さて、2018年秋のシベリア鉄道の旅、北京編の次はウラジオストク編です。全体旅程はDay0編をご覧ください。
霧のウラジオストク国際空港
北京編の最後で搭乗したウラジオストクへの飛行機(ちなみにS7航空便でした)はほぼ定刻通りにウラジオストク国際空港に到着しました。現地時間17時半と、朝だったこともあってか飛行場は霧に包まれていました。
ウラジオストク国際空港は明るい空港ですが、比較的こぢんまりした空港でした。地方空港ですからね。
ウラジオストク国際空港からはアエロエクスプレスで市街地へ向かいます。チケットがQRコードが印刷されたレシートだったのが面白かったです。
車内はこんなこんな感じの1列6人掛けになっていましたが、ロシアの鉄道は標準軌よりも広い軌間である2こともありそもそも車体が大きいのか、極端に窮屈とは感じませんでした。
海の街・ウラジオストク
アエロエクスプレスでウラジオストク駅に到着した後、まずはホテルに荷物を預けに行きました。眠くてアーリーチェックインの可能性も探ったのですが、残念ながら空きはなく、仕方なく荷物だけ預けて街を散策することにしました。
さて、ウラジオストクは沿海州の州都、というぐらいなので日本海に面した海の街です。ロシアの中ではかなり南にある立地もあり、不凍港としてソ連時代は軍港のある閉鎖都市となっていました。というわけで、初日の午前中を中心に散策した海の街としてのウラジオストクをまず最初に紹介したいと思います。
上の写真はウラジオストク港旅客ターミナルの展望デッキから撮った写真です。ウラジオストク港旅客ターミナルはウラジオストク駅の裏手にあります。
2日目にシベリア鉄道に乗る前の暇つぶしで再度展望デッキに行ったところ、DBSクルーズフェリーが停泊していました。おそらくこのフェリーは鳥取県境港市、韓国東海市、ウラジオストクを結ぶ国際便だと思います。同じくはるばる日本からやってきたフェリーに遭遇し、感慨深かったのをよく覚えています。3
展望デッキから海を眺めていてふとクレーンに目をやると、ホースリールに何故か日本の高齢者マークが貼り付けてありました。ウラジオストクでは日本からの輸入中古車らしきプリウスなどが多数走っていたので、それらの車両に付いていたものをなんとなく貼ったのか、それとも高齢者がクレーンを操縦するということなのか…?
同じくこちらはウラジオストク港旅客ターミナルのビルの中にいた巨大マトリョーシカ人形です。ウラジオストクに来た観光客はほぼ全員このマトリョーシカの写真を撮っているのではないでしょうか。
こちらはスポーツ湾へ続く噴水通りという観光スポットです。ご覧のように、海へ続くそこそこ急な坂となっています。ここに限らずウラジオストクは本当に坂が多かったです。噴水の両脇を固める洋風の建物も見ものです。
噴水通りを降りていったところのスポーツ湾には”I love vladivostok”という意味の看板がありました。英語で言うところの”I”はロシア語では”Я”なんですね。
洋風な街並み
ここまでに何度か言及していますが、アジア極東地域に位置するとはいえ、ウラジオストクはロシアの一部ということで、かなり洋風な街並みが広がっています。各航空会社が競って2020年前半に東京-ウラジオストク線に就航していることもあり、最近では「2時間半で行けるヨーロッパ」という謳い文句も良く耳にしますが、確かにこれは洋風でヨーロピアンな街並みと言えそうです。ちなみにこの写真の右下に見切れているように、何箇所かの交差点は横断歩道が無く、歩行者向けの地下道(お店も入ってたので地下街?)が用意されていました。
こちらも洋風な街並みです。走っている車はプリウスを始め、少し古い型の日本車が多かったです。港から入ってくるんでしょうね。しかし本当にこの写真の通り坂の多い街です。
こちらは郵便局の建物のようでした。ニコライ2世凱旋門の近くです。
洋風な街並み…とは関係ないですが、こんな謎の日本語(なのか?)の書いてあるトラックが走っていました。日本語っぽい文字を並べておくことで、日本ブランド感を出して再販価格を上げる作戦なのでしょうね。海外だと時折見かけます。
教会を訪ねる
さて、ウラジオストクはロシアということもありキリスト教圏であります。しかしEU旅行で見た教会群と違い、独特の玉ねぎ型とも呼ばれるドーム状の屋根をもった建物が多く見られます。今回ウラジオストクでは残念ながら内部を見学することはできませんでしたが、外観を紹介していきたいと思います。
ポクロフスキー公園内の教会
こちらはウラジオストク駅周辺から徒歩で30分弱の場所にあるポクロフスキー公園の中にあるポクロフスキー教会です。現在の建物は2000年代に入り復元されたもののようです。ここは後述の電子部品店”Electro Market”へ行く際に通りかかったため立ち寄りました。青色と金色のドームがとてもきれいな教会でした。
こちらは同じくポクロフスキー公園の中にあるクロンシュタットの聖イオアン教会です。レンガ造りのこぢんまりした教会でした。
スパソ=プレオブラジェンスキー大聖堂
こちらは海(金角湾4)に近い広場に建設中だった大聖堂です。2020年現在もまだ建設中なのでしょうか…?
アンドレイ教会
スパソ=プレオブラジェンスキー大聖堂からすこし東に行くとこちらのアンドレイ教会があります。本当にシンプルな教会です。すぐそばに次に紹介するニコライ2世凱旋門があります。
歴史スポットを訪ねる
ウラジオストクの観光スポットとしては沿海州水族館やマリインスキー劇場など、じっくりと鑑賞するタイプのものもあるのですが、今回は1.5日程度と短期間の滞在だった上、2日連続の機内泊でくたびれてしまい初日はガッツリ昼寝してしまったので、歩いてサッと回れるような歴史に関連するスポットを中心に回りました。
こちらはアンドレイ教会のすぐそばにあるニコライ2世凱旋門です。1891年にロシア帝国最後の皇帝、ニコライ2世がウラジオストクを訪問したことを記念して設置された凱旋門です。現在建っているものは2003年に復元されたものだそうです。いかにもロシアという感じの独特の色彩がかわいらしいです。
こちらもアンドレイ教会周辺のC-56潜水艦です。こちらは実は内部が博物館になっています。時間があれば再訪して中に入ってみたいところですが、狭そうだな…と思ってしまいます。
こちらはスパソ=プレオブラジェンスキー大聖堂の前の広場の銅像です。ここに限らず、ウラジオストクやシベリア鉄道の途中駅では銅像を多く見ました。ロシアの方が銅像好きなのか、ソ連時代にプロパガンダの手段として銅像が多く建てられたのかは分かりませんが、私にとってはついつい眺めて写真を撮ってしまう対象です。
こちらも銅像、ウラジオストク駅の向かいの坂の上に建っているレーニンの銅像です。土台の部分に”ЛЕНИН(LENIN)”と書いてありますね。
鷲の巣展望台へ行く
さて、ウラジオストク市街地から短時間で行って見学できるスポットをここまでにいくつか紹介してきましたが、ウラジオストクの屋外の観光スポットとして外せない鷲の巣展望台にももちろん行きました。鷲の巣展望台は海にほど近い丘の上の展望台で、ウラジオストクの海岸部を一望できる展望台です。私が訪問したのは9月末と秋頃だったこともあり、上の写真の通りコスモスが咲いていました。
鷲の巣展望台へは徒歩で行きました。ご覧の通り、海沿いからいきなりぐぐっと急な坂になっているため、頂上からは海岸部が一望できるわけです。写真右側に見える、斜めに窓が連なっている建物は展望台行きのケーブルカーの駅ですが、写っている方が頂上側の駅です。
頂上には上の写真のようなモニュメントが建っています。このときは韓国の方がツアーで訪れていたようで、ガイドさんが何か説明をしていました。ロシアと韓国の間ではビザ免除協定が締結されていることもあって、鷲の巣展望台に限らず、ウラジオストク滞在時は韓国からの観光客の方を何組か見かけました。JAL/ANAによる東京-ウラジオストク路線が就航したので、アジア系の観光客の構成も今後変わっていくかもしれませんね。
そしてこのモニュメントにも南京錠がかけられていました。初見であれば一体なんだろうか…と思ってしまうところですが、ケルンのホーエンツォレルン橋で見ていたこともあり、ここもそういうスポットなのね、と理解できました。
こちらは頂上から金角湾を望んだ写真です。ご覧の通り大変見晴らしの良い光景が広がっています。このときは雲が出ていましたが、それがいいアクセントになっている写真が撮れたかと思います。ただの高台の展望台ではありますが、行って風景を眺める価値は十分にあると思います。
電子部品店を訪ねる
さて、私の旅行の定番といえば北京でもやったように電気街の訪問であります。ウラジオストクは小さい都市であることもあり電気「街」はありませんでしたが、電子部品店があることは地図からの事前調査で分かっていました。東西冷戦下での覇権国家・科学技術大国であったロシアの電子部品店がどのような雰囲気なのか、実際に行って確かめてみることにしました。
Omega(Омега)
まず1軒目はOmega(Омега)です。ウラジオストク駅から北へ真っ直ぐと10分ほど歩いていったところにあります。お店自体は路地に面していないのですが、”Омега”と書かれた看板が通り沿いに出ているので発見は比較的容易だと思います。ご覧の通り、少し古めの2階建ての建物が店舗になっています。
2フロアとも店舗になっていて、電線のような電材から電子工作キット、リチウムイオンポリマー電池やジャンクPCなど、幅広く取り揃えている印象でした。ICなどの細かい部品に関しては店員さんにお願いして取り出してもらうスタイルになっていました。余談ですが店内に見事な靴下柄の看板猫がいました。かわいい!
Electro Market(Электро Маркет)
ウラジオストクではOmegaの他にもう1軒、”Electro Market(Электро Маркет)”に訪問しました。こちらはウラジオストク駅周辺から歩くこと約50分のところにあります。異国の地で歩いていろいろなものを発見するのが好きなので徒歩で行きましたが、普通はタクシーで行くところでしょうね。4ご覧の通り、こちらのお店は団地の1階の一角が店舗になっていて、看板も控えめなので若干探すのに苦労しました。しかしなぜこんなところにお店が出ているのか、不思議です。そういう業種の人が集う団地だったのでしょうか?
こちらも一通りのパーツや電材は取り揃えていそうでしたが、Omegaの方が広いこともあって品揃えは多そうです。電源の品揃えが充実していたのが印象的でした。
さて、はるばるElectro Marketまで歩いていく道中にはいろいろな風景を見ることができました。駅前と違い、完全に住宅地のエリアに入っていくような形になるため、写真のようなフルーツ売りの屋台を見かけました。シベリアというと不毛の地というイメージを勝手に持っていましたが、寒冷地でも育つフルーツが豊富なようでした。この後のモスクワ滞在でもジャムがやたらと美味しかったので、フルーツに対するこだわりが強い国民性なのかもしれません。
富山ウラジオストク友好庭園という日本庭園も見かけました。2001年に作られた純日本式の庭園です。偶然見かけたため驚いてしまいました。富山は日本海側ということもあり交流があるということなんでしょうね。
こちらも道中見かけたモニュメントの写真です。いかにも旧ソ連!という感じが背景の入道雲に映える写真を撮ることができました。モニュメントの上には”СССР”(ソビエト社会主義共和国連邦の略)、下には”победа”(「勝利」の意)と書いてあります。こういう味わい深いデザインのモニュメントがしれっと住宅街に残っているのはとても面白いと感じました。ソ連時代はウラジオストクは閉鎖都市であったことから、このようなモニュメントが残りやすい素地があったのかもしれませんね。
雨に降られる
さて、初日にスポーツ湾周辺を散策して午前中を過ごし、チェックイン時刻になってホテルにチェックインしたところ、先にも書いたように2日連続の機内泊の疲れがどっと襲いかかり昼寝をしてしまいました。昼寝から起きてみると写真の通りの大雨が降っていました。坂の多いウラジオストクは街中が滝のような状態になっていました。
雨が降っているとはいえシベリア鉄道に乗る前に食べ物などを買う必要もあるため、スーパーなどの下調べに出発すべく、ホテルのそばのコンビニ(雑貨店?)で傘を買い、街に出ていきました。雨のウラジオストク駅も味わい深い雰囲気です。
ウラジオストクで食べたもの
ウラジオストクは1泊で、シベリア鉄道乗車の下準備としてチーズやハムを買って晩御飯を済ませてしまったのであいにく晩御飯の写真はないのですが、それ以外に色々食べたものを取り上げたいと思います。
上の写真は2日目のお昼ごはんとして食べたステーキです。お店はニコライ2世凱旋門のそばの”Old fashioned bar“です。ビートを使った独特の味付けですが美味しかったです。ビートを使った味付けはこの後もロシア滞在中に味わい続けることになりました。個人的には結構好きですが、人を選ぶかもしれませんね。
こちらはウラジオストク港旅客ターミナルのアイス店で買ったアイスです。シベリア鉄道乗車までの間に中途半端に時間が開いてしまい、あまりに暇だったためにアイスを食べたのでした。味はなかなか美味しかった記憶があります。
こちらはニシンの塩水漬けです。エストニア訪問時に食べて大変気に入った一品なのですが、ものがものなので買って帰ることもできず悔しい思いをしたのでした。ウラジオストクのスーパーで思いがけず再会し、一人で全部食べてしまいました。エストニアを含め、北方ではメジャーな食べ物なんでしょうね。シベリア鉄道車内でのご飯のお供にできればよかったのですが、液体物なので持ち込みは断念しました。
ホテルの朝食にもニシンの塩水漬けがあったので思わず食べてしまいました。生臭くないし塩味がパンにも合うのです。ピザが朝ごはんに入っているのはホテル併設のピザ屋が朝食の会場だからですね。
こちらはベーカリーで買ったケーキです。チョコブラウニー的なものを想像して買った(ロシア語が分からないので見た目だけで買った)のですが、ベリー系の味だったと思います。
これは空港からウラジオストク駅に到着してすぐ、駅のそばの売店で買ったケバブラップです。このときはまだビビっていて、少し安心して食べられそうなものをチョイスしてしまいました。
こちらはピャンセと呼ばれる肉まんのような食べ物です。ピャンセは朝鮮由来の料理とのことで、肉まんのような見た目であることも納得できます。1つ目の写真にあるように、ウラジオストク駅周辺には簡単な屋台が出ていて、ピャンセやピロシキなどを売っていました。このときはピロシキは売り切れとのことでピャンセを買いました。中身はキャベツとひき肉で、胡椒が効いていて美味しかったです。
駅を探索する
ウラジオストク編の最後はシベリア鉄道東方の起点・ウラジオストク駅でしめくくりたいと思います。日本の鉄道と違い、きっぷを持っていなくても荷物検査さえ受ければ駅構内やホームに入ることは可能なので、初日・2日目と駅構内を探索しました。ちなみに写真の駅舎は1912年に建てられた歴史ある駅舎です。
正面入口を入ると待合室があります。待合室の天井にはこのような天井画が描かれています。東方の陸上および海上交易の拠点の象徴としてでしょうか、大きく帆船が描かれています。
待合室にはお金を入れると風が起きて中のお札が舞い上がり、上から手を入れてそれをキャッチするというゲーム機が置いてありました。当然挑戦したのですが思いの外手の可動範囲が狭く1枚も取れず…
駅舎にはフランスのマルセイユ・サン・シャルル駅との姉妹駅協定の看板が飾ってありました。港町つながりなのでしょうか?この年の2月にパリに行っていたのでSNCFのロゴが目に入り、気がついたのでした。しかし、ロシア語で(待合室があるような大きな)駅は”вокзал(vokzal)”で男性名詞、一方フランス語で駅は”Gare”で女性名詞なので、果たして兄弟駅なのか、姉妹駅なのか、難しいところですね。
プラットホームにはSLが飾ってありました。手前の柵がちょっと急ごしらえ感があり残念…
こちらは有名な「モスクワから9288km」のモニュメントです。上部の双頭の鷲はロシア帝国および現在のロシア連邦の国章ですね。ちなみに、シベリア鉄道敷設時のモスクワまでのルートではこのモニュメントの通り総距離が9288kmとなるようですが、私が乗った現在のモスクワ行き寝台列車であるロシア号は途中のルートの変更により総距離は9259kmに短縮されているとのことでした。
シベリア鉄道の運行は原則としてモスクワ時間(UTC+3)で行われると聞いていたのですが、駅舎の時計はウラジオストク時間(UTC+10)に合わせられていました。
駅舎端のホームから写真を撮ってみました。長距離列車は編成が非常に長いです。
こんな風に写真を撮りつつ、間違った窓口にきっぷの引き換えに行き冷たく(単に事務的なだけなんでしょうけど…)あしらわれたり、駅の荷物預けコーナーに荷物を回収しに行ったりしているうちに私の乗るロシア号が駅に到着し、シベリア鉄道での長い旅はスタートを迎えたのでした。
以上、2018年秋のシベリア鉄道の旅・ウラジオストク編でした。短時間の滞在だったことや、現在は日本との航空便が増え行きやすくなったこともあり、再度行きたい街の一つです。次はいよいよシベリア鉄道編になります!お楽しみに!
- ウラジオストクはUTC+10と、日本より1時間進んでいます。
- 日本のJR在来線の軌間(レールとレールの間隔)は1067mm、新幹線が使う標準軌が1435mm、ロシアは1520mm。
- 残念ながら日韓関係悪化やCOVID-19の影響により、DBSフェリーは2020年5月に廃業してしまったようです。
- イスタンブールの金角湾に似ていることから命名されたそうです