2018年秋のシベリア鉄道の旅、前回の鉄道移動編・Part3で無事モスクワに到着したので今回は列車を降りた後のモスクワ市街地をブラブラした記録を書いていきます。赤の広場周辺の観光は独立した記事にする予定です。

ロシア外務省にビビる

ロシア号で到着したモスクワ・ヤロスラフスキー駅からYandex.Taxiに乗り、荒めの運転ながら無事にモスクワでの宿泊地であるスモレンスカヤ駅そばのゴールデンリングホテルに到着しました。今回はホテル検索サイトで探しても意外と安いホテルが少なく(ドミトリーはちらほらあるがそこまで安くない)、ロシア国内基準とはいえ五つ星クラスとされるこちらのホテルでもそこまで高くなかったのでせっかくならばとここに泊まることにしました。部屋も十分綺麗で駅も近く大変便利でした。余談ですが、このホテルはロシア大統領府の経営らしいです。

さて、このゴールデンリングホテルのすぐそばにはロシア外務省も建っています。ロシア外務省は鉄道移動編・Part3の最後でも触れたように、ソ連時代のスターリン様式の代表的な建物の一つであり、「セブンシスターズ」の一角を占めています。この建物は1953年の完成で、ソ連時代から外務省のビルとして使用されています。建設当時にどれだけ他国の外交官がここを訪れる機会があったかは分かりませんが、はるばる異国の地にやってきて何かの交渉をしようという矢先にいきなりこの建物を見せられたらば大体の人は怯んでしまうと思います。スターリン様式の建築は社会主義のプロパガンダという色合いも強いので、ある意味役割を果たしているということなんだとは思いますが…

夜になるとライトアップも行われ、さらに堂々とした雰囲気になります。窓を見てみると照明がついているフロアがちらほらあり、中央省庁の方々が忙しいのはどこの国も同じなのか…と感じました。

ロシア滞在中最高額のごはん

実はシベリア鉄道の車中で見事に風邪をもらってしまい、朝ごはんを遠くまで探しに行くのはちょっとしんどいな…と思ったので滞在3日目と最終日はホテルの朝食ビュッフェに行ってしまいました。さすがに5つ星ホテルなだけはあり、一食3000円くらいだったかと思います。シベリア鉄道乗車中のご飯が基本的に安かったこともあり、ロシア滞在中の最高額のご飯はこの朝食ビュッフェとなりました。しかしハープの生演奏を聞きながらの朝食はなかなか貴重な経験でした。

雑な盛り付けの写真で申し訳ないでのすが、ここでも塩漬けニシンを食べました。主食・主菜もさることながら、スイーツが大変美味しかったのが記憶に残っています。シベリア鉄道乗車時のジャムパンも美味しかったということもあり、帰国前にはスーパーでベリー系のジャムをお土産に買いました。

ボリショイ劇場へ行く

さて、モスクワに到着日の夕方にはボリショイ劇場でバレエを見る予定を入れていました。スモレンスカヤ駅からモスクワ地下鉄3号線に乗り、ボリショイ劇場のそばのプローシャチ・レボリューツィ駅で降りてボリショイ劇場へと向かいました。地下鉄駅を出てアーケードではないですが、電飾のネットが張られている通りを進んでいくとボリショイ劇場に到着です。

この通りも小洒落た建物が多く、いい雰囲気でした。

通りを数分歩き、赤の広場の手前まで来るとボリショイ劇場に到着です。こちらがボリショイ劇場の本館です。「ボリショイ:Большой」とはロシア語で「大きい」という意味なので要するに「ボリショイ劇場」は「大劇場」、という意味です。確かに大きいです。

しかし今回私が観劇するバレエは向かいに建つこちらのボリショイ劇場・新館での上演でした。本館に比べると見た目はおとなしめで、この時点では中もシンプルなのかな…と思っていました。

今回観劇したのは「カルメン」です。「カルメン」上演の前には現代バレエの演目もありました。内容は…うーん、バレエをきちんと見るのは初めてだったのとシベリア鉄道乗車の疲れであまり印象に残っていなかったり…(苦笑)ただ、音楽は旧ソ連の作曲家、シチェドリンによる編曲のカルメン組曲ということもあって聞いたことがあるカルメン組曲とも違い、新鮮味がありました。

さて、そんなわけでボリショイ劇場・新館に入場したのですが、ロビーの時点で想像を裏切る豪華さにたじろいでしまいました。息を呑むような豪華絢爛なシャンデリアの数々、高い天井…奮発してチケットを買っただけのことはあったなあと、まだホールに入っていないにも関わらず思ったのでした。

ホール内部はこのようになっています。新館で収容人数が本館より劣るとはいえ、十分大きいホールであり、2階・3階席が外縁部をグルッと囲むように存在している、ある種ステレオタイプなヨーロッパの劇場という雰囲気でした。

上演が終わって外に出ると辺りはかなり暗くなっていました。夜10時を過ぎていたこともあり、ボリショイ劇場から赤の広場の方向へ歩いていき、急いで晩御飯を探しました。しかし、時間が時間なので閉まっているお店も多かったのでした。写真は道中見かけた赤の広場の端のロシア国立歴史博物館です。

ロシアでビッグマック

そんなわけで、この時間でも開いていてかつ無難そうなマクドナルドに行ったのでした。各自のマックの食べ比べという意味でもちょっとおもしろいかと思い、マックに決めてしまいました。今回はビッグマックのバリューセットを注文しました。パッケージは日本のものと大差なく、キリル文字で”Биг Мак(ビッグマック)”と書いてありました。

肝心の中身ですが、レタスの詰め込まれ方がかなり雑だった以外は特に可もなく不可もなく、普通のビッグマックでした。

飲み物は0.5L以上入る特大のコップで出てきました。飲み放題ではないですが、サイズ感はアメリカに近い感じでしょうか。バリューセットの価格は税込み209ルーブルだったので、当時のレートだとおよそ360円ということになります。

キエフスキー駅周辺へ行く

2日目の朝は初日の夜の晩ごはんを探している時に候補に挙がっていたものの、結局行けなかったモスクワのレストランチェーン「ムームー」へ行くことにしました。地図で調べるとホテルから少し歩いたキエフスキー駅周辺にあるということで、歩いて行ってみることにしました。ホテルから数分歩くと立派なモニュメントのある橋に差し掛かり、その橋を渡るとすぐにキエフスキー駅です。1枚目の写真、中央右よりに写っている尖塔が目立つ建物はラディソン・ロイヤル・ホテル・モスクワ、旧称「ホテル・ウクライナ」です。ロシア外務省やホテル・レニングラードの写真を見た後だとみなさんお気付きかもしれませんが、こちらの建物もそれらの建築と同じくスターリン様式の建築で、セブンシスターズの1つであります。

こちらがキエフスキー駅です。キエフスキー、というくらいなのでウクライナの首都・キエフ方面などへの列車の出発駅であります。ちなみに当駅はキエフスキー駅”Киевский вокзал(キエフスキー・ヴァグザール)”ですが、この駅舎と連結している地下鉄駅はキエフスカヤ駅”Киевская станция(キエフスカヤ・スタンツィヤ)”となります。待合室があるような大規模な駅は男性名詞”Вокзал”、地下鉄駅のようなターミナルでない駅は女性名詞”Станция”となるため、キエフの語尾が変化してキエフスキー、キエフスカヤとなるようです。

ムームーで朝ごはん

さて、このキエフスキー駅向かいの円形の建物の中にムームーが入っていました。お店の前にはマスコットの牛が置いてありました。「ムームー」とは牛の鳴き声を表しているそうです。レストラン「モーモー」ということですね。

この「ムームー」、レストランと書きましたが、雰囲気としては日本でいうところの学食や社食、中国でいうところの快餐店、ベトナムでいうところコンビンザンのような、主食と主菜は店員さんにお願いして盛り付けてもらい、副菜はすでに皿に盛られたものをカウンターから取っていくスタイルのお店です。ボルシチを狙っていたのですが、朝だったためか置いておらず、ビートのサラダ、チャーハン、ステーキ(朝から!)、ピロシキ1という組み合わせになりました。朝から重めですが、そこまで高くなかったと記憶しています。

ちなみにレジで牛マークのキャラメルをくれます。味は普通のキャラメルですが、包装がかわいらしいキャラメルでした。

ちなみにこの日の夜は赤の広場のそばのムームーに行きました。

そして夜も懲りずにステーキ、そしてニシンもバッチリありました。また右上の牛柄のかわいいポットはボルシチです。

この通り、サワークリームをドボンと入れていただきました。

ショッピングモールへ行く

さて、ムームーで腹ごしらえを済ませ、キエフスキー駅の横にあるショッピングモールを覗いてみようかと思い、通り沿いに戻ってきました。この辺は路面電車が現役のようで、写真のような味わいのある車両も走っていました。

この写真の背後、左側に写っているのがキエフスキー駅隣のショッピングモール、エヴロペイスキー・ショッピングセンターです。写真中央後ろにはモスクワの高層ビル群のあるモスクワ・シティが見えています。モスクワ・シティの右から3番目、飛行機の垂直尾翼のようなデザインのビルがフェデレーション・タワーであります。フェデレーション・タワーは完成しているビルの中ではヨーロッパで最も高い(374m)ビル(2020年8月時点)だそうです。現在サンクトペテルブルクに建設中のラフタ・センターが完成するとヨーロッパ1位の座を明け渡すことになるようです。

電飾ギラギラのエヴロペイスキー・ショッピングセンター

さて、エヴロペイスキー・ショッピングセンターに入ると、ご覧の通り中央の吹き抜けがびっくりするほどの電飾で彩られていました。LEDビルが立ち並ぶ中国・深圳のイルミネーションもすさまじいですが、こちらはもっとサイバーパンク感があり、映画「トロン」かチームラボの展示のような雰囲気です。ちなみに天井の光る球体は上下に動いていました。

吹き抜けの端のエスカレーターから下を撮ると本当にSFの世界のような雰囲気でした。常にこういうイルミネーションなのか、たまたま期間限定でやっていたのかは謎です…

到着初日から薄々感じていたのですが、風邪を引いていたことを差し引いても意外と10月頭のモスクワは寒いということで、ダウンジャケットを買おうとショッピングセンター内のユニクロにやってきました。しかし、日本で買うよりもかなり高くつきそうだったので、わざわざユニクロで買わなくてもいいかとこのときは購入しませんでした。結局PULL&BEARというZARAの姉妹ブランドのお店でダウンジャケットを買いました。日本だと真冬に着るようなダウンジャケットになってしまいましたが、暖かいし日本だとあまり見ないブランドのジャケットなので今でもちょっとお気に入りです。

地下鉄の駅を巡る

さて、今回のメインの観光は赤の広場だったので赤の広場周辺は別の記事にするつもりですが、その他に意識して回ったのが地下鉄の駅です。スターリン様式の建物と同様、モスクワの地下鉄駅の多くは社会主義のプロパガンダの意図を持った豪華な作りになっていて、21世紀の現在においてもわざわざ見学する価値がある文化遺産としての扱いを受けています。街「歩き」かは微妙なところですが、ここで私が行ったいくつかの駅を紹介したいと思います。

スモレンスカヤ駅

さて、まずはホテルの最寄りの地下鉄3号線のスモレンスカヤ駅を紹介したいと思います。1953年の開業だそうです。なお、上の写真もスモレンスカヤ駅のものです。

駅入り口がすでにまったく地下鉄の入口とは思えないお洒落で堂々とした作りになっています。最初に地下鉄に乗るときは入口と気が付かずに少しキョロキョロしてしまいました。この入口から入っていくとこの章の冒頭のロビーのような部屋にたどり着きます。

きっぷを買い、改札を通ってエスカレーターでプラットホームへ向かうところのホールには写真のようないくつかの年を記念するタイルが埋め込まれていました。1945年は言うまでもなく終戦、1917年はロシア革命、1947年はコミンフォルム設立でしょうか?

そしてスモレンスカヤ駅の圧巻なポイントはこのエスカレーターです。ミニマルなデザインの照明とシンプルな円形のトンネルが映画「2001年宇宙の旅」のような雰囲気でした。

ちなみにエスカレーターには5段ごとに段数(?)が書かれていました。メンテナンスの際に便利なのでしょうか?

エスカレーターを降りて上りと下りのホームを繋いでいる通路の端まで行くと、このような彫刻が飾ってありました。2月のパリ旅行で訪れたルーブル=リヴォリ駅もすごかったですが、こちらも負けず劣らず美術館のような雰囲気です。

端部だけがこのような雰囲気というわけではなく、通路全部がこのような造りになっていました。照明も上品なデザインですよね。

キエフスカヤ駅

お次は2日目の朝に行ったムームーのそばのキエフスカヤ駅です。こちらの駅は通路の柱の上にフレスコ画が並んでいて、ますます美術館といった趣きがあります。

また、この駅の通路の端部には壁一面をまるごと使った大きなフレスコ画が描いてありました。私が見に行った際もこの絵を見学するツアー客が居たくらいには人気のスポットとなっているようです。

別の箇所にはレーニンのモザイク画も掲げられていました。

キエフスカヤ駅の乗換通路からホームを見下ろす形の写真です。この通り、ホームも実用一点張りの照明ではなく、シャンデリアがぶら下がっています。

パルチザンスカヤ駅

こちらはモスクワ滞在最終日にヴェルニサージュとイズマイロヴォのクレムリンへ行った際に下車したパルチザンスカヤ駅です。パルチザンとは侵略等に抵抗する、ゲリラ組織のような非正規軍のことを指す単語です。

そんなわけでこの駅の出口にはいかにもパルチザン、という感じの、民衆が武器を持って立ち上がるというような雰囲気の像が飾られていました。駅名からしてストレート過ぎますね。

ホームのレリーフも草むらと銃、麦と剣というように、農民が立ち上がるようなモチーフのものになっていました。

メンデレーエフスカヤ駅

こちらはもはやタイトルだけで説明不要、という気がするメンデレーエフスカヤ駅です。言うまでもなくロシアが誇る偉大な科学者、元素周期表の発案で有名なドミトリ・メンデレーエフを記念した駅です。元素に関係する偉人、ということで、この駅の照明は結晶構造の模型のようなデザインになっています。

ノヴォスロボツカヤ駅

こちらはメンデレーエフスカヤ駅との乗換駅であるノヴォスロボツカヤ駅です。この駅は通路にステンドグラスが埋め込まれていて、柱の内部から照明が当てられているという駅です。こちらの駅もメンデレーエフスカヤ駅との乗換通路からホームを見下ろすような写真を撮ることができました。ステンドグラスやフレスコ画できれいに彩られた地下鉄駅を当たり前のように使う生粋のモスクワっ子がもし他の都市の地下鉄に乗ったら、あまりの駅の味気なさに驚いてしまうのではないかと心配になってしまいます。

以上、2018年秋のシベリア鉄道の旅、モスクワ・街歩き編でした。次はモスクワ・赤の広場編です。お楽しみに!

 

  1. はい、2個なので複数形ですね!
公開日:2020/08/24