を降りた後に入国審査で並ばなくて済むのでなかなか便利なシステムです。

さらに、ESTAでのアメリカ入国が2回目以降の人は、事前に登録しておくことでMPC(Mobile Passport Control)というシステムを使い、スマートフォンアプリでの手続きにより迅速に入国審査を受けることができます。私はカナダに引っ越してきた後にESTAを取得したのですが、この旅行の前に車で一度アメリカまで行っていました。そのため、この時が2度目のESTA利用での入国になり、MPCを使うことができました。MPC用の有人審査レーンに進んで審査を行うのですが、まったく人が並んでいませんでした。間違ったところに来てしまったのではないかと一瞬焦りましたが、単に並んでいる人がいなかっただけだったようでした。日本からアメリカを訪問する場合はアメリカ側で入国審査を受けることになりますが、そのような場合でもMPCを使うとかなり審査が迅速になるはずなので、ESTA利用が2回目以降という制約はありますが、積極的に活用することをお勧めします。

そんなこんなですんなりとアメリカ入国を果たし、5月6月の怒涛のSFC修行で得たスターアライアンスのステータスを活用してエアカナダのラウンジでしばらく待ってから飛行機に乗り込みました。

バンクーバーからサンフランシスコは西海岸をひたすら南下するだけなので2時間ちょっとの短いフライトです。しかし着いて外を見るなり、何もかもスケールが大きいなあと感じたのでした。日本からやってくるとバンクーバーでも道やら建物やらが大きいなあと思わされるのですが、アメリカはさらにまた何でも大きいなあと思ったのでした。空港もかなり広いです。

大きいついでに空港から外に出るのもひと手間かかるのでした。今回はMaker Faire Bay Areaの会場がサンフランシスコの空港からかなり遠いことが分かっていたので、レンタカーを借りる予定でした。しかし空港のレンタカーセンターはかなり遠くにあり、そこにたどり着くためには空港内を走る鉄道に10分ほど乗らないといけないのでした。しかも今回私がレンタルしたレンタカー会社はコストカットのためか、そこからさらに送迎バスに乗って移動したところにオフィスがあったのでした。何をするにも大移動です…

着いて早々に怒られる

ともかく、レンタカーオフィスに移動して車を無事借りることができました。今回は日本から参加するしらかわあずまさん(@sylacwa)たちをピックアップしてから次に紹介するAirbnbの物件に向かう予定だったので、レンタカーオフィスから一旦空港の到着ロビーへと向かいました。しかし到着ロビーの停車ルール3が分からず、しらかわさんたちを発見するも一回到着ロビーを通過してしまいました。

その後ぐるっと回ってもう一度到着ロビーに戻ろうと運転していると、分岐のところで危うく違う方面に行きそうになり、慌てて車線を変更しました。すると後ろから突如サイレンの音が聞こえてきました。バックミラーを確認すると、なーんと真後ろにパトカーがいたのでした。おっと、車線変更禁止のところだったか…これは捕まってしまうのだろうか…ピックアップに行くのが遅くなってしまう…などいろいろ考えつつも、とにかく安全なところまで移動して停まるしかないなと考えて運転を続けました。

そうこうしているうちに結局到着ロビーに戻ってきてしまい、パトカーに追いかけられているのを見たのか、誘導員の人もすぐ誘導してくれ、とりあえず停車したのでした。事前にしらかわさんたちは車の特徴をお伝えしていたこともあり、私に気が付いてこちらに向かってきているな…とは思いつつ、そちらには目もくれずまずは横付けされたパトカーの方を向いてウインドウを全開にしたのでした。さあどうなる、これはもうMaker Faire Bay Areaどころではなくなってしまうのではないか…と思ったのですが「空港の道はややこしいのは分かるけどね、間違った道に行ってもゆっくり大回りして来れば戻ってこれるんだから、急に車線変更しちゃダメだよ!」とのお叱りを受けるだけで済んだのでした(もちろん謝りましたが)。しらかわさんによる訪問記では私が冷静に警察に対応していた、と書かれていますが、本人はまーーったく冷静ではなかったのでした。みなさんはこのようなことのないように気を付けてください…

そんなトラブルもありつつ、なんとかしらかわさんたちをピックアップして、Maker Faire Bay Area会場の近く、ヴァレーホのAirbnbへと向かって行ったのでした。道中の高速道路は人も車も少ないバンクーバー周辺では見ない片側5車線の超巨大高速道路で、果たしてきちんと所望の出口で降りられるのだろうか…と思いつつ運転していたのでした。結果、所要時間にさほど影響のないところで一度道を間違えただけで、他は道を間違えずに(まあ空港で派手に間違えたんですけどね)Airbnbに到着できたのでした。

Airbnbに泊まる

さて、先ほどから何回か書いているように、今回は民泊サービスのAirbnbに宿泊しました。Maker Faire Bay Area訪問前から、参加者向け助け合いDiscordで会話させていただいていたサンフランシスコ周辺在住のseigotさん(@st17890027)、Ryuさん(@ryu10rc)たちに旗振りをしていただき(本当にありがとうございました!)、一軒家を丸ごと借りて各部屋をそれぞれの方々で分けて使っていました。Airbnbはこの時初めて使ったのですが、バスルームが複数個あったりするアメリカの大きな家をこういうスタイルで借りられるのは確かに結構便利かもしれないなと思ったのでした。こちらは1階のリビングルームの様子ですが、写真に写っていない反対側に同じくらいの広さのリビングダイニングがもう一つあるのでした。

ちなみに裏庭にはテラスもあり、朝はなかなかの眺めでした。10月なのでちょっと寒かったですけどね。

今回泊まったのは本当に普通の一軒家をまるごと貸し出しているところだったので、キッチンもアメリカ仕様でフル装備だったのでした。Ryuさんが手料理を振舞ってくださり、みんなでテーブルを囲みつつMaker Faire談義などをしていたのでした。

ちなみにこちらはWhole Foodsのフルーツタルトです。めちゃくちゃおいしかったのでバンクーバーのWhole Foodsにもあるかもな~と思って何度か見に行ったのですが、バンクーバーのWhole Foodsには置いていなかったのでした。まあカリフォルニアよりフルーツの生産量は全然少ないでしょうからね…

ソノマワインを堪能する

Maker Faire Bay Areaの会期2日目(土曜日)は、途中で会場を一旦抜けて現地在住のRyuさんのお知り合いのワイナリーのテイスティングルームに連れて行っていただきました。テイスティングルームがあるソノマは隣接するナパバレーと並んで、カリフォルニアワインの産地として有名なところです。ヴァレーホから車で40分ほどでソノマの中心部に到着しましたが、そこまでの道中は右を見ても左を見てもワイン用のブドウ畑、というエリアもあったりして、なるほど、これはワインの産地として有名になるわけだ…と思ったのでした。

テイスティングルームはソノマの中心部にある小さなショッピングモールの中にありました。なかなかおしゃれなショッピングモールでした。10月ということでバンクーバーは徐々に日照時間が短くなり、日中も曇っている日が多くなってきていましたが、さすがはカリフォルニア、ばっちり快晴でした。またペールオレンジの壁は青空に映えますね。

今回訪問させていただいたのはこちらの”SOSIE“というワイナリーのテイスティングルームです。ここはカリフォルニアで育ったブドウでフランスのエッセンスのあるワインを造る、というモットーのもとワイン造りに取り組まれているワイナリーです。テイスティングルームの壁に描かれたクマとニワトリはこのモットーを象徴しています。クマはカリフォルニアのシンボル(州旗にもクマが描かれているのです)、ニワトリはフランスのシンボル(サッカーなどの代表ユニフォームにはニワトリが描かれています)なんですね。

何種類かのワインを試飲させていただいたのですが、どれもおいしく、免税枠の上限の2本(1.5L)のワインを購入させていただきました。余談ですが、カナダへの酒類の輸入の際の免税枠はワインは1.5Lまで、ビールを除くその他のお酒は1.14Lまでです。しかし、なんとビールについては355mL缶で24缶、または8.5Lまでと激甘なのでした。ビールだけは1ケースまでOKということですね。なんとも極端にビールをひいきするルールです。

テイスティングルームが入居しているショッピングモールだけでなく、このあたりはのんびりとした街並みが広がっているのでした。この時以前に訪問したことがあったアメリカの都市はほぼ観光地の大都市だけだったので、アメリカの小さい街を歩くというのは個人的にはちょっと新鮮な体験でした。

ちなみにここは現在のメキシコの方から、1700年代後半から1800年代前半にかけてスペイン系の宣教師が徐々に北進してキリスト教を宣教していたエリアの北限であり、彼らが1823年に最後に建てた伝道所の一帯が歴史遺産として保存されているのでした。正直なところアメリカは広すぎて地理的な感覚がピンとこないことも多いのですが、この話を聞いて、そうだよなあ、メキシコと陸続きなんだよな…と当たり前のことを改めて実感したのでした。

そして最後に街の中央にある広い公園と、その真ん中に建つ1908年に建設された市庁舎をちょっとだけ眺めて、Maker Faire Bay Areaの会場へと戻って行ったのでした。Ryuさん、連れていっていただきありがとうございました!

コンピューター歴史博物館に行く

さて、サンフランシスコ方面に行くのだからここも行ってみようということで、ド定番であるゴールデンゲートブリッジなどには目もくれず4、バンクーバーへのフライトの前に立ち寄ったのがこちら、コンピューター歴史博物館です。ここはマイクロソフトのシリコンバレーオフィスやグーグル本社などもあるマウンテンビューに立地する博物館で、読んで字のごとく、コンピューターの歴史にまつわる資料を収集・展示している博物館です。どの展示品もそれぞれ面白かったのですが、ぎゅっと絞ってその中からいくつか紹介したいと思います。

まず、博物館の建物の中に入ってみるとエントランスには様々なマウスや、Waymoの自動運転車のプロトタイプなどが展示されていました。Waymoの自動運転車のプロトタイプはなんだかモルカーみたいなフォルムです。

入場券を買って常設展示へと進むと、まず最初に展示されているのはそろばんなのでした。どうしてもコンピューターというと現代のパーソナルコンピューターを思い浮かべがちですが、ここの展示はプリミティブな「計算機」からきちんと歴史を紹介しているのでした。

こちらは手回し計算機の一種であるクルタ計算機です。手回し計算機というと日本でも有名なタイガー計算器のような、卓上に置いて使う計算機をイメージされる方が多いかもしれませんが、こちらは手持ちで計算を行うことができるコンパクトさが特徴で、小型の電卓が登場する前は距離や時間の計算を行うためにカーラリーのナビゲーターがこのクルタ計算機を使う事例が多くあったようです。

このほかにも原始的な計算機にまつわる展示としては、バベッジの階差機関のレプリカなども展示されていました。

IBMにまつわる展示

さて、コンピューターの黎明期に果たした役割が大きい企業の一つとして、IBMがあります。今やITソリューションがIBMの主力事業になっていますが、元々IBMはこちらの写真に写る計量器やタイムレコーダー、統計用パンチカードの処理装置などを扱う複数の会社が合併してできた会社です。そう聞くと”International Business Machines Corporation”という正式名称も納得です。

おなじみのIBMのスローガン”THINK”にまつわる展示もありました。各国語に翻訳したりもしていたんですね。

そしてIBMのエポックメイキングな製品としては絶対に外すことはできないSystem/360の展示もありました。System/360はいわゆるメインフレームと呼ばれる企業向けのコンピューターです。それまではそれぞれ専用のコンピューターが用意されていた経理などの商用計算と、科学技術計算との両方を1つの種類のコンピューターで賄えるようにしたことや、比較的安価なローエンド機種から、計算速度を求める顧客向けのハイエンド機種まで同じ命令セットに対応し、同じプログラムを動かせるという互換性を備えたことなど、それまでのコンピューターにはなかった様々な特徴を備えたことから大ヒットとなり、メインフレーム時代のIBMの大きなシェアを盤石のものとした製品です。

ちなみに、System/360開発時のIBMの年間収支は25億ドルだったそうですが、System/360の開発には50億ドルが費やされていて、まさに社運を賭けた一大プロジェクトだったのでした。

この博物館にはコンピューター本体の展示だけではなく、それぞれのコンピューターを支える技術についての展示もあります。この写真の一番下に写る金色の板はポリエステル製のカードで、これにパンチで穴をあけることで簡単なプログラムを記録することができるようになっています。

先ほど書いたようにSystem/360は同一の命令セットに対応したローエンドからハイエンドまでの複数機種を展開していましたが、ローエンド機種ではハイエンド機種が完全にハードウェアで実装している一部の処理を、このパンチカードによってプログラミングされたマイクロコードによる制御に置き換えることで、回路の複雑度を抑えつつ上位機種と互換の命令セットを実装していたそうです。いまでこそマイクロコードによる制御であるマイクロプログラム方式は当たり前のものになっていますが、これを思いついたことや、当時の限られた技術でうまくそれを実装するというのはなかなかすごいな…と思ったのでした。

ちなみに、メインの展示エリアとは別の部屋にはSystem/360よりも前の時代のIBMの商用計算用コンピューターであるIBM 1401が動態展示されていました。私が訪問した時は動作の実演は行っていませんでしたが、1週間に2回、動作の実演があるようです。

ドイツのメカ

IBMにまつわる展示についてがっつり紹介しましたが、アメリカだけではなく、他の国のコンピューターにまつわる展示ももちろんありました。こちらは第二次世界大戦中に連合国軍を大いに苦しめたといわれるドイツの暗号機「エニグマ」の実物です。

そしてこちらは同じくドイツの初期のコンピューター、コンラート・ツーゼによる機械式コンピューターであるZ1の2進演算ゲートのレプリカです。このような板とピンによる機構を組み合わせることで、現在のトランジスタによる論理演算回路と同様の演算を実現しています。Z1は完成が1938年であり、プログラムにより様々な動作を行うコンピューターの先駆けの一つといえます。

ちなみに今回は紹介を省略しましたが、ENIACやアタナソフ・ベリー・コンピューター(ABC)など、アメリカで発明された初期の電子式コンピューターに関する展示ももちろんありました。このあたりもなかなかの充実具合でしたね。

見た目もかっこいいスーパーコンピューター

従来からの科学技術計算用の大型コンピューターの流れを汲む、超高速なコンピューターであるスーパーコンピューターに関する展示ももちろんありました。こちらはその特徴的なフォルムとその速度(1号機が納入された1976年当時、世界一速いコンピューターでした)で有名なクレイ・リサーチのCray-1です。基板間の信号の遅延を抑えるためにCの字型の筐体とし、最短距離となる内周に配線を通していたり、放熱のための機器や電源回路を下部のベンチに収めていたりとなかなか強烈な設計のスーパーコンピューターです。上の写真で筐体中央に見えている水色のモジャモジャがその配線なのですが、どの配線も3フィート(約91センチ)以下の長さに抑えられているそうです。しかしこれだけのモジャモジャをよく間違いなく配線できますよね…

こちらはThinking Machinesによるコネクションマシンです。こちらは初代のCM-1ですが、65,536個のシンプルなプロセッサが内蔵されていて、それぞれが同時に動作するという超並列マシンの先駆け的存在です。ちなみにこのCM-1を含め、Thinking MachinesのスーパーコンピューターはフロントパネルにLEDが内蔵されていて、計算をさせるとそれらがチカチカ点滅するというギミックがあります。ぜひ動いているところを見てみたいものです。

珍品?たち

コンピューターの歴史にまつわるものがバラエティ豊かに収集されているということもあり、こんなものまで!と思わされる展示もいくつかありました。こちらは1980年代のホームコンピューターであるコモドール64をシンセサイザーのように使うために、本体にかぶせて使うアタッチメントです。ちなみに全く同じものをMaker Faire Bay Areaの会場のビンテージコンピューター愛好団体の展示で見ていたので、博物館に入るレベルのものを展示していたのか…とびっくりしてしまったのでした。

そしてこちらはCG関係の方にはもはや説明不要な「ユタ・ティーポット」の実物です。なんの変哲もないメリタ社製のティーポットですが、CGの黎明期にユタ大学のマーティン・ニューウェルがこれをモデリングしてCGの各種レンダリングアルゴリズムのサンプルなどに使用したのでした。その後、これがCGシーンに定番のサンプルとして広まったことから、有名なティーポットとなったものです。

空港へ

コンピューター歴史博物館を見学した後はレンタカーを返却して空港へと戻りました。サンフランシスコ空港のラウンジにもソノマのワインがあったのでいただきつつ、パンプキンパイを食べました。パンプキンパイをきちんと食べたのはこの時が初めてだったと思うのですが、結構しっかりカボチャの味がするんですね…!

そんなこんなでしばらくラウンジで休憩し、再び2時間ちょっとのフライトでバンクーバーへと戻って行ったのでした。

以上、2024年10月、Maker Faire Bay Areaの際のサンフランシスコ周辺旅行記でした。2泊の旅行でしたが、Maker Faireも含めてかなり充実した旅行でした。(ご一緒してくださった皆様、本当にありがとうございました!)次回は2024年の年末に行ったアメリカ・メキシコ旅行記の予定です。お楽しみに!

  1. 以下、長いので「アメリカ」と略します
  2. って書くと某大統領みたいですね…
  3. 今思えば適当に空いているところに入るのはNGで、空いていても手前でいったん止まって誘導してもらうシステムだったんでしょうね
  4. いやまたゆっくり市街地は市街地で観光しに行こうと思って…
公開日:2025/02/16 最終更新日:2025/02/18