ここのところ旅行記だらけの本Blogですが、去年のASEAN旅行記を書く前に最近参加した「NT血糖値観察会」の話を書いておきたいと思います。

NT血糖値観察会とは

「NT血糖値観察会」はフリースタイルリブレ(以下「リブレ」)という血糖値をモニタリングする1センサを使い自分自身の血糖値を2週間モニタリングして「#NT血糖値観察会」のタグを付けてTwitterで情報共有してみようという活動です。2週間取り付けたままのセンサは自動的に血糖値を計測し、15分間隔で内蔵のメモリに値を記録するようになっています。記録された値はNFC対応スマートフォンで読み取ることができます。

詳しくは主催(というよりは言い出しっぺ、が正しいかな…)のShaoさん記事高須さん記事をご覧ください。私は高須さんから誘っていただき参加しました。20代の知り合いで参加してくれそうな人、ということと、不摂生ぶりへの期待(!)があって誘っていただいたようです。自分としても日頃の不摂生には思うところがありましたし、ご飯を食べた後に眠くなることも時折あったのでこの際計測してみようと思い、参加することにしました。

センサを取り付ける

さて、肝心のモニタリングをする上での最初の関門がこちら、センサ取り付け時に見える長い針です。細胞の間を満たしている間質液のグルコース濃度を計測するという原理上、体内にセンサを埋め込む必要があるわけです。実際には写真で見えている針は取り付け器具の針であってセンサ本体ではなく、体内に残るのはより細いフレキシブル基板になります。今回の活動の参加者でない知人に紹介すると興味を持った人でもだいたいここで尻込みしていました。

最初に取り付けたセンサはどうやら初期不良だったようなので早々に剥がしてしまいました。中央に出ている細いひげのようなものが体内に残るセンサ電極になります。皮膚への固定は周囲の粘着テープによって行われます。

実際に上腕にセンサを取り付けるとこんな感じです。(ピンぼけですみません…)取り付け器具の針を見てしまうと痛いのではないかと思ってしまいますが、私はほとんど痛みを感じず、取り付け器具を外して腕を見てやっと「あ、刺さってる!」と思うような感じでした。人によってはかなり痛かったり出血した方もいた(明大・宮下先生など…)ようなので個人差があるようです。その後腕を動かしてみると、「あーなんか体の中に刺さってる感じはするな…」とは思いましたが、日常生活を送る上で特に困るようなことはありませんでした。

実際に付けて生活してみて

前に書いたとおり、最初に付けたセンサは初期不良のようだったので外してしまいました。新しいセンサを付けたところ、しばらくしてそれらしい値が出てくるようになりました。今回はGlimpという非公式アプリで血糖値をモニタしているため、リブレの公式リーダが内部で行っている補正処理が反映されていない値を見ていることになります。Glimpでも採血による血糖値測定結果をベースに補正をかけることはできるようですが、今回はそれを行っていないので、数値そのものを見るというよりはグラフの動き方を見る、というような使い方をしました。2

そんなわけで2週間、センサを付けて生活してみました。付ける前はいちいちスキャンするのは面倒だなあ、と思っていたのですが、実際に取り付けてみるとついつい気になってスマホを腕にかざしてしまっていたのでした。2週間を通しての全体的なメモを書くと以下のようなところでしょうか。

  • ご飯(白米)を食べるとわかりやすく値が上がる。後述の家系ラーメンを食べたときもご飯を大量に食べたのが効いたのだと思う。
  • ブドウ糖90%と書いてある森永のラムネを食べながら作業すると値が空腹時に比べて高いところで安定する。重量でいうとラムネ程度ではたいしたことがないからか、劇的に上がったりはしない。頭を使う作業の時にラムネを食べるというのはたしかにいいのかもしれない。(自分自身は特に実感はなかったですが)
  • 血糖値が急激に下がると眠くなるという話があるが、自分の場合はどちらかというと血糖値が上がっているタイミングが一番眠気を感じた。頭に糖が行かなくなるのとは別の要因で眠いのだろうか?
  • 空腹感を感じるタイミングでグラフを見るとたしかに値が下がっていた。
  • 少し運動したり、走ったりするとその前後だけガクッと値が下がっていた。吸収で徐々に下がっていくのとは違ってその前後だけ下がっていた。
  • 値がジグザグしながら上昇・下降するのが気になったが、どうやらインスリンの分泌量は数分単位で周期的に変動するらしいのでそれが見えるのだろうかと感じた。

家系ラーメンを食べる

2週間の中で一番血糖値の上がり方が激しかったのがこの家系ラーメン+ライス(おかわり自由)でした。Glimpで上矢印2個の表示が出たのはこれが最初で最後でした。正直な所、初動は多分ラーメンよりもライスおかわり自由が効いているのではないかと思います。一方その後なかなか下がりにくかったり、就寝時の血糖値の増減の山が比較的高かったのは麺類やその他の具材の消化が進んで第2波・第3波が来ていたということかと感じています。

スタバを飲んでみる

最終日はスタバの大学芋フラペチーノを飲んでみました。12:30と19:30の間のツノ状に変化しているところがフラペチーノを飲んだタイミングです。やはり甘いものはググッと上がりますね。2週間の中で間食もちょくちょくしましたが、この時と甘いドーナツを食べた時はわかりやすく値が上がったと感じました。分量の中ですぐにグルコースに分解されるような炭水化物の割合が多いのだと思います。その他にも砂糖入りのコーヒーもこれらの食べ物に比べると穏やかでしたが、グラフの山として見えるなあと感じました。

2週間計測してみて

2週間計測している間は撮れる範囲で食事の写真を撮ったりしていたことも要因である(リブレを使っていないときも割と写真は撮る方ですが)とは思うのですが、血糖値の変動をグラフとして眺められるようになると、「ああこの日はあれ食べたな…」とか「コーヒー延々飲んでたな…」とか、そういう風に普段よりも飲み食いした物について振り返る時間が増えたように思います。

私はリブレを始める前からスマートウォッチの歩数計機能を使っているのですが、歩数計を見ながら毎日何万歩歩くぞ!というような使い方はしていません3。一日の終わりやふと思い立った時に過去の歩数データを含めてログを見ると、いつもより多く歩いた日やいつもより歩数が少ない日が見えてきます。そうすると多く歩いた日は「他のフロアに用事があって階段で移動したなあ4」とか、歩数の少ない日は「いつもと違う場所に行って電車やバスの移動が多かったんだな」とか、一日の歩数というかなりミニマルな指標の記録をきっかけに、過去の行動を振り返ることができます。

このように、歩数や血糖値に限らず、何かしらの自分自身の行動が反映される数値の記録はうまく使ってやると過去を振り返るよいトリガになるのではないかということをこの2週間で改めて感じました。リブレも歩数計も自発的に記録をチェックする必要がありますが、例えば血糖値ならグラフの山を拾って「何か食べましたか?」とスマートデバイスの側から問いかけるとか、振り返りのトリガをかけるところまで流れをきちんと設計してやると面白いかもしれません。

技術へのアクセシビリティ

さて、ここまで使ってみての感想をつらつらと書いてきましたが、最後に今回の#NT血糖値観察会について、Twitter上で出ていた否定的な意見に対して少し私の意見を表明しておきたいと思います。

否定的な意見というのは、必要に迫られてリブレのようなセンサを使っている方から見ると「面白そうだから」、「遊びで」という理由でこの手のセンサを使うことが不愉快である、というような内容でした。この点に関して高須さんの記事ではホビーから生まれるイノベーションもあるのではないかという視点で議論がされています。Twitterや前述の記事も見ながら自分としても少し考えたのですが、今のところの自分の意見としては、

  1. 不愉快であるという意見を表明する自由は尊重されるべきである
  2. ある技術を使いたい人が使いたい時に使いたいように使える自由も尊重されるべきである

といったところです。血糖値モニタに限らず、(もちろん公共の福祉に反しない範囲で、というのはありますが)ある技術を利用することや、その利用方法について他者が制限を加えることは望ましくないと私は考えています。もし「遊びで使っている人が何人かいるから他の人も遊びで使っているに違いない、こんな技術は本来不要なはずだ」というような主張があるとしたら、本来必要な人がその技術にアクセスできる可能性を下げるような主張なので断固反対ですし、逆に本来必要な人が入手できなくなるようなレベルで大量に使用する(これも他者が技術へアクセスすることを妨げる行為ですね!)のでなければ遊びだろうと問題ない、という立場です。

ある技術をどう使うのが正解なのかは一通りに定まるものではなく、そもそも何が正解かは様々な理由で変わりうるし、誰が正解を引き当てるかも事前に分かるものではないと思います。ですから、「使いたい時に使いたい技術が使いたいように使える」ことは技術自体の価値を高め、その技術が社会全体で活用される上でとても重要な条件だと考えています。

このあたりの話はコピーレフトの考え方にも似ていて色々と議論が尽きない分野だとは思いますが、ひとまず私の今の考えを書いておきます。

 

以上、NT血糖値観察会に参加した記録でした。次は2019年GWのASEAN旅行記の予定です。もはや12月・年末年始が見えてきていますが、ASEAN旅行記は今年中に終わらせたいと思っています…!

  1. 厳密には細胞の間を満たしている間質液のグルコース濃度と血糖値(=血中のグルコース濃度)との間に相関関係があることを利用して、間質液のグルコース濃度を計測して血糖値を推定するデバイスです。
  2. 健康診断の際の血糖値の測定結果を見るに、そこまで外れてはいなさそうですが。
  3. 健康のためにはそういう使い方をしたほうがよいのでしょうけど…
  4. 昨今はオフィスに行かないのであまりないですが…
公開日:2020/11/30 最終更新日:2021/08/13