概要

ニコ技深セン観察会」で一緒にツアーに参加していた飯島さんから頂いたアクションカム(3000円程度とのこと)を分解しました.「深センで買った700円アクションカムをバラしてみる」で分解した700円アクションカムと適宜比較していきます.

注意

本分解レポートは分解を推奨するものではありません.また,このレポートを参照した結果生じたいかなる損害についても筆者は責任を負いません.

外箱

まずは外箱から見ていきます.

おもて面はいかにも汎用の箱です,という趣のある,特定のブランドや商品の型番がない箱です.”Authentic H9″という表記とリモコン付属という表示が気になる所です.ちなみに,リモコンが付属する旨の表示はシールになっています.リモコン無しモデルもあるということでしょうか.

裏面もありきたりな機能の紹介になっています.能書きのとおりであれば4K対応ということのようです.

箱を開けると,こんな感じに本体とアクセサリの山とが分かれて入っていました.アクセサリで特筆するものはリモコン以外には特になさそうでした.

外観

本体を取り出し,比較も兼ねて700円アクションカム(左),今回の分解対象のアクションカム(中央・以下3000円アクションカム),SJ5000X Elite(右・約1万円)を並べてみました.並べていて気が付きましたが,700円アクションカムは異様に軽いです.レンズの問題でしょうか?

並び順は上の写真と同じままで,上から撮ってみました.SJ5000X Eliteはレンズの飛び出し量が他の2つに比べて大きいのが分かると思います.3000円アクションカムは,ボタンのマークはSJ5000X Eliteと似た赤丸ですが,インジケータの位置は700円アクションカムと似ています.

出力されるのかテストはしていませんが,3000円アクションカムはHDMI端子が装備されています.

画面側には”Remote”,”Action Camera”という表記がありました.

底面は700円アクションカムと同様のバッテリーケースのふたがありました.

ちなみにSJ5000X Eliteはこのように開閉用のレバーが別途用意されていて,700円アクションカムや3000円アクションカムのように,ふたの弾性に頼るような設計にはなっていません.このあたりは地味ですが価格の違いが現れるポイントということでしょう.

本体の分解

さて,外観を一通り眺め終わったので,本体の分解に入っていきます.

ふたを開けると,このようにバッテリーが見えます.黒いフィルムの部分を引っぱってバッテリーを引き出す構造になっています.

バッテリーを引き出してSJCAMのものと並べてみました.

端子部を含め同じようなサイズなので,おそらく差し替え可能ですが,3000円アクションカムの方はなぜか丸みがついています.

その後は700円アクションカムのときと同様にフロントパネルから攻めていきます.

フロントパネルを取り外すと,電源ボタンがマウントされている子基板,ネジ(4箇所)が見えました.形状は若干異なりますが,700円アクションカムとほとんど変わらない構成です.

ネジを外すと,LCD以外の部分はひとかたまりになっていて取り外せたのですが,700円アクションカムと同様にLCDは背面に取り付けられているようでした.700円アクションカムのときは背面パネルをこじ開けて取り外しましたが,バッテリーボックスの隙間からフレキのコネクタが見えたので,工具を差し込んでフレキを取り外すことができました.

基板とレンズのユニットと背面部に分かれましたが,基板のおもて面(センサが付いている面)を見るには基板上のネジをさらに取り外す必要がありました.

天面のスイッチは700円アクションカムでははんだ付けで親基板に固定されていましたが,3000円アクションカムでは筐体樹脂パーツへのツメでの固定とケーブルによる配線になっていました.基板上には”W8 V2.1 KEY2 20150708″とありました.

基板表面を開けると,放熱用シリコーンパッドや光学系,電池の端子やアンテナなどが見えます.「深センで売っているBluetoothスピーカ電球をバラしてみる」にも同様のシリコーンが貼ってある部分がありましたが,その時と同様に放熱用のシリコーンの先にあるのは樹脂パーツなので,放熱効果があるのかは謎です.レンズは700円アクションカムと同様にM12マウントのようです.

LCDのフレキには”SHENGTENG”とのマーキングがありました.また,LCDはケースのツメで固定されているようでした.

基板(うら面)

さて,一通り分解が終わったので,基板上の部品のチェックに移りたいと思います.まずはうら面です.

基板左下部にはシールド部がありますが,はんだ付けでの固定ではないので簡単に取り外せました.

シールドを取り外した基板うら面はこんな感じです.700円アクションカムに比べてかなり部品点数が多いことが分かります.

さて,うら面のICですが,”AJ21″および”A701″と書いてある5ピンのIC2つは正体が分かりませんでした.接続されているパタンが太く,近くにパスコンがあることからおそらくLDOだとは思います.

うら面はこまごました周辺機能のためのICが並んでいるという印象です.WinbondのW25Q64CVIGは64MbitのSPI Flashです.700円アクションカムファービーもどきBluetooth電球にも出てきたフラッシュメモリの姉妹品ですが,パッケージが足のないWSONパッケージになっていることと,マスターとなるチップと4bit幅の信号線で接続し高速に通信できるQuadモードに対応している,比較的高級な(とはいえ,コモディティ品なので数十円だとは思いますが.)チップを使っている点が目新しい点といえます.これまでの分解品と同様,おそらくおもて面に実装されているSoCのためのプログラムが入っているものと思われます.

RealtekのRTL8189ETVはそのもののデータシートは見つけられませんでしたが,このチップを使用したモジュール等のデータシートを読むと,802.11n規格対応の無線LANチップの模様です.プロセッサへSDIOで接続して使用するチップのようです.

“A1SHB”/”A2SHB”とマーキングがある3ピンの部品はそれぞれVishay SiliconixのSi2301DS/Si2302DSです.電源ラインの制御等に使われているものと思われます.Si2301DSについてはファービーもどきの回にも登場しています.

A7125は台湾AMICCOM Electronicsの2.4GHzトランシーバICです.リモコン機能のためのICだと思われます.その上のジグザグのパタンはこのICのためのアンテナのようです.

“DC=E2H”とマーキングがあるICはおそらく台湾RichtekのRT9193というLDOの1.8V品だと思われます.AliExpressで検索すると同一のマーキングのものがTorex SemiconductorのLDOとして売られていますが,Torexのほぼ同じ仕様の部品の型番を名乗って違うチップが売られているのをAliExpressで度々見かけているので,おそらくRT9193で合っているものと思います.

基板(おもて面)

基板おもて面はレンズマウントと放熱用シリコーンに隠れていた大きな2つのチップが印象的です.

 

大きいチップのうち,左下の長方形のチップは韓国SK Hynixの”H5TQ1G63DFR-H9I“という64M x 16bitのDDR3 SDRAMです.その隣の大きい正方形のチップは台湾iCatch TechnologyのSPCA6350AというSoCです.このSoCがカメラとの通信,エンコード,HDMI出力等を一手に引き受けているようです.700円アクションカムは64ピンのQFPのICが主要な制御を行っていましたが,こちらのICは353ピンのLFBGAで,さらにメモリは前述のように外付けという違いがあります.また,このSoCは最大で2個のセンサを接続することができるようです.

これら2つのICの上にあるのは中国RockchipのRK816というICです.データシートのたぐいは見つかりませんでしたが,Rockchipの中の人らしき人がkernel.orgにパッチを投稿した記録から,電源管理ICであることが判明しました.Rockchipといえば中華タブレット向けSoCで有名ですが,それらのSoCと一緒に使用するようなICも販売しているようです.

“B280J”というマーキングがあるICは正体が分かりませんでしたが,センサのフレキ基板の隣接する2ピンに接続されているパタンがこのICにも接続されているので,センサ用の電源を生成するLDOだと思われます.

最後に,カメラのセンサですが,フレキの情報を信じるならば米国OmniVisionのOV4689のようです.一応,フレキ基板上のコンデンサを基準にセンササイズ等を計算したところ,OV4689のデータシートの記述と一致したので,高解像度のCMOSセンサを製造しているメーカの少なさも考慮すると偽物である可能性は低いかと思います.

ちなみにこのOV4689は4M(2688×1520)ピクセルなので,2.7Kモードがネイティブの解像度ということになります.4K映像は前に述べたSPCA6350Aの超解像機能を使用して補間したものということだと思います.4K映像が補間したものとなっているのはSJ5000X Eliteも同じ(ただしSJ5000X Eliteは静止画は補間なしで4032×3024ピクセルで撮影可)なので,アスペクト比が16:9のセンサを採用したのは若干気になる点ですが,標準的な仕様といったところかと思います.

右下の板状の金属パーツはRTL8189用のアンテナだと思われます.

リモコンの分解

さて,一通り本体の分解を終えたので,アクセサリのリモコンの分解へ移ります.

外装は上の写真のようになっていて,ボタンが2個のシンプルな構成です.

ネジを4箇所外すと基板が出てきました.CR2032が電源で,本体にも入っていたA7125と”10267A”という刻印のあるICで構成されているようです.”10267A”という刻印のフォントがどうも癖があり見覚えがあるなとしばらく考えつつググっていたのですが,どうやらこれはルネサスのRL78マイコンのR5F10267のようです.国産家電を分解したときによく見る字体だったので見覚えがあったようです.このマイコンがA7125を制御し,リモコンの機能を実現しているのだと思います.

反対側はボタンとLEDのみのシンプルな構成です.基板には”RM1_V1.1_20151116″とあります.本体側のシャッターボタン用の基板よりも設計は新しいようです.

外箱にあったように,リモコンは全体的に防滴に気を配った設計になっていました.

所感

何度も言及しているところではありますが,まずは700円アクションカムに比べて部品点数が多いことが印象的でした.無線LANやリモコンといった付加価値要素のために部品点数が増えているというのもありますが,取り扱う画像サイズの増大に伴ってRAMが外付けになったり,電源関係が複雑になったために電源管理ICが入ったりという形での部品点数の増加があり,単純に700円のものに部品を足していったら3000円のクオリティのものになる,というわけではなく,見た目こそ同じだがまったく違う構成で作られているのだという感想です.

また,使用されている部品における中国本土の部品の割合が低く,台湾の半導体メーカが多いという印象もありました.競争が激しい上,特殊なプロセスが求められるために淘汰が進んでいるDRAMチップはともかく,メインのSoCや無線LANチップが台湾勢というのは意外でした.以前分解したクアッドコプターのカメラの処理を行うSoCはもともとネットワークカメラ用のSoCでしたが,上海のメーカのチップでした.アクションカムのSoCも米Ambarellaや台湾Novatekなど,競合はいますが,そういう市場を取りに行く気が本土側にあまりないのか,あるいは台湾や米国のメーカがそこにかなり注力しているということなのか,気になる所です.また,リモコンの制御ICがルネサスというのも意外でした.消費電力の制約等からチョイスしたのか,あるいはRL78ファミリを使っていた人が開発陣にいたのか…いろいろと部品のチョイスに気になる点が残る一品でした.

ちなみに,分解した後,本体内部のリモコンとWi-Fiのアンテナを外して(リモコン側はパタンなので手前の部品を外して)組み直したので,後日700円アクションカムとの比較もやってみようかと思っています.