2023年10月のベトナム旅行記、ハノイ編に続いてベトナム統一鉄道に乗って向かったフエ編です。フエは宿泊はせず日中のみの滞在ですが、結構色々回ることができました。

寝台列車でフエへ

ハノイ編の最後で乗り込んだ寝台列車の個室へとやってきました。ベトナム統一鉄道の2等寝台はGW8月に乗ったタイ国鉄の開放式・プルマン寝台(列車の長手方向に沿って寝る、椅子が転換して下段のベッドになるタイプ)とは違い、列車の短辺方向に沿って寝る4人用の個室になっています。2018年に乗ったシベリア鉄道もこのタイプでした。こちらの方がはるかにシンプルではありますが…

ちなみに車内にはトイレ、洗面台、カップ麺やお茶のための電気給湯器が完備されています。この辺もどちらかというとシベリア鉄道に似ている気がします。

乗り込む前に駅の売店でベトナムの定番レモンティー、C2を買いました。香港のレモンティーのように渋く出したお茶に砂糖がドバっと入っているタイプの味がするのですが、ベースが紅茶でなく緑茶なのがベトナムのレモンティーの独特なところです。

列車に乗ってしばらくするとワゴン販売のバインミー売りが回ってきました。普通のバインミーは太めのフランスパンに具材が挟まっていますが、車内販売用なのか細長いフランスパンに具材(ツナマヨっぽいパテでした)が挟んでありました。車内販売とはいえフランスパンが外はパリっと中はモチっとしていておいしいのはさすがベトナムです。

日付が変わって、朝の6時前に列車はハノイから522kmのドンホイ駅に到着しました。ひとつ前のドンレー駅は4時前の到着だったので、目が覚めてから最初の駅がこちらの駅でした。この駅では10分以上の停車時間があったので、ホームに降りてみることにしました。

さすがにまだまだ朝早いので暗いのですが、しっかり売店は開いているのでした。このずらっと商品が積みあがっている売店には独特の迫力があります。ちなみに2枚目の写真右側の看板に”XOI/COM/CHAO GA”という表記がありますが、XOIがおこわ、COMが普通のご飯、CHAOがお粥で、GAは鶏という意味です。駅弁的なごはんものも扱っているというわけです。

前日の晩ごはんが軽めでお腹が少し空いていたこともあり、鶏おこわを買ってしまおうか悩んだのですが、次の目的地であるフエには朝9時前には到着する予定だったので、フエに着いてから朝ごはんにしようとレッドブルだけ買って列車に戻ったのでした。

ドンホイ駅を出た後は徐々に空が明るくなってきました。線路脇に生い茂る植物と、その向こうののどかな風景をひたすら眺めつつ、レッドブルを飲んで過ごしたのでした。

ドンホイ駅を出てさらに2時間弱走ると、フエの一駅手前、ハノイから622kmのドンハー駅に到着しました。ここは停車時間3分なので下車しませんでしたが、いよいよフエが近づいてきたな…と思いました。

フエに到着

そして午前9時ごろ、定刻から数分遅れでフエ駅に到着しました。フエ駅に到着する直前に車内放送から爆音で音楽とアナウンスが流れて何事かと思ったのですが、どうやら観光地など、日中に大きい駅に到着する場合はその駅をテーマにした歌とアナウンスを到着案内を兼ねて流すシステムのようです。最初は何事かと思いましたが、この旅の最後の方になると慣れきってしまったのでした。

この写真にも写っていますが、駅前にはタクシーの客引きが多数いるのでした。ハノイやホーチミンではあまり見かけなくなったなと思っていたのですが、フエなど地方の観光都市にはまだまだいるんですね。このタクシーの客引きをかわして、少し離れたところでGrabタクシーを呼んで、あらかじめ予約していたホテルへと移動しました。この日の夜には再び寝台列車に乗る旅程ではあるのですが、シャワーも浴びたいということで安いホテルを予約して、交渉してデイユースで使わせてもらうことにしていたのでした。

一度ホテルに顔を出してバックパックを預かってもらった後はいよいよ朝ごはんです。ホテルから街の中心部に向けて歩いていると発見したこちらのお店に入ることにしました。”BUN BO HUE”(ブンボーフエ)というのはフエ風牛ビーフン、という意味で、名前の通りフエの名物です。この記事を書くにあたって調べていて知ったのですが、写真左上のロゴは市が認定したレストランしか付けられないロゴだそうです。

半屋外のテラス席に座ってブンボーフエをいただきました。ブンボーフエは太めのビーフンに薄切りの牛肉、牛肉のミートボール、豚の血を固めて作ったブラッドプリンなどを具材に入れたピリ辛の麺料理です。中部の名物なので、2022年に同じく中部のダナンに行った時にも食べています。

ヴィンコムプラザを覗く

腹ごしらえを済ませた後は涼みがてら毎度おなじみのヴィングループのショッピングモール、ヴィンコムプラザにやってきました。

ヴィングループのショッピングモールはハノイやベトナムで何度も行っていますが、フエのこちらも同じような雰囲気でした。ベトナム全土にこの品質をキープしたまま展開できるのはなかなかすごいことのような気がします。

ちなみにレストランフロアにはフィリピンのフライドチキンチェーンであるジョリビーもありました。日本にはないですが、結構色々な国にあって驚かされるのでした。

王宮を見学する

ヴィンコムプラザの中をぐるっと回った後はいよいよフエの最大の観光スポット、王宮へ向かいました。フエは1802年にグエン朝初代皇帝の嘉隆帝がハノイから遷都して以降、1945年に王政が廃止されるまでの間ベトナムの首都でした。ちなみにフエに遷都する前の王城がハノイ編で訪問したタンロン城跡になります。140年以上の間首都であったこともあり、フエの歴史的建造物群は世界文化遺産に登録されています。

建物の照明も中身こそ電灯に置き換わっていますが、龍の装飾が見事な照明でした。西洋風のシャンデリアもいいですが、こういう中華風の照明もおしゃれですよね。

王宮は中華風の様式になっていて、当時のベトナムが中国文化の影響を色濃く受けていることがよくわかります。お濠などは日本のお城にも通じるところがありますね。

ちなみにこちらの門楼では特別展示が行われていました。この展示が個人的には結構興味深かったのでした。

そこに展示してあったのがこちらの金印(のレプリカ)です。グエン朝の歴代国王が公文書に押印していた金印だそうです。日本の漢委奴国王印ではありませんが、やはり中国文化の影響を色濃く受けているエリアでは金印によりある種の正統性をアピールするという文化があるものなのだなあと感心したのでした。

ちなみに金印のほかにも王の座る椅子も展示されていました。赤を基調に金色の装飾がされていてなかなかゴージャスです。座るところだけでなく、足を着けるところも台になっているというのがすごいですね。国王は足を床には着けないんですね…

基本的にはやはり中国文化の影響を受けているので2018年に訪問した北京の紫禁城に似ているのですが、壁が黄色かったりするあたりはベトナムらしさを感じます。

さらに門の先へと進んでいくとおそらく案内用であろうロボットがアオザイを着て佇んでいたりしました。電源が入っておらず、佇んでいるだけでしたが…

こちらの「太平楼」と書いてある建物は第12代皇帝のカイディン帝が書斎として使っていた建物です。カイディン帝の墓廟であるカイディン帝廟へはこの後向かいましたが、太平楼のカラフルな装飾はカイディン帝廟の装飾にも通ずるところがあります。

こちらは王宮の門の一つ、長安門です。王宮のお濠の中は一辺600mほどあるので、ここにたどり着くまでにかなり歩くことになりました。

その後もしばらく王宮の中を歩き、古のグエン朝の雰囲気を味わいました。王宮にかかる橋もなんともいえない味があります。

フエの名物を味わう

さて、王宮を観光し終わるとすでにお昼を過ぎていました。そこでせっかくフエに来たならばと、一人でもフエの名物料理を一通り味わうことができるセットを提供している”Quan Hanh”(クアンハイン)というレストランにやってきました。写真がフエ名物のセットです。揚げ春巻き、生春巻き、フエ風のベトナム式お好み焼きバインコアイ、レモングラスに豚ひき肉を巻いて焼いたネムルイ、小皿で作ったライスペーパーに具を載せて食べるバインベオのセットです。揚げ春巻きや生春巻きはもちろん食べたことがありましたが、その他の料理は今回が初めてのトライでした。どれもおいしかったです。

ちなみにお昼ですがビールもいただいてしまいました。ビールもフエ名物のフーダビールをチョイスです。デンマークから製造技術を導入したフエのビール、ということでフエ(”Hue”)とデンマークのベトナム語綴りの”Dan mach”から取ってhudaという名前になっているそうです。

お昼ご飯を食べ終わる頃にはだいぶ外も暑くなっていたので、ハシゴしてカフェに入りました。ここはCong Cafeというチェーンのカフェなのですが、このチェーンは1970年代から80年代の、改革開放政策前の社会主義・共産主義の雰囲気が色濃いベトナムをフィーチャーした店舗で有名です。たしかにちょっとレトロな感じです。

そして飲むのはもちろんベトナムコーヒーです。暑い中飲む甘いコーヒーはおいしいですね。

カフェに入った後はそろそろホテルの部屋の準備ができているであろう時間になっていたので、一旦ホテルに戻って休憩しました。ホテルのそばには首輪をつけたワンちゃんが2匹、仲良く佇んでいました。

フエの市街地のうち、王宮のある旧市街と新市街を隔てるようにフォン川という川が流れています。フォン川は漢字で書くと香江、英語だと”Perfume River”と書くそうです。フォン側が支流と分岐するところにはこのように左右の柵が大変シンプルな橋が架かっていました。なかなかデンジャラスな気がしますが、落ちたりする人はいないのでしょうか…?

また、川辺には渡し船なのか観光用の船なのか、ドラゴンを象った船がいくつも留められていました。日本ではここまでハデハデなペイントの船は見ませんよね。

カイディン帝廟

ホテルで休憩したりスコールをやりすごしたりした後、次の観光スポットであるカイディン帝廟へとやってきました。先ほども書きましたがカイディン帝廟はグエン朝第12代皇帝のカイディン帝の墓廟です。カイディン帝廟はフエの市街地から車で少し行った山の中に建っています。

カイディン帝の時代にはすでにグエン朝のベトナムはフランスの保護国になっていて、カイディン帝もフランスによって擁立された皇帝だったそうです。そんなこともあってか、カイディン帝はフランス風の建物を好んだそうです。

本殿への階段の横の石像にはきちんと目玉が入っています。なんとこの目はワインの瓶だそうです。なかなか奇抜ではありますが、きれいな目玉です。

日本の古墳の埴輪や中国の兵馬俑のようなものなのでしょうか、王宮の役人を象ったような石像もたくさん並んでいました。

そしてこちらが本殿です。伝統的な中華風の雰囲気もありますが、入り口のドアの周りの装飾は洋風と、いろいろな要素がミックスされた建物になっています。

中はこのようになっています。フエ王宮の太平楼と同じく、ガラスなどを使ったモザイクで装飾されています。ちなみにこのモザイク装飾に使われているガラスは石像の目玉と同じく、ワインの瓶などを各国から集めたものです。一部には昔の日本のビール瓶なども埋め込まれているそうです。

カイディン帝廟を見学した後は水分補給です。こういうご当地のよくわからない(失礼!)ブランドのスポーツドリンクって、つい気になって飲んでしまうのでした。

トゥドゥック帝廟

カイディン帝廟の次に向かったのはこちら、グエン朝の第4代皇帝であるトゥドゥック帝の墓廟、トゥドゥック帝廟です。こちらはカイディン帝廟よりはフエの市街地に近い場所にありますが、同じく山の中にある墓廟です。敷地の中には写真の通り大きな湖があり、墓廟というよりは静かな庭園という趣です。実際に、この帝廟はトゥドゥック帝が存命のうちに完成し、離宮として使われていたこともあったそうです。

ちょうどこの日はほどよく晴れていて、湖の水面に空が映っていました。フエの王宮やカイディン帝廟もなかなか良かったですが、個人的にはこの穏やかな雰囲気のトゥドゥック帝廟が一番気に入りました。

ちなみに湖の真ん中には島がありました。島には階段があるのですが、特に周りから道がつながっているわけではないので、まるでRPGでゲームの後半にならないと行けない謎の島、というような雰囲気でした。

もちろん遺体を安置するための墓所もあるのですが、墓が荒らされることを恐れ、皇帝の遺体はここには埋葬されなかったそうです。

上の写真のように、墓所の近くにはトゥドゥック帝の碑文を収めるための建物もありました。敷地が広いだけあってどの建物もゆったりとした雰囲気の中に建てられている印象です。

大変どうでもいいのですが、トゥドゥック帝廟の庭園にはニワトリがいました。それも写真の通り2羽です。こ、これはまさに「庭には二羽鶏がいる」ではないか…!と一人でちょっとはしゃいでいたのでした。

出発前の晩ごはん

トゥドゥック帝廟から一度ホテルに戻り、荷物を回収して街の中心部に戻りました。フエから乗る寝台列車は午後9時前の出発なので、それまでの間に晩ごはんを食べておこうという作戦です。

朝のブンボーフエに昼の名物全部入りセットと、そこそこフエらしいものはすでに食べていたため、晩ごはんはシンプルにチャーハンとおつまみのフライドポテトにしました。

そしてビールはまたしてもフーダビールです。ベトナムは主要都市ごとに人気のビールブランドが違うところが面白いですね。そんなわけで、しばらくフーダビールを味わってから、再び寝台列車に乗るべくフエ駅へと戻っていったのでした。

以上、2023年10月のベトナム旅行記、フエ編でした。次回は寝台列車移動と少しだけ滞在したホーチミンシティの話を書く予定です。お楽しみに!

公開日:2024/12/30