概要

2016年8月に深センに行った際に購入した50元(約760円)のGoProクローンなアクションカムを分解してみました.

深センで700円のアクションカムを買った話」として,このアクションカムを買った時の話とそもそも何故深センに行ったのか,深センで工場見学をした感想についてもBlogに書いています.そちらもご覧ください.

外観

まずは外箱から見ていきましょう.

外箱前

外箱には”SPORTS Cam”という表記とともに”Full HD 1080p”とあります.
外箱裏

外箱の裏側を見ても,15fpsではありますがFullHD解像度をサポートしていることを謳っています.私が試した限り,このアクションカムはVGA解像度以外の設定では1024×736,30fpsのMotion JPEGを出力することを確認しています.

深センではこの700円アクションカム以外にも,1万円程度のSJCAMのGoProクローンも購入しました.そのアクションカムと並べてみた写真が以下になります.

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左が700円アクションカム,右がSJCAM.実に10倍以上の価格差ですが,そこまで見た目は変わりません.しかし持ってみると700円アクションカムの方が非常に軽いことが分かります.

フロントパネルを外す

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分解を始めるにあたって,まず最初に電池を底部から取り外し,フロントパネルも取り外しました.フロントパネルについてはこのアクションカムを購入したお店で,カラーバリエーションを変更するために手でフロントパネルを適当に付け外ししていたのを見ていたので,簡単に取り外せるだろうと思っていましたが,予想通りちょっとこじれば簡単に外れるようになっていました.

フロントパネルを外すと,電源スイッチが搭載された基板が見えるようになりました.また,四隅にネジが有ることが分かったのでこれらを取り外しました.

前面から引っ張ってみる

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フロント側のネジを取ると,レンズがマウントされている基板と,それが取り付けられているプラスチックフレームが自由に動くようになるのですが,LCDが背面に接着されているようで,ケースと完全分離できる状態にはなりませんでした.

背面パネルを剥がす

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そこで,背面のLCDの保護パネルを兼ねた背面のパネルを剥がしました.すると右端に2つのネジが現れたので,こちらを外しました.

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ネジを外すとこのように内部構造とケースが完全に分離しました.

内部を更に分解

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右側の白い長方形がLCDモジュールになります.フレキには”HD-2.0 LCD-100″との記述がありました.コネクタでの接続なので,LCDと基板は簡単に分離可能です.

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LCDを外した所.メイン基板との録画開始ボタンの載っている基板は直角に接していますが,固定はハンダ付けで行われていました.基板がずれないように,メイン基板側に開いている穴にボタン基板の突起が刺さるような形にはなっていました.

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プラスチックのフレーム部品と基板を接合しているネジを外すと,基板とレンズユニットだけを取り出すことができました.左端の銀色の部品はスピーカーです.メイン基板には”SPORT325X_V1.4 20160427″とあります.ちなみに電源ボタン基板には”S1_POWER_V1.0″,録画開始ボタン基板には”SAX_OK_V1.3″とありました.

基板のLCD側とレンズ側の両面を見てみると,非常に部品数が少ないことが分かります.

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レンズマウントとレンズの間はホットボンドで軽く固定されているだけなので,レンズはホットボンドをちょっと取り除き,ひねれば簡単に外れました.レンズは小型カメラモジュールで一般的なCマウントのようです.M12マウントのようです(訂正).

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レンズを取り外すとセンサが見えます.レンズマウント自体は基板にネジ止めされています.

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ちなみにこの状態でもバッテリーとLCDを接続すれば起動しました.カメラモジュールを取り外すと,初期化の処理が無限ループになっているのか,スプラッシュスクリーンから先に進みませんでした.

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レンズマウントのネジ止めを外して,フレキも取り外すとこのようになります.ちょっと暗いですが,録画開始ボタン基板の影になっている部分にある3本の電極はバッテリ端子です.

主要な部品についてのメモ

ここまでで大体分解できるところまで分解したことになるので,メイン基板の裏表の写真に解説をつけたものを示します.便宜上,”SPORT325X_V1.4″と表記のある側を表,LCD向けコネクタがある側を裏とします.また,私が見たところ,メイン基板は内層のない裏表だけの2層基板で,ボタン基板は片面だけの1層基板でした.

表面

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表面にあるQFP(4方向に足の出ている表面実装部品)がメインのSoC(システムオンチップ)だと考えられます.0.4mmピッチ64ピンのようで,このチップからカメラモジュール,LCDモジュール,SDカード,USB端子(充電だけじゃない模様)への配線が伸びています.この他に大きなICは裏側にも表側にもないので,カメラモジュールから出力される画像データをバッファするためのメモリ,JPEGエンコーダなどもこのチップにすべて集積されているものと思われます.もしかすると,MPEG系フォーマットと異なりフレーム間の相関を利用した圧縮を行わないため,バッファ用のメモリが少なくて済む(→ワンチップ化しやすい)こともあって,Motion JPEGを採用しているのかもしれません.

ちなみにMicroHDMI端子のパタンは,眺める限り,GNDへの接続はされているのですが,そのほかに伸びている配線が1本しかなく,それ以外のパッドからは配線が全く伸びていないという状況なので,おそらく搭載しても飾りにしかならないだろうと思います.

また,カメラモジュールへの配線などを見ていると,VGA解像度で転送クロックがさほど高くないためなのか,等長配線やミアンダ配線(マザーボードなんかにある蛇行配線のことです)のような,高速信号向けの特別な配慮はあまりないように見えました.(そもそも2層基板ですし.)パスコンの付け方も,あまりよい配置ではないように見えます.

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双眼実体顕微鏡を引っ張り出してきて,IC上の刻印を確認した所,”16130 E15CB14-65070″とありました(撮影が下手なのはご容赦ください).GoogleやBaiduで検索してみましたが,特にヒットしませんでした.このICの分解には失敗してしまったので,ウエハの写真はありません.同じアクションカムをもう一台買ってあるので,一通り遊んだらきちんと準備をした上でウエハの取り出しに挑戦するかもしれません.

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基板を眺めていて気になったのはこのハンダが跳ねた点くらいで,特に他に怪しい点はありませんでした.少なくともこの基板については「深センで700円のアクションカムを買った話」に出てくる基板工場で見たような,大電流によるパタン焼き切りをしたような雰囲気はありませんでした.

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厳密には基板表面でなく,カメラモジュール内部なのですが,センサについても顕微鏡で調べてみました.この写真だけは倍率40倍で撮影しています.おかげで肉眼では読み取るのが難しいセンサ表面の文字を読み取ることができました.センサ表面には”GC0309″とあります.GC0309については検索した所,GalaxyCoreという会社の1/9インチ,VGA解像度のCMOSセンサであると判明しました.Full HDとは一体何だったのでしょう(そもそも本気にしていませんでしたが…).このセンサは700円アクションカムの部品の中では唯一,CSP(Chip Size Package)という足のないパッケージの部品でした.足のないパッケージは,チップの裏にパタンがあり,そこに半田の玉が取り付けられていて,基板側にその半田の玉を介して接続するという方法を取ります.こうすることで,チップの裏側全体を配線の引き出しスペースとして使うことができ,外周部に足を引き出す必要のある従来のパッケージに比べてサイズを小さくすることができるというメリットがあります.一方で,チップの裏側は一度基板に取り付けてしまうと目視できないため,検査が難しくなるといった問題や,配線密度が上がるため,基板の設計や製造の難易度が上がるといったデメリットがあります.

裏面

裏面は特筆するような部品はありませんが,右上の方の(小さいですが)丸囲みの数字を振ってある3端子以上の部品については一応調査したので,そのメモを書いておきます.
pcb-Back

  1. 刻印は”J6″.S9014というNPNトランジスタとGoogle検索して判明.これは表面実装品ですが,2SC1815のような足付きバージョンのS9014は10年近く前に一部で流行った(?)ダイソーの100均AMラジオにも使われていました.中国ではかなりメジャーなトランジスタのはずです.(AliExpressやAitendoで買えます)
  2. 刻印は”3401″.刻印が3401である,という部品そのものは発見できませんでしたが,様々なメーカがxx3401という名称の同一規格の表面実装のPチャネルMOSFETを出していることから,おそらくそのようなPチャネルMOSFETであると考えられます.配線を追った感じだと,すぐ裏のバッテリに接続されているようなので,電子的に電源をON/OFFする(電源ボタンを押しっぱなしにしなくても通電するようにする)スイッチの役割を果たしている模様です.(データシートを見る限り,xx3401はそのような用途向けのトランジスタなので辻褄が合います.)1.のS9014はこのトランジスタの駆動に使われているようです.
  3. 刻印は”4A2D”.AliExpressで調べると,全く同じ刻印の3.3V出力のレギュレータが(なぜか複数の3.3V出力のレギュレータの名前で)販売されているので,そのような電源ICだと考えられます.

直接型番を書き入れたLM4871はスピーカの駆動用のようです.MD25D80は規格化されて複数のメーカが発売している25xxxシリーズのシリアルフラッシュメモリです.フラッシュメモリはワンチップ化する際に集積しにくいといったことや,単に大容量のメモリを集積すると面積を食ってしまうという理由から,プログラム等を記録するメモリをこのような外付けのシリアルフラッシュメモリとするアプローチは最近良く取られています.(例えば最近流行っているところでは,Espressif社のWi-FiチップであるESP8266が同様のアプローチを取っています.)

ちなみに25~の前に来るアルファベットがメーカ名を表していることが多いのですが,調べた所メーカ公式ページに記載はないものの”MD”型番は中国のファブレスフラッシュメモリメーカであるGigaDeviceの製品であることを示している模様です.完全に余談ですが,GigaDeviceは少し前にSTMicroelectronics社のSTM32マイコンと完全にピン互換(型番の付け方もSTM32F~に対応してGD32F~と付けている)で少し高速なマイコンをリリースし話題になりました.Olimexの記事によればSTの承諾を取った製品ではない模様です.また,興味深いことに,このGD32FマイコンはZeptobars.comの解析によると,CPUとRAMを搭載したダイとフラッシュメモリを搭載したダイが別々に搭載されている(=フラッシュメモリが外付けというアプローチと似ている)とのことです.

話がそれましたが,このMD25D80については規格化されたフラッシュメモリなので,基板から取り外してデータを読み出すことが出来ました.バイナリエディタで眺めてみたところ,画面表示用のアイコン等は見つけることが出来ましたが,大半のデータは正体が分かりませんでした.ファイルヘッダのようなものが残っていればそれをとっかかりに私でもいろいろできるかと思ったのですが,残念ながらそのようなものはなく,機会があれば詳しい方に見てもらいたいなという感想です.

その他にも,基板裏面にはコネクタが異なるタイプのLCDモジュールに対応するためと思われるパタンや,左下に見られるような未実装パタン群がありました.未実装パタン群は配線が太いことや配線の並びが3.に示したレギュレータに似ていることから電源回路関係と推測しました.未実装パタン群の中では右寄りの位置の四方にパッドの出ている部品はおそらくQFN(Quad Flat Non-leaded)パッケージのICではないかと思います.もしこれが実装されていたとしたらCMOSセンサ以外では唯一の足なしパッケージ(ただし,QFNパッケージは外周部にしか端子がないので,中央部に放熱パッドがない場合は目視で検査可能です)ということになったかと思います.もしかすると,QFNのICはマイコンかI/Oエキスパンダか何かで,基板左端,縁の部分に2個あるLEDの点灯に関わっているのかもしれません.(その割にはパッドから伸びている配線が少ないのですが…)Wi-Fi機能を追加するための回路というのも考えたのですが,それにしてはアンテナと思しき配線やコネクタがないことから,そのようなものではなさそうだと結論付けました.

ここまで調べていて,振り返ってみるとリチウムイオンバッテリの充電ICがないということに気がついたのですが,基板を眺めると裏側の2.のトランジスタのそばに1Ωの抵抗があったので,それで電流の検出くらいはしていると思うことにします.バッテリ端子からは遠いのですが,未実装パタン群はUSB端子のそばなので,「実はそこが充電ICが実装されるスペースだが,ケチった結果もっと簡略化された回路になった」ということもあり得るかもしれません.

所感

分解することで,思った以上にワンチップ化が進んでいることが分かりました.数百円のMP3プレーヤが出た時も買ってきて分解した記憶があるのですが,アクションカムについてもその時と同じレベルにワンチップ化されているのだと感じました.あくまでVGA解像度で,出力もMotion JPEGだからということはあるのだと思いますが,数が出るのであれば専用ICを作ってもペイする,というごくごく当たり前のことを再度実感したのでした.

また,単に部品点数を減らすだけでなく,足つきの部品を採用することで,足のない,外部から目視で検査が出来ないような部品を排除し,検査のコストや基板製造の難易度を下げるという努力も見えます.

一方で,それだけの徹底したワンチップ化が進んでいるとはいえ,LCDモジュールやバッテリ,カメラモジュール,ケース(防水ケースなどのアクセサリもセットで!)などを合わせて700円で売れるというのはやはり恐ろしいと感じました.想像できないほどの数が出ているか,あるいは「深センで700円のアクションカムを買った話」で書いたように,そもそも金型代が乗ってないような値段でケースの類を手に入れられるようになっているのではないでしょうか.

結局,この分解したアクションカムはフラッシュメモリを取り外す時に他の部品を飛ばしてしまい,元に戻せなくなってしまったのですが,そもそも700円でこれだけ楽しめて(?)いる時点で十分合格点だと考えています.また深センに行くときには安いアクションカムを探して,どのようなバリエーションがあるのか,あるいはもう少し高いモデルはどうなっているのかなどを調べてみるのも良いかもしれません.深センに行った方からの分解OKなおみやげも期待しております;-)