国際認知言語学会の参加録珍道中編と続いているエストニア出張記ですが,最後にエストニア国立博物館とAHHAA Science Centreの話と,IT関係の話をして終わりたいと思います.

現地でSIMを買う

情報系の人が海外に行ってまず最初にすることといえばネット回線の確保です.今回は宿への到着が夜遅く,また宿のWi-Fiも快適だったため,翌朝になってしまいましたが近くのコンビニ(R-kiosk)にSIMカードを買いに行きました.

コンビニのレジのお兄さんに聞いた所,R-kioskでおすすめしてるのはこの”zen“というSIMカードだということだったので€3で購入しました.特にパスポート等の提示は必要ありませんでした.€3には通信プラン用のクレジットも含まれていて,しばらくはそれで使っていたのですが,まめにTop-up(チャージ)するのも面倒だろうということで,翌日には同じコンビニで€5のTop-upをお願いしました.

Top-upはコンビニで発行してもらったレシートに記載のコードをSMSで所定の番号に送信することによって行いました.Top-up後は同じくSMSにプランを示すコードを打ち込むことで,クレジットの範囲内のプランを購入することができます.今回は€5で1週間,2GBまで使い放題のプランを選択しました.ちなみに後述するように学会開催中はほとんど大学のWiFiを使っていたため,2GBのデータ量を使い切ることはありませんでした.

SIMカードはコンビニだけでなく,スーパーなどでも目にしたので,非常に入手性は良いという印象です.大きい空港であれば空港での販売もあるのかもしれませんが,今回エストニアへの入国は定期便が日に一便のタルトゥ空港を利用したため,空港でのSIMの入手性については確認できませんでした.(売店すらなかったので…)

タルトゥのWiFi事情

タルトゥの街を歩いていると写真のような看板をたびたび見かけました.

調べた所,この”wifi ee”の看板はエストニアのNGOと政府が共同が設置しているWiFiホットスポットを示す看板のようでした.Webサイトによると,タルトゥ中心部だけで74個のホットスポットがあるそうです.先日の記事で取り上げた広場にもこの看板があり,観光などの短期渡航者が行くようなエリアでのカバー率はかなり高そうだという印象を受けました.

また,学会の会場であるタルトゥ大学では教育機関向け国際Wi-Fiローミングサービスであるeduroamによる無線LANが提供されていました.私の通っている大学もeduroamに加盟しているために,追加の設定なしに,タルトゥ大学内でノートパソコンを立ち上げるだけでインターネットへの接続が可能でした.国内の他の大学へ行ったときにeduroamを使用したことはあったのですが,海外でも実際にシームレスに使えたことにちょっと感動してしまいました.

タルトゥ大学のネットワークも自前のライブ配信プラットフォームを持っているだけあってか,普通にブラウジングをしたりする程度ではストレスを感じることはありませんでした.私の経験では,学会のWi-Fiや宿のWi-Fiは提供されているものの,電波が弱かったり遅かったりするということが多かったので,滞在中そのようなストレスを全く感じなかったのはエストニアがインターネットをインフラとして重視していることの現れなのではないかと感じました.(新興国に行くことが多いので,単純に比較はできませんが…)

ショッピングモールを覗いてみる

珍道中編でも書いたように,タルトゥ中心部には3つのショッピングモールがあります.その中でもkaubamajaは一番宿に近かったので,より近くにあるスーパーであるRimiとあわせて晩ごはん等の買い出しに何回か行きました.

そのkaubamajaのスーパーマーケット部門の端に,こんな風に端末が置いてありました.右側に備え付けられていた冊子を見たところ,あらかじめ会員登録しておけば,端末でバーコードを読み取ることで会計処理をすることができ,レジで並ばずにそのままお店を出ることができるというシステムでした.たまたまこの端末を使っている方を買い物中に見かけたのですが,商品を取り出してピッっとスキャンし,そのままエコバッグに商品を入れていました.何も知らないで見ると泥棒のように見えてしまいますが,もちろんそんなことはなかったのでした.

kaubamajaにはeuronicsというヨーロッパで展開している家電小売店もありました.コンピューター関連というよりは普通の家電の小売店でしたが,テレビ売り場に並んでいたテレビはオランダPhilips,中国Hisenseなどが中心だったのが印象的でした.宿のテレビもPhilipsでした.

その他にも,elisaという携帯電話のキャリアのショップもありました(ブレブレですみません…)こちらは覗いてみた所,iPhoneやXperiaなど,至って普通のキャリアのショップという感じでした.しかし,商品説明のパネルがタッチパネル液晶になっていて,言語の切り替えができる仕様になっているところまでは良かったものの,なんとエストニア語とロシア語しか選択できず,どのようなプランがあるのか今ひとつわかりませんでした.この「エストニア語とロシア語しか選択できない」というパターンはこのショップだけでなく,様々なエストニアのWebサイトを見ていても遭遇しました.一方でエストニア語・ロシア語・英語から選択できるWebサイトも多く見かけました.これはあくまで推測ですが,契約の必要な携帯電話や,会員制サービスなどの,在住者向けのサービスに関連するWebサイトはエストニア語・ロシア語のみということが多いのではないかと思います.

宿から一番遠い側にあるショッピングモールのTaskuにはOomipoodという電気関係の品物を扱っているショップがありました.

置いてあるものは配線などの電設資材が主でしたが,Raspberry Pi関連製品やArduino関連製品,タミヤのキット(!)なども若干ですが置いてありました.

Taskuとkaubamajaの間にあるKtartalという,3つの中で一番新しいショッピングモールには,futuruumというVR体験スペースもありました.見たところ,HTC Viveを使ったVRアトラクションを提供しているようでした.

できたばかりの国立博物館

今回参加した国際認知言語学会の通常のセッションはタルトゥの中心地にあるタルトゥ大学で行われていましたが,水曜日に開催されたポスターセッションやディナーはそこから徒歩で3,40分のエストニア国立博物館で開催されました.

写真の通り,大変きれいな建物で,2016年にオープンしたばかりの博物館とのことでした.元々は第二次世界大戦前にこの場所に博物館があったようですが,その後の旧ソ連時代にはこの周辺は空軍基地として使われていたため,2016年になってようやく再度この地に博物館を開くことができたということのようです.

学会のプログラムの中に常設展の見学(学芸員の方のガイド付き)も含まれていました.常設展は2つあり,まず最初に”ECHO OF URALS”という,エストニアの民族史を中心とした展示を見学しました.

エストニアの民族衣装の実物や,住居のレプリカなどが展示されていました.カラフルでかわいらしいものが多いなあという印象でした.実物の展示とともに説明ももちろん書いてあるのですが,開館が2016年と最近なだけあって,実物のショーケースの横にタッチパネル液晶が埋め込まれており,表示されている展示物をタップするとそれぞれの説明が各国語で表示されるというシステムが導入されていました.その他にも,それぞれの展示のポイントでの映像資料は,ガラス板に貼り付けられた半透明スクリーンに背面上方から投影し,音声は手前側の上方に取り付けられた指向性スピーカーから出力され,それがうまくスクリーンのガラス板に反射して,スクリーンの目の前にいる人にだけ音声が聞こえるように工夫されていました.歴史関係の展示自体のも興味深かったのですが,IT系な私としてはこういう細かい所の作り込みの細かさにも感心してしまいました.

もう一つの常設展である”Encounters”は現代のエストニアの技術の発展を中心とした展示でした.立方体状の物体はESTCube-1というCubeSat(大学などの教育機関が製作することが多い10cm角程度の小型人工衛星.)のレプリカです.ESTCube-1はタルトゥ大学を中心に運用が行われていたようです.

こちらも展示物自体も興味深かったのですが,やはり展示のための設備の作り込みが大変細かく感心してしまいました.この常設展の入口でICカードが配布されており,そのICカードを説明パネルにかざすと,電子ペーパーでできている説明パネルが書き換わり,ICカードに紐付いている言語で表示されるようになっていました.ショーケースの中の細かい展示物のためのA5サイズ程度の電子ペーパーから,全体説明のA3程度の電子ペーパーまでが使い分けられており,見た目もよく多言語対応を実現していました.(英語で見る人とエストニア語で見る人が同時に見ることはできませんが…)

静態展示のものが主でしたが,中にはインタラクティブな展示もありました.何色かのラベルが貼り付けられたフロッピー(まさか2017年に外国に来てフロッピーを見ることになるとは…)を対応するくぼみに置くと,色に対応した映像素材や音声素材,エフェクトなどが写真の上部,この展示の中央部に相当するスクリーンに投影され,複数人でVJのようなことができるようになっていました.映像素材は1980年代ごろのものもあるようでした.

新しい博物館だから,というのも大いにあるとは思うのですが,テクノロジーの展示への導入が全体的にうまく,意識して導入しているのかなという印象を受けました.

ワイルドな体験型科学館!AHHAA Science Centre

エストニア国立博物館の他に,学会終了後に科学館であるAHHAA Science Centreへ行きました.こちらも比較的新しい施設で,現在の建物に移転したのは2011年だそうです.

入り口で購入したチケットはリストバンド型で,QRコードをゲートにかざして入場するというシステムでした.実はこのAHHAA Science Centreにはプラネタリウムにメガスターが導入されていて,これも見たかったのですが,残念ながらチケットが売り切れ(学会でたくさん人がいたからでしょうかね…)だったため,通常の展示のみの見学となりました.

さて,この科学館ですが,About usに”Our mission is to shape the knowledge-based mindset through Aha-experiences.”とあるように,展示は基本的に体験型になっていて,体験を通して様々な科学的知識を身に着けてもらおうという趣旨の科学館になっています.上の写真は水圧を体感する装置で,青色に光っている板と板の間に手を挟み,横の赤いボタンを押すと上部のパイプへ水が注水され,パイプの下部に張られているゴムシート越しに水の重さ(=水圧)を感じることができるという展示です.最大で4mほど注水されるようになっていて,なかなかの重みを感じることができました.

国立博物館と異なり,展示物の説明はファイルに各国語の解説が綴じられているというスタイルではありましたが,どの展示にも,どんな操作をすればいいのか,どんな現象を体感することができるのか,その現象は何を意味するのかというスタイルで説明が記述されている点は非常に好感が持てました.正直な所,2月に行ったカリフォルニアサイエンスセンターと比べれば非常に小さい科学館なのですが,人口130万人の小国が全力で科学に興味を持つ若者を育てようとしているという意気込みが伝わってくる展示の数々でした.

先ほども書いたように,科学館の展示は大半が体験型になっています.しかし,個人的に驚いたのは日本だったらスタッフを配置しなければ実施できなさそうなワイルドな展示がかなりあったことです.例えば,こちらは滑車を使うことで自分自身を持ち上げるリフトなのですが,安全レバーをロックする機能はあるものの,特にスタッフ無しで勝手に乗って勝手に体験して降りていく,というスタイルで運営されていました.

ちなみに一番上まで引き上げてから写真を撮るとこのようにそこそこ高く,ちょっとした遊園地のアトラクション程度の高さとなります.

その他には入場口近辺とメインの展示のホールをつなぐゲートはウォーターカーテンになっていて,手前に写っている子供が操作している端末で絵を描くと,その絵のデザインの通りに水滴が落ちるようになっていました.文字や絵を表示するウォーターカーテンは見かけることも増えてきましたが,自分でデザインできるというのは珍しいのではないかと思います.ちなみに,右上の信号の表示が青の時は水滴が止まるので,その間に渡る,という仕組みです.

その他に大変面白かったのはバレットタイム撮影(映画「マトリックス」の静止したままカメラがぐるっと周囲を回る特撮効果…ちなみに展示の名前も”Ahhaa,Martix!”でした.)の体験コーナーがあったことです.フレーム上部に大量のカメラが搭載されていて,フレームに備え付けられている端末を操作してから10秒後に撮影されるという仕掛けになっていました.

バレットタイムを自分で撮影できるのも面白いのですが,この展示のクールなポイントはもう一つあるのです.撮影をスタートするための端末の他に,もう一つ端末が備え付けられていて,撮影後にはそちらに撮影結果が出るようになっていました.しかし,単に撮影結果を再生するだけでなく,ここにEメールアドレスを入力することができるようになっていて,入力すると自分の映像がアップロードされた結果のリンクをそのメールアドレスに送信してもらえるようになっていました.こちらのFacebookページが投稿先なのですが,失敗作も結構アップロードされているのを見るに,メールアドレスを入れなくてもこちらに投稿されてしまうようではあります.(かくいう私も失敗して2回挑戦しました.)

その他にもカリフォルニアサイエンスセンターにもあった綱渡り自転車もありました.こちらは私も挑戦してみましたが,まあ怖い怖い…もちろんこれもスタッフが常駐しているようなことはありませんでした.

非円形歯車を実際に回すことができる展示など,物理系が主ではありましたが,その他にも多数の体験型展示がありました.基本的には子供向けの展示ではありますが,大人でもタルトゥに行った際に寄ってみる価値はあると思います.

ちなみにトイレの空室表示がノブに埋め込まれたLEDになっていたり,

洗面台が階段状になっていたりと,建物全体の遊び心もなかなかのものでした.

また,帰ろうとした時に募金箱(?)を発見しました.曲面をコインが転がっていくのを眺める募金箱ですが,大変あざといことに「同時に2つの異なるコインを転がしてみよう!」という説明書きとともに,2箇所に投入口が用意されていました.せっかくですから当然2箇所から異なるコインを入れてこの動画を撮影したのでした.

再び空の旅

さて,一通りの出張記を書き終わったので,最後に帰り道の話をちょっと書きたいと思います.

学会最終日である金曜日は,学会終了後,AHHAA Science Centreやお土産店などへ行き,その後は他大学からいらしていた先生方を含めての晩御飯に混ぜていただきました.

翌朝は早く起きて街の写真を撮って歩いた後,お土産を買い足し(ちなみに酒類は午前10時以降のみ販売可なので買う方は計画的に!),10時半ごろに同行の先生の宿に集合して,タクシーでタルトゥ空港へ向かいました.帰りの飛行機も学会関係者らしき人々で満席となっていました.行きは爆睡してしまいましたが,お昼出発の便だったため,帰りの便では起きたままでした.50分のわずかな時間のフライトなのですが,それでも飲み物が出て驚きました.行きもきっと出ていたのだと思うのですが,それすら気づかないレベルで寝ていたということにここで気が付きました.

その後は同じ便に乗っていた先生方と一緒にビールを飲んだりしつつ,またしても長い乗り継ぎ時間を潰していました.実は帰りの便は同行した先生方とはバラバラで,私は羽田空港に戻りたかったのと,そのほうがチケットが安かったのとでまずヘルシンキから福岡に飛び,福岡から羽田に飛ぶというルートにしていました.たまたま現地でお世話になった他大学の先生も同じルートだったので,その先生とともに成田便(実はこれもフィンエアーとJALが1便ずつ飛ばしていたり)よりも早い福岡便の私達は4時間弱の待ち時間でヘルシンキ空港を去ったのでした.ヘルシンキから福岡への道中,隣に座っていたおじいさんは北欧4カ国周遊旅行の帰りだったそうで,色々と雑談をして楽しみました.(相手が話しかけてくると割と乗って私も話してしまうタイプです…)

福岡空港には翌朝の朝8時に到着しました.ここでの乗り継ぎは2時間と短かったので,さほど待たずに住みました.国際線ターミナルと国内線ターミナルを移動するシャトルバスが専用道を通るにあたって無線でゲートを開閉していたりと,来たことのない(実はそもそも九州に行くのが初めてでした!2時間しかいませんでしたが…)空港ならではの新鮮な体験も若干ありました.

その後は国内線でつつがなく羽田空港に到着し,電車が反対方向だったため先程の先生と別れ,昼過ぎに自宅に到着しました.短期間に5回も飛行機の発着陸を体験するのは2014年にベトナム・タイ・マレーシアに行った時以来でした.

さいごに

国際認知言語学会の参加録珍道中編・そして今回のIT&博物館編と3記事に渡ってエストニア出張記を書いてきました.エストニア,それも首都ではなく第二の都市であるタルトゥというちょっと珍しいところに行ったということもあり,これは記事にしなければと…と思っていたものの,約2ヶ月が経ってしまいました.マニアックな切り口になってしまった部分もあるかと思いますが,これからエストニアに行かれる方の参考になれば幸いです.

また,今回の出張中には共著者で今回の学会への投稿を提案してくださった宇野先生をはじめ,さまざまな先生方に大変お世話になりました.この場を借りて御礼申し上げます.

次はおそらくですが11月のMaker Faire Shenzhenレポートになるかと思います.それではまた!